廃線レポート  
真室川森林軌道  その2
2004.1.26



 真室川森林軌道小又線の探索は、初めから困難にぶつかったが、現地での情報収集により、軌道の存在は確認できた。
いよいよ今回は、絵地図に描かれていた三つの隧道のうちの一つ。
谷地ノ沢と万助川との間にある隧道を求め、上流へと軌道の痕跡を辿りながら、進むことになる。

今回のレポートは、難産だった。
特に、この「その2」が辛かった。
発見が多いときは筆が進むものなのだが…。


谷地の沢
2003.12.3 10:14


 谷地ノ沢を右に見つつ、舗装された道を上流へ向かう。
川は狭く両岸は切り立っており、蛇行している。
肝心の軌道跡は、向かって左の崖の上部を通行している可能性が高いが、道路からは確認できない。
申し訳ないが、この区間についてはこれ以上探索せず、先へと進むこととした。
今回探索の最大の目的は、途中にあるはずの3本の隧道であることをご理解いただきたい。




 不動明王の滝(地図上では不動滝と記載されていた)が谷地ノ沢に現れる。
車道はその脇を通過し、更なる上流へ。

滝を過ぎれば深い山へと分け入るかと思いきや、意外や意外。



 水田が現れたとおもうと、そのまま集落まで出現した。
そこが、谷地ノ沢の集落であり、まるで隠れ里のようだ。
数軒の民家の間を縫うように道は続いており、軌道跡を探しつつ進むも、残念ながら痕跡は全く得られない。
再び私は軌道跡を完全に見失ってしまったのだ。
頼みの綱の、持参した唯一軌道の描かれた絵地図でも、「谷地ノ沢」と地名こそ描かれているものの、何処をどのように通過していたかは皆目分からない。

再び、村人の力を借りる必要がありそうだ。


 とか思いながら走っていくと、あっけなく集落は終わり、しかも道は未舗装となった。
とっくに刈入れが終わり寂しくなった農地に人の姿は無く、わざわざ玄関を叩いてまで情報を収集する勇気が無かったのだ。

私は、仕方なしにみちなりに進むことにした。
この道は、持参の最新道路地図によれば、あと1kmぐらい谷地ノ沢を遡ると行き止まりとなっている。
そこまで行って何の手がかりも得られなければ…
どうしよう?

焦って周囲を見回しても相変らず冷たい秋風に吹かれるばかりで、軌道の痕跡は見つけられない。


 そこからは、何と無くそれっぽい踏み跡を見つけては踏み込むという、大変に不毛な行為が続いた。
私が軌道についてこの段階で知っていた情報は非常に少なく、谷地ノ沢の左岸のどこかから東へ進路を取り、一つ尾根を越えた万助川沿いへと抜けている筈だというものだけだ。
はっきり言って、この情報不足は致命的だった。
どこかからどこかへ抜ける道など、土地勘も無いこの場所で発見できるはずも無いのだ。
手持ちの道路地図にもこの両者を結ぶ道路はなく、全くの手探りで、藪に消えていると想像できる軌道跡を探すなど…。

無理だ。


 とある支流に入った私は、そこに何とも匂う平坦な河床が続くを発見。
位置的に十分ありえる場所であったから非常に期待感を煽られたのだが、結果的にこれは完全な無駄骨であった。

そうこうしている内に、時間だけは非情にも進んでいく。
もしかして、一つ目の隧道を発見することも無く、私の一日は終わるの?!

冗談抜きで、そんな気がしてきた。
というか、私は馬鹿だった。侮っていた。
旧国道や旧県道だったら、何と無く見つけることが出来る。
それは、いくら廃道になっても、廃道で無い道路との接点がちゃんと存在するはずだからだ。
でも、林鉄は、道路じゃないんだ。

全くの手探りで広い山中に見つけられるほど、甘くは無いのだ。
私の致命的な準備不足を、反省した。
でももう、遅いのか?!


 まるで悪足掻きだが、谷地ノ沢沿いの車道へと戻り一応終点まで行ってみることにした。
軌道跡など描かれていない地図であっても、それなりに情報は得られる。
特に、等高線は貴重な情報であり、どこに軌道があったかを類推する最大の手がかりとなる。
確実に隧道で抜けていたのだ。
だとしたら、どこをアプローチに使い、どこに隧道を掘るだろう?
私なら、ここだ。
そういう唯一つの場所を、私は地図に得た。

そして、その場所と言うのは、この橋を越えた終点ではありえないのだ。
むしろ、先ほどの支沢の最上部である。
だが、そんな推測にのっとって道なき沢を遡行するほど私には時間も度胸も無い。

