間違いない。
これは隧道の跡だ。
落石防止ネットの裏側に隧道が「封印」されてしまうパターンは時々見るが、これはその中でも変わり種といえるだろう。
国道のすぐ上という珍しい立地でなければ、こんな目に遭うこともなかっただろうに…。
この林道の素性は不明ながら、2kmほど先で別の林道に抜けているはずの道。
迂回路を造ることもなく塞がれているところを見ると、完全に廃道という扱いなのだろう。
この塞がれた穴の向こうには、かなりの確率でもう2本の廃隧道が潜んでいるということか…。
行きたい…なぁ。
見よ!
この奇妙な立地を!!
国道に臨む垂直な法面の上に、僅か幅2m足らずの林道があったのだ。
ガードレールなど転落防止の役に立ちそうなものは何もない。
反対側から下って来ることを考えれば、隧道を出た正面がいきなり10mも切れ落ちた絶壁になっている訳だ。
隧道で十分に速度を落とす前提とはいえ、スパルタだ。
スパルタ過ぎるだろ、おい!!
ネットの丈は、大変ご丁寧な事に、完璧である(笑)。
地面に着くか着かないかという、微妙な位置を確保している。
さすがは日本の土建屋さん。仕事が丁寧である。
ネットだから、荷物を下ろした私一人くらいは何とか出入りできそうだが…
チャリは…。
隧道自体は、無事であった。
ホッ。
しかし、先の状況が分からないので、チャリはひとまず外に置いてきた。
よもや、向こう側も塞がれていると言うことは無いと思うが、初っぱながこうである、先行きはきわめてフワン(なぜか変換できない…汗)。
まずは、偵察である。
一号隧道、進入…。
ばれないと思ったんだろうな。
余ったネット材が隧道内に棄てられていた。
ホームセンターで買ったら高そうだけど、持ち帰る元気は流石にない。
しかし、洞内にあるゴミと言えばそれくらいで、どことなく使用感の乏しい隧道だ。
長さは30mほどに過ぎないのに、床一面に落石がゴロゴロしているのも気になる。
昭和27年の地形図にもこの林道は描かれているので、隧道自体も古く、地質もあまり良くないと言うことだろう。
乾燥しきった隧道の半ばを過ぎて、向こうの光へ近づく。
北口というか西口というか、とりあえず出口まで来た。
下枝のうるさい杉林を透かして、見上げるほど高くはないが、かといって間近でもない山並みが見えた。
林道の進行方向にある山である。
そして、当然のように廃道である。
期待した以上と言っても良い奇抜なスタートで、紛れない車道廃道が始まった。
内心ガッツポーズだが、気がかりなのはチャリだ。
チャリをどうしようか。
また引き返してくるのは、2kmという距離を考えると、ちょっと嫌だ。
とりあえず飯を食いながら考える事に決め、洞内へ戻った。
野外で腰を落ち着ける気にはなれない事情があった。
まだ4月の頭だというのに房総名物のヤマビルたちがちゃっかり目覚めているという事を、私は身を以て知っていたのだ。
…今朝、ちょっと杉林の中でしゃがみましたら(なぜかは自主規制ですが)、うねうねうねうねぇと居たんですよね。
絶対嫌いなんだからッ!
朝飯といっても、どういうわけかこれしかなかった。
前夜、ディズニーランド近くのホテルでミリンダ細田氏に貰ったカロリーメイト。
しかも、なぜか新発売の「ポテト味」だという。
私はフルーツ味だけが好きなのに…、なんか嫌な予感がする。
うあ。 やっぱりこれは駄目だ。
埃くさい廃隧道の中で食べると、なんか余計に美味しくない。
細田氏、アリガトウ(涙)。
4本入りのところ、1本だけ食べて行動開始。
ネットに塞がれている南口だが、そこには隧道内とは思えぬ見晴らしがあった。
釜生集落がよく見える。
ネットを這い出し、今度はチャリをなんとか隧道内へ引きずり込む算段をする。
少々太ってもしなやかな私の体に較べ、無機物はなかなかに難儀であったが、そこは歴戦の愛車。
ぐいぐい
ぐいぐいぐいッ
ミチーッ!! …と、突破した。
…フゥ。
意外な展開が待つ山中へ、いざ。