その46ふなぎはし2002.10.24撮影
 秋田県東由利町 大杉


 出羽山中を西流する石沢川に古風なアーチ橋が架けられている。
ここは、東由利町大杉。
橋は、対岸の国道107号線と、此岸の旧国道との間に架けられている。

近づいてみると、何か様子がおかしい。



 ぴったり橋の幅に合ったガードバーでしっかりと閉鎖されている。
道理で、橋の手前の道が、地形的にはなんの問題もないのに妙に草むしているわけだ。
本橋の印象は、端正だが華奢。
全体的に、強度に問題がありそうなのだ。
小振りな親柱には、比較的最近にコンクリートで補修された様子があり、廃止されたのは比較的最近の事だと思われるのだが。
この補修には問題があり、コンクリートで形こそ再現されているものの、対岸の親柱には見られる銘板が遺失している。
そこんとこ、重要よ。




 歩いて渡ってみる。
別に、変わったところは無い橋である。
高欄が低いので、端によると恐怖感がある。
付近には小学校もあり、子供達には楽しいが危険な場所だろう。
廃止の理由はその辺にあるのかもしれない。

もっとも、現状のガードでは子供が立ち入る事を抑止する事は出来ていない訳で、橋の中程には、明らかに余所から持ち込まれたような石片が落ちていた。
やはり子供が遊びに使っている感じを受けた。
私も、高いところから石を落とすの、好きだったし。

橋の先にもやはりガードバーが設置されており、その先は畑に遮られている。
すぐ向こうには現国道が見えているが、ここからは車で往来できない。
全く持って、なんのためにあるのかが分からない橋だ。



 健在だった国道側の銘板の一つには、竣工年度が記されていた。
昭和38年10月竣工。
古いが、驚くほどでもない。
アーチ構造自体は目を惹くが、それ以外は見るべき所のない小橋である。
こう書くと、別に取り上げるほどのものでもなかったように思うかもしれないが、何となく印象に残る橋だったのは確かなのだ。

旧国道が現役だった当時に架けられた橋だから、対岸にある農地への往来用に地元で架けた橋なのだろうか?

有りそうもない場所に立派なアーチが架けられている。
引き寄せられ来てみたら、どことなくよそよそしい? …そんな不思議な橋。




 そんな橋の名前は、
ふなぎはし。

漢字で書くと、船木橋だろうか。
この場所の大字が、船木なので。
惜しむらくは残りの二つの銘板が失われてている事だ。
銘板の平仮名はちょっと、気持ち入っているような感じがする。
「な」が読めないし。
やっぱり、地元では思い入れがある橋だったのかもしれない。

嗚呼、何となく不思議な橋だった。

さようなら。 ふしぎはし。

2004.3.2作成
その47へ

一つ戻る