道路レポート  
国道398号旧線 釜谷峠 後編
2004.4.8



 国道398号線って、どうも優柔不断というか、びしっと決まらない路線だよな。
部分部分では、それなりに重要視されてるし、たとえば秋田宮城県境の花山峠なんかは、観光の花形路線であったりもする。
でも、なんか統一感がないというか…
そもそも、起点が宮城県石巻市で、終点が秋田県本荘市って、どう思うよ。
いや、太平洋岸と日本海岸を結ぶ路線は数あるし、おかしくも何ともないんだけど、なんか、妙に斜めってる?
日本列島縦断のような気もするけど、いや、石巻から延々志津川までは、まるで国道45号線がカバーできなかった三陸沿岸の残り物をあてがわれたように、ただの沿岸道路になってるし。でも、志津川からは突然内陸へ向かい始めたと思ったら、今度は延々と北西を指向し、ついには秋田県に入っちゃうし。で、湯沢市で終点かと思ったら、なんだかよく分からない峠を越えたり、いつの間にか国道107号線に呑み込まれて存在感のないままに、終点本荘に達しているし。

うーーん、これを読んでる皆様の方が分かりにくかったと思うけど、私もよく分からない路線なの。
はっきり言って、石巻志津川間で一本、志津川湯沢間で一本、その先はオマケ? でしょ。
そう思って調べてみると、やっぱりこの国道、起点も終点も当初から徐々に長くなっていた訳。
やっぱりなー。


…以上、国道398にまつわる、どうでもいい話でした。
以下、釜谷峠旧道、後編をお伝えします。


河北町側 下り
2004.3.31 6:14


 峠を過ぎると、当たり前だが今度は下り一辺倒となる。
しかし、勾配は決して厳しくはなく、これは雄勝側もそうだったが、穏やかな山容を感じさせる、良い峠道が続く。
ガードレールの隙間からは、冬でも葉を落とすことがない笹だけが、旧道らしい繁茂を見せている。
しかし、この調子なら、通行止はフェイクか。



 そう思った矢先に、何の前触れもなく突然路肩が大きくえぐられていた。
真っ白なガードレールが宙づりになり、強い風にゆらゆらと揺れている。

またも不吉な景色だ。



 浮いたガードレール越しに見た河北町の眺め。
眼下の平地を真一文字に貫く大河が、灰色の空を写している。
あれは、北上川だ。
しばし、その日本離れした大きな眺めに見とれてしまった。
NHKのテレビで子供の頃見た、アジア大陸の景色って、こういう感じだったな。

写真だとうまく伝わらないと思う。すまん力不足だ。


 下り初めて最初の崩落が合図だったかのように、その後は一気に廃道らしい道となった。
ガードレールは赤茶け、うねうねと波打っている。
コンクリの法面には頭上の木々がのしかかり、夏場などは間違いなく密林と化しているだろう。
それを証明するように、路上にはアスファルトが見えなくなるほど、ふかふかの落ち葉の絨毯が敷き詰められている。
落ち葉は一部土となっていて、チャリのタイヤに絡みつく。
残されたアスファルトには、目には見えない苔が発生し、恐ろしい滑走ゾーンと化している。

急に危険度が引き上げられた釜谷の下り。
さらに悪化する。


 当初は1.5車線を確保していただろう舗装路も、山側からは落石と笹藪の浸食、崖側は断続的な路肩の崩落と、やはり笹藪。
中央に僅かに残ったアスファルトが、天然のシングルトラックとなっており、チャリでの探索を歓迎しているかのように錯覚する。
もちろん、錯覚であり、錯覚が間違いであったことに気が付くのは、もう間もなくだ。



 ついに落ち葉は路面を全て埋め尽くし、下り坂とはいえ漕がなければ進めないような高抵抗の道となった。
しかし、下りで良かった。
登らされるとなると、汗だく必死だ。
そして、もしこれが夏場だったら…、

私はきっと、彼の名を叫んでいたに違いない。
『オダさー…』じゃなくて、『へなりさーーーーん!!!』 と。

この浸食度は、きっと笑えない。
だけど、この季節は好都合だった。
辛いのが好きという人もいるのかも知れないけど、私は、道っぽいのがほんとは一番好き。
めちゃくちゃ荒れてるのとか、前後不覚になるようなのは、悔しいから突き進むけど、面白さはない。

この釜谷峠の春は、最高に好きだ。
おにぎり以外の標識が残ってるのも高得点。
ちなみに、現道は昭和61年開通、国道指定は昭和57年。
つまり、この旧道が国道だったのは、僅か4年間だ。



荒廃した旧道 
2004.3.31 6:22


 ガードレールすら存在しない道は、延々と下り続ける。
同じ線形が繰り返され、もし現役の道だったら、飽きてしまったかも知れない。
だが、廃道であることが、楽しさを与えている。
今でも僅かに森林管理に入山する者があるのか、道の回りには切り株が目立つ。
しかし、路上を通せんぼしてしまっている朽ち木などもそのままで、長い間自動車が入っていないことは間違いない。
轍は、バイクやチャリを含めて、ごく僅かにある。
ただ、それすら風化し、または落ち葉に隠されつつある。