きっとここは間違いだ。
そう思いながらも、一応行って見る事に…。

あー、今回の探索は駄目駄目だなぁー。
いいとこなしだ。
準備不足は、駄目駄目だなぁー。
テンションが、下がりっぱなしだよ。


 で、この橋はひそかに自己最高記録を更新している。

何かと言えば…、一つ前の写真を見て欲しい。
何と無く場違いな重量制限の標識に示された制限重量は、ずばり1トン。

これ以下は、ネットでは見たことがあるけど、1トンと言うのもかなり珍しいと思う。
なんせこれ以下は小数点以下の数だから、整数としては最小なんだし。

あはは…
こんなチョイ発見だけで、終わるのかな…おれ。


 地図は嘘をつかなかった。
1トン橋を越えて少し行くと農地も途切れ、再び谷地ノ沢とのデュエットになったが、道は長く続かず歩行が精一杯の橋を残し終点となる。
その先にはなにがあるのかな。

ああ、どんどん深みに嵌って行きそう。
軌道は、絶対この奥なんかじゃないのにな…、
悪い意味で引っ込みがつかなくなってしまった。


 歩道を50mくらい歩くと、谷全体を塞ぐ巨大な砂防ダムで行き止まりとなった。
その上流には静かな池があるだけで、湖畔に道も無く、私の足掻きも潰えた。

内心ほっとした。
これで、諦めて次の探索へいける。
このままズルズル行きそうだったからなぁ。


 これまでで最もしょうもない探索になりそうな予感を感じつつ、谷地ノ沢の集落へと引き返す。
既に時刻は11時をまわっていた。
あと、私に残された時間は多く見積もっても5時間。
どうするんだぁ。

再び情報収集
11:10

 集落まで戻った。
もう谷地ノ沢から万助川までの区間は諦めようかとも思ったが、やはり悔いが残るので今一度現地情報に頼ることにした。
人を求め走っていると、農機小屋の脇に人影が。
いかにも情報を持っていそうなご老人が二人、ご夫婦だろうか。
私は、今度は躊躇せず声を掛けた。


やはり、現地情報は強力である。
「森林軌道」と言えば、まず「分からない」と言われることが無い。
軌道が確かに万助川へと隧道で抜けていたと言う事実を確認することが出来ただけでなく、アプローチについても情報を得ることが出来た。
ただ、今度は容易に発見とは行かない様で、ご老人から頂戴した情報だけでは、尚不安は大きい。
どの道を行けば軌道跡があると言うところまでは教えていただけたが、どうしてもその先は難しいようだ。
というのも、このご老人の土地を通行しているらしく、余り立ち入りには良い印象を持っていないようなのだ。当たり前だが。

これ以上は難しいと判断、とりあえず教えてもらえた範囲で探索を続行することにした。
軌道跡さえ発見できれば、あとは何とかして見せる。



 教えられたアプローチは、意外な場所にあった。
不動明王の滝から谷地ノ沢集落へと至る途中に在った分岐。
そこが、シークレットポイントだったのだ。
写真で言えば、小屋の裏手から右に伸びる道が、それだ。

まさかここは疑わなかったなー。
ただの林道に見えたし。
もっとも、この林道自体が軌道跡と言う訳では無いらしい。

というか、今レポート書いてて気が付いたんだけど、写真正面の斜面を左右に横切るススキの帯が気になる。
まさか…。
今は調べるすべが無いが。

とりあえず、何らかの収穫を求め、林道を奥へ。



 林道はどこにでもあるような砂利道で、路線名は不明。
地図には描かれていなかった路線だ。
頂戴してきた情報によれば行き止まりだと言うが、その登りの途中に、軌道跡が分かれるらしい。
また、不安になってきた。
思えば、私の頂戴した情報って、それだけだったし。
結局、こんな林道の沿道に軌道跡なんて、発見できる気がしないし。
そもそも、どのくらい行けばいいのかも、分からないし。

はぐらかされたのかなー??

それとも、騙された?? 
そんな良くない考えが、頭の中をまわり始めた。
本当に、駄目駄目だなーぁ、今回。



 こっ、これは。
見つけちゃったぽくない?

お爺さん、お婆さん、ごめんなさい。
僕、行きます。

林道の脇、分岐から1kmくらい来た場所で、登りの途中なんだけどその左側。
林道から分かれるご覧の切通。
ぶっとびだ(意味不明)、間違いない。これは。





 このようにして、大変苦労するも、なんとか軌道跡に再会。

谷地ノ沢の入り口で橋脚の残骸と、そこから続く軌道跡を確認して以来、約90分ぶりの再会だった。
結局、あの橋脚からこんな山中までの直線でも2kmにも亘る区間の軌道跡は全く未確認、というか、どこを通っていたのかも分からないままだが、この先はもう、逃がさんぜ!

一気に鼻息が荒くなる私だが、お爺さんの警告の言葉を忘れてはいけないのだった。

「素人さんには、あの軌道は辿れないぞ。」

そう、はっきり言われた。

私は思った。
絶対に負けたくない。
いつもの、悪い癖である。
でも、何があるって言うんだよ一体。







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