廃線レポート 第二次和賀計画 その1
2004.11.6



 我々はまたも和賀の地に足を踏み入れた。

和賀の地中に、そして水中に眠る
無数の遺構を求めて…。

まず我々が向かったのは、ダムに沈んだ村 大荒沢。








岩手県和賀郡湯田町 大荒沢
2004.10.24 7:45


 10月24日(日)、午前6時50分。
私は同じ秋田市に住まうふみやん氏の愛車に揺られ、湯田町大石はJR北上線ゆだ錦秋湖駅にあった。
そして、55分頃にくじ氏が現れた
彼の車はなぜか真新しい泥に汚れているばかりか、国道とは反対方向から現れた。
内心訝しく思う我々の前で、くじ氏は笑顔で告白した。
彼は、趣味である滝見の為に、我々の待ち合わせ時間よりも相当早く現地入りし、南本内川上流の林道から滝の撮影をしていたというのだ。
まあ、なんというか、すごいバイタリティーである。

そして、今回は最も遠方からの参加となるHAMAMI氏が、遠路遙々北秋田郡から、定刻通りに現れた。
これで、メンバーは揃った。

車輌三台は、すぐにそこから出発し、南本内川の橋を渡り峠山林道を経て、大荒沢集落の直上である「謎のトンネル」前の広場に集結した。
そこで、各自が身なりを整え、ダム湖へと下降開始である。

探索開始時刻 午前8時16分。



 現在地から旧仙人隧道までは、湖畔を真っ直ぐ進めば、おおよそ1400mほどの距離である。
今日は日曜日であり、湖畔の工事は行われていないと思われるので、直接隧道まで湖畔を進むことにした。
途中接近する、大荒沢ダムの跡も可能な限り近くから観察したいが、2週間ほど前に一人で来た時には、まだまだ湖底部分の泥はドロドロで、とてもその上に足を踏み入れられる状況にはなかったし、ダム堤体と思われる遺構も、完全に湖上に孤立していた。

今回の水位はどの程度であろうか。

この結果が、今後の探索の是非を大きく左右するであろう事は想像に難くない。
しばらく晴天に恵まれていたので、水位がさらに下がっていることを期待したいのだが…。

祈るような気持ちで、私は明るい大荒沢を見回した。



 錦秋湖を取り囲む山肌も、紅葉が始まっている。

この風雅なダムの名は、ダムが完成した昭和39年に公募により決定している。
周囲の紅葉が錦のように美しいことから付いたのだと思うが、もう数日で、名に恥じぬ錦の彩りが山景を覆い尽くす。

写真は、上流方向の眺め。
対岸には、国道の長い長い百貫平スノーシェードが大蛇のようにうねる。


 そして、正面方向に視線を動かすと、明らかに前回よりも水位が低いと感じられる新発見があった。

写真手前の土色の平坦部は、かつての大荒沢集落の一画であるが、対岸と此岸に対を成すコンクリートの巨大なブロックが見える。
これは、前回は水面下だったと思われるが、今回初めて見つけた。

見たところ、明らかに吊り橋の遺構(4つのコンクリブロックはアンカーだ)なのであるが、その証拠となる写真が、国道上の道の駅「オアシスR107」に飾られている。
それによれば、これは大荒沢集落と、対岸の杉名畑集落とを結んでいた、尼瀬橋である。

どのような由来で両方の地名にも属さない「尼瀬」なのかは分からないが、現在の錦秋湖を跨ぐ唯一の橋は「天瀬橋」と呼ばれており、これらの関連性が気になってくる。



 また、より正確に水位の変化を見る指標が、下流方向にはあった。

写真に写る、ダム湖を横断する建造物。
これこそが、大荒沢ダム(正式名称:東北電気製鉄株式会社和賀川工場 大荒沢堰堤)の姿で、湯田ダムと引き替えに廃止されて以来、水中に在り続けていた。

前回はダムは水上に孤立していたのだが、今度はなんと、此岸へと細長い通路状の陸で続いている。
もしかしたら、あの廃墟へと踏み込むことも出来るのかも知れない!

急遽、計画に新しい探索対象が加わったのは、この遺構の水上出現の難しさを考えれば、いうまでもないことだろう。


 少し立ち位置を東に移して、大荒沢集落跡と対岸の杉名畑集落跡を一望する。

大荒沢よりも規模の小さな集落だった杉名畑であるが、そこを通る国道上には無数に“杉名畑”の名の付く構造物があって、主は消えても地名は亡霊のように付きまう。

なお、水没した大荒沢ダムの完成は湯田ダムに遡ること20年余り、昭和16年頃と言われる。
この大荒沢ダムが形成していたダム湖は、和賀川ダムと呼ばれていたようであるが、その水位はちょうど、この程度であったことが、地形や先ほど紹介した道の駅の写真からも分かる。

いまなお深い湖の底にある和賀川の谷底には、誰の目にも触れることなく昭和16年以前の遺構が眠っている可能性も、あるわけだ…。


 探索対象に新たに加わった大荒沢ダムに向けて、
 我々は湖岸の工事用道路から瓦礫の湖岸斜面に降り立った。

 しかし、一見穏やかな湖底には、実は危険が一杯だった!









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