日本海岸に住む私には、大変に目新しい、松の森を往く廃国道。



 道路標識が点在している。
その存在がかつての道路幅を教えてくれるが、もう長らくアスファルトが見えない道が続いている。
確かに、急なブレーキングなどで落ち葉や土を掻き出すと、その下にはアスファルトが存在しているのだが。

それにしても、万年整備不良状態の愛車は、ついこの間退院したばっかりなのに、もう色々と問題が…。
ギアを特定に入れるとチェーンが空転して不愉快きわまりないし、しかも特定の段には入りすらしない。
ブレーキは、延々雨の中走ったせいもあり、もう限界の効きだ。
限界が来てからが、私の場合はえらい長くて、両方のブレーキが機能しなくなるとさすがに入院となるわけだが。

言い訳します。
山行って、サイトで紹介して、仕事に行けば、もう私の時間は24時間です。
一体いつ、愛車を可愛がってあげればいいのでしょうか!

山に行かずにという選択肢は、無い。
…だめだな、俺って。




 カーブミラーの先には、だいぶ地上に近づいた眺めが。
そのカーブミラーは盲目で、補助標識には「よく見て通りましょう」なんて書いてあるけど。
見えません。


 すすむにつれ、さらに荒れ果ててゆく旧道の有様。
当初はこの展開を「おいしいな」などと楽しんでいた私も、想像以上に長く続く廃道と、次第に難しくなっていく行く手に、スマイルを忘れていた。

路上を埋め尽くす倒木は、気軽な探索者を引き返えさせるに十分だろう。
そんな効果もあって、崩落を越えるたびに、ますます荒れていくのだ。


 景色に変化が現れた。
今までよりも暗い森は、杉の植林地だ。
いよいよ人里が近い証拠か。
そういえば、先ほどから崖下にはチラチラと、現道のアスファルトが見え始めている。

この写真の一カ所だけ、あまり見たことのない施工で法面を抑えていた。
このやり方は、よく工事中の道で仮に崖を止めておく方法だと思っていたが、もうこれで施行終了のご様子。
道がご臨終じゃ、工事も必要ないものね。 詳細は不明だが。



 久々に現れたアスファルトに、道幅も広がった気がする。
ここは、大規模に法面がコンクリで固められており、難所だったようだ。
ここまでやっても廃道となってしまったというのは、虚しい。



 振り返れば、見覚えのある鞍部の姿。
黒雲はどんどんと流れ、いつしか青空が大きく覗いている。
逆光になった峠の山は、もう引き返すことが出来ない場所であるかのような印象を与えた。
南風は依然強く、私が振り返ることも拒むかのようだ。


次第にこの風は、私に牙を剥き始めるのだが…。




 
いよいよ現道との合流が迫った。
峠から合流までは、約2.5kmほど。
旧道全体では、5km弱の山越えだった。
規模的には大きくないが、現道とは完全な別線であるし、正統派といった面持ちの峠越えは起承転結があり面白い。

もっとも、夏場の通行は、何度も言うように、保障しない。



 最後のコーナーは最後の難関とばかりに、巨木で天然のバリケードを築いていた。

ここを、チャリから降りて、チャリを倒したり、自分が寝そべったりしながら、突破。






 で、ついに合流。
旧道は、この先もう一度だけ現道に別れ下をくぐったりアクロバティックな線形を見せるが、そこは集落道として現役だ。

こちら側の旧道入り口は、封鎖されてからかなりの時間が経過しているらしく、黄色と黒の警戒色のバーは、ガードレールにしっかりと固定されている。
開け放つ予定はないとでも言いたげだ。
路面には、オレンジで「トマレ」とペイントされていて、現道開通後もしばらくは利用されていたのだろうか。



 現道に沿って峠のほうを振り返ると、旧道がどんな場所を通っていたかが良くわかる。
こうしてみると、現道の工事によって旧道がつぶされなかったのは、旧道の他には迂回路がなかったからかもしれない。
新旧の道は、合流点付近ではかなり干渉しあっているように見える。



 峠を降りると、入釜谷の集落。
ここで、最後にもう一度だけ振り返ると、さすがにもう、峠の鞍部も小さくなっていた。

朝日を見ることもなく、朝の峠を越えてきた。
たった一時間足らずの峠越えだったが、ずいぶん遠くに来たような気がする。
もう、寂しかった雄勝の朝は遠い昔のこと。

そして、眼前には今日一日のアツイアツイ山チャリが、北上の流れのように長く続いているのだ。
朝一に峠越えって、なんか気持ちいいね。





 北上川の、最も河口寄りに架かる橋、国道398号線「新北上大橋」は、昭和51年に竣工した、私とほぼ同じ年齢を持つ長大橋(全長566m)だ。

ここを渡れば、どっか別の国のような、そんな景色だ。
この先も日本だなんて、ちょっと信じられない?!






 






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