海抜400mより上の鳥海山北麓に広がる広大な山域を鳥海高原と呼ぶ。
一般県道312号線は日本海に面した象潟の町を経ち、高原への長いのぼりに挑む。
そして、この戦いに勝利した道は、今度は緩やかなくだりと共に、高原の内部へと踏み込むのである。
いま、私は高原の縁にいる。
この先の道は、鳥海高原が舞台となる。
一般県道312号線最大の見所が、迫ってきました。
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旧道と思しき道は、おぞましい廃道と化していた。 辛うじてこれを突破、遂に高原に達した私であった。 そして、霧に包まれた平原には、それが唯一の道であるかのごとく存在を誇示するスノーシェードが。 当然、これが現道である。 しかし、私は現実から目を背けない。 |
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スノーシェードの入り口の左には砂利が敷かれた広場がある。 これは、風力発電所の施設の一部であり、旧道はこの奥に続いている。 ご覧のような凄まじい霧のため、すぐ傍で不気味な風切り音を響かせる風車は全く見えない。 音はすれども姿は見えずと言う状態だ。 何となく不思議な感覚に陥る。 すぐ耳元で巨大なプロペラが回っているかの轟音が辺りを支配していると言うのに、その主は全く見えず、無色の世界が広がっているのだ。 これは、一種、失明したような感覚に近いかもしれない。 |
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施設の脇を過ぎると、そこはもう旧道を通り越して、廃道そのものであった。 緩やかな下りが潅木の中を緩やかに続いており、路上にも笹が膝を隠すほどに生い茂っている。 下るのは楽だが、もし戻る羽目になったら…。 一体この道はどうなってしまうのか。 不安がこみ上げてくる。 スノーシェードに消えた現道とは距離が離れているようだし。 |
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ふと気が付くと、もうそこは道などではありえない光景だった。 振り返って撮影した写真には、頼りなさげな細い轍(もちろん私のものだ)と、それを取り囲む赤茶けた大地が広がっている。 やはり下りが続いており、惰性で突き進んできたが…道を誤ったのか? さすがに、この景色は、旧道としてもありえないのではないか。 もはや、ただの荒れた山肌ではないのか。 こんな道、戻れる気がしない…。 わたしは、どこへ連れて行かれているのだろうか…。 |
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全く人の立ち入った気配のない荒野である。 いや、実際は現道から1kmほどしか立ち入ってないのであるが、それでも、この霧だ。 もう、この道はこの世の果てにでも続いているような錯覚を覚える。 錯覚どころが、実際にえらい心細い。 いったい旧道はどこなのか? どうなってしまったのだろう。 ここまで道を踏み外すような分岐も無かったと思うのだが…。 |
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赤茶けた荒野は300mほど続いた。 そして、そこは全て急な下りであった。 やっぱり道じゃなかったのかもしれない。 道だとしたら、急勾配過ぎるもの。 しかし、意外な事に、この荒野をまっすぐ進んだ先には、再び僅かながら轍が現れたではないか! これは旧道との再会であると考えた。 地図上でも、まず間違いないだろう。 そして、いくらも行かぬうちに断念することになった。 写真を見ていただきたい。 もう、嫌である。 下草どころでなく、松が密生する山林と化していた。 道があったのかも疑わしい状況と言わざるを得ない。 |
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帰りは、落ちるように下ってきた分を全て取り戻させられる。 それは想像通り辛かったが、もうあんな道とおさらばできる喜びと安心感から、気持は軽かった。 再び、姿のない風車の音を聞けるようになると間も無く、ポツンと佇むスノーシェードが見えてきた。 無事に、戻ってきた。 ちなみに、手持ちの地図によれば、あの先も500mほど道は続いており、冬師集落の手前で現道に合流するようだ。 ただ、現道との合流地点を見つける事はできなかったので、完全に山野に同化してしまったのかもしれない。 さて、現道に戻った。 冬師へ向けてスノーシェードに漕ぎ出す。 |
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鳥海高原上に存在する数少ない集落の一つ、冬師(とうし)に到着する。 この日の平野部は23度くらいの気温であったが、霧に閉ざされた冬師は、なんと16度。 寒い。 合羽着用とはいえ、既に全身が湿り気を帯び、そのうえ底冷えのするこの外気温。 本格的に寒い。 さて、ここまでほぼスタートから辿ってきた県道312号線だが、この先はいよいよ最後の区間となる。 道なりに進めばそのまま県道285号線になり本荘市方面へと至るのだが、なんとも不可解なことに、312号線はここから更にもう一山あるのだ。 写真で説明すると、今立っている場所が県道285号線の終点で、正面の道がこれまで走ってきた県道312号線、そして、右の道が、この先の県道312号線だ。 もちろん、一切の標識は無い。 |
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冬師集落の昼下がり。 天気のせいもあるのだろうが、初夏の日中とは思えない寒さと、しんと静まり返った…寂しさだ。 もう県道312号線もただの集落道と化していてヘキサ一つないのであるが、今度はT字路に突き当たった。 やっぱり標識もなにもないのであるが、左がそれである。 さあ、ちゃんとこの道が名称「長岡冬師城内線」どおり、城内に続いているのかを見届けねばなるまい。 手持ちの地図には、この城内と言う地名は無いのであるが…。 というか、ローカルすぎだろ、この路線名は。 大丈夫なのか、この先。 |
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T字路を曲がってみれば、いきなり登りが出迎えてくれた。 いよいよ集落も終わりらしい。 県道312号線上最大のミステリースポットへ向けて、いよいよ発進だ。 何が待ち受けていたかは…お楽しみに! |
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さもそれが当然であるかのように、集落が終わった途端砂利道に。 そのうえ、これまた当然のように『全面通行止』の標識が。 何が問題なのかもはっきりさせないまま、通行止めといわれても引き返すわけには行かない。 バリケードなどで封鎖されているわけでもなく。 私がここで感じたのは、県道とは言うものの、それに相応しくない、なんとも投げやりな処遇である。 「こんな道別に誰も通ろうとしないだろうから、別にいいや、このまんまで。」 こんな感じ。 どーなってんのこの道。 |
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