その24国道7号線 糠沢の旧道2003.5撮影
 秋田県鷹巣町〜田代町


 県内では最も古い時期より整備・改良が進められてきた国道7号線だが、昭和30年代後半から昭和40年代にかけて県内の全線がその一時改良を終えている。
その後も増え続けた交通量に応じ、現在ではバイパス工事(2次改良)を終えた場所もある。

 JR奥羽本線でも有数のローカル駅である糠沢駅は、ターミナル駅である鷹ノ巣駅からも離れていないが、大層な寂れぶりである。
そもそも糠沢は米代川に面した農村集落であり、田代町との間には低い丘陵が広がっている。
この部分を通る国道7号線は、例によって昭和39年に新道に代わっており、現在も利用され続けている。
今回は、この部分に残された旧国道を紹介したい。






 JR糠沢駅前には、本当に何も無い。
数軒の民家と、公衆電話、後はただただ田んぼが広がるのみである。
1kmほどはなれた国道沿いのほうがまだひらけた印象だ。
 そして、その国道を大館方向へ進むと間も無く、いかにもといったような三叉路がある。
そしてその旧道に入ると間も無く、重厚な石橋が見えてくる。
写真の橋がそれである。





 これは昭和29年竣工の糠沢橋である。
写真は、大館側から振り返って撮影した物で、奥に見えるのが糠沢の集落だ。
国道7号線に供されていただけあり幅も十分だが、集落内を通っているにもかかわらず、通行量は少ない。
それには理由がある。
その理由は、この旧道をもう少し進んでいけばすぐに分かる。




 現国道に平行して架かる糠沢新橋からの、糠沢橋の眺め。
糠沢新橋は昭和39年の竣工なので、この旧橋の現役時代は意外に短かったことになる。
橋自体は、離合が困難なほどに狭いわけでもなく、早々に旧道化してしまったのは、この橋以外に理由がありそうに思う。




 先ほどの立派な旧橋の先の道は、なんとこんな有様なのだ。
それで、この区間の旧国道は極端に通行量が少ないのである。
この道ではそれも止むなしだろう。
しかも、この砂利道になる直前では、クランク状のコーナーと暗渠によって奥羽本線を潜る場面があり、現役時代もスムースな交通は全く期待できない状況だっただろう。
(あるいは、もともとは鉄道と平面交差していたのかもしれない。いずれにしても国道7号線としては無理がある。)





 国道7号線の旧道とは思えないような道が続いている。
しかし、すぐ右側には切り立った斜面の下に米代川が流れていてそちら側には道は無いし、反対側は見ての通りの線路である。
線路の対岸の森のなかを現国道が通っていて、その間には道らしいものは無い。
もしこれが昭和39年ごろまで利用されていた国道7号線だとすると、ちょっとした発見といえなくも無い。
なぜならば、少なくとも県内では、国道7号線の旧道で未だに砂利道の場所は発見されておらず、全国的にも7号線のような“旧一級国道”に分類される国道の旧道が砂利道のままに残っているケースは比較的稀だからだ。
しかも、このような山中でも無い集落近くの場所に残っているとしたら、かなり珍しいだろう。




 1kmほど線路沿いの砂利道を進むと、いよいよ米代の流れと線路との隙間が狭まり、旧道と思われる道は断崖に阻まれ進めなくなる。
そこは広場となっており、写真にも屋根が写る取水施設(と思われる)の為の管理道路としてのみ、この道は現在でも利用されている様子だ。
 しかしこの先はどうなっているのか?
旧道だったとしたら何らかのエスケープルートがあると思い、辺りを見回すと…。





 なんとも年代を経ていそうな看板が残っていた。
かなり錆び、掠れているが…。
懐かしいマークと一緒に、日本電信電話公社の文字。
この道路の地下には長距離電話ケーブルが埋設されているので掘削時には注意せよというような内容だが、長距離電話ケーブルという言葉がなんともレトリック。



 で、今度は足元に目をやって驚き。
ニョロニョロー。

 誰でしょうか、これ?
とりあえず、私に危害を加えそうな様子も無かったので、放置しましたが。
体長50cmくらいありました。





 複線の線路の対岸にも、こちら側と同じような遮蔽物が設置されている。
これは明らかに踏切道の跡だと思うが、線路敷きには全くその痕跡は無く、さすがにここを横断するのは躊躇われる。
しかし、対岸に見えている切り通しの道が気になるし、ここまで来てもどるのも癪だ。
線路の見通しは良く、十分に左右を警戒したのち、チャリを小脇に抱え、一気に渡った。




 踏切跡の先は廃道であった。
しかし切通の幅は結構広く、やはりここがかつての国道であったことを感じさせる。

それにしても…、
国道7号線の旧道で、この廃道振り…。
やっぱりここは隠れた穴場かもしれないな。(何の穴場だよ)





 廃道は長くない。
僅か50mほどで、現道に吸収されて消える。
ここは、田代町の長坂地区で、少し進むとまた旧道が左に分かれる。

 これで、この糠沢地区の旧道は終了だが、意外に印象に残る旧道だ。
先ほどの、線路と平行して進む部分は道幅も狭く、正直旧国道には見えなかったが、それについても推測が成り立つ。
この道が急道化した数年後、昭和40年代の初頭だが、この一帯の奥羽本線が複線化されており、その際にそれまでの道路幅をだいぶ削ったのではないだろうか?
また、同時にそれまであった踏切道も廃止となったのではなかろうか?

 いずれにしても、未舗装の旧国道が僅かだが残る糠沢地区は、秋田県内の稀なケースである。





2003.6.1作成
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