旧旧 川井橋
蘇った橋
秋田県 雄勝町秋ノ宮
   
 



 山形・宮城の両県と接する秋田県雄勝町。
町役場のある横堀地区から南へ約10kmほど国道108号線を進み、沿道を流れる役内川を2度目に跨ぐのが、川井橋である。
ちょうどこの場所は主要地方道73号線との分岐になっているが、その交差点の脇に巨大なコンクリートの構造物が建っている。
白いペンキが全体に塗られ、一体何のモニュメントかと思うかもしれないが、これは、平成四年まで現役で利用されていた橋の残骸なのだ。
その橋の残骸の一部が、ここで放置、いや、保存されているのである。



 近づいてみるとかなりデカイ。
そして、それは単純な橋桁ではなく、奇妙といってよいなんとも特徴的な外観である。
全体はコンクリートで出来ており、非常に肉厚な印象。
現代的な姿では到底無く、まるで城砦の一部のよう。

地肌の上にそのまま置かれており、その気になれば橋上に立つ事も出来るので、上ってみた。




 時刻は午前5時前で夜明けはもう少し後だ。
月明かりと街灯に照らされ、朝の冷気で氷のように固まった雪が幻想的な光を湛えている。
無骨というより他はない欄干も、メルヘンチックに見えるから不思議だ。
橋は、幅3.7m足らずだが、欄干は約2mありなんとも圧迫感がある。
現役当時も離合は不可能であり、昭和41年にこの少し下流に旧 川井橋が架けられてからは、2本の橋がそれぞれ一車線ずつを受け持っていたという。
今はもう想像することしか出来ないが、乗用車などでここを通う車窓からの眺めははまるでトンネルのようだったことだろう。

 実はこの橋、見た目が変わっているだけではなく、数奇な運命を辿っている。
今日では旧旧の存在と化した川井橋が、永久橋としてここに架けられたのは昭和9年のことだった。
全長119.7mの鉄筋コンクリート製で、フィ−レンディールという大変に珍しい工法を採用している。
このフィーレンディール構造は、良く見られるラーメン橋の一種だがこのような道路橋での採用例は非常に少なく、廃止後もここにその一部が保存されているのはそういうわけだ。
なお、現在保管されているのは、その4連あった上部工の一つである。



 ともあれ、この地に生を受けた川井橋だったが、昭和22年に一度、洪水によって橋脚一基が流され、一つ124トンもあるという橋が落ちた。
それは10mほども下流に流されたというから、その威力たるや凄まじいが、こうして橋の命運は尽きたかに思えた。
しかし、当時復員したばかりだったある地元の住民の指導の元に、奇跡的な工事が成された。
結果、橋は元通り復旧され、その後平成4年に取り壊されるまで永く、秋田仙台を結ぶ交通の要衝を担ったのだった。





 最後に大変貴重な写真をご覧頂きたい。
これは、雄勝町役場に保管されている川井橋の現役当時の写真である。
もうこの迫力、言うことはない。
いやー… 現役の姿を見たかった!


 平成11年に新川井橋が竣工し、旧旧川井橋は解体、旧川井橋は国道から外れた。
全国でも珍しいフィーレンディール橋は、今でも現橋が良く見える場所でその威容を晒している。
そしてこれからも永遠にそうだろう。
もう二度と、濁流に飲まれる恐れもない。


2003.6.14




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