奥羽本線 <二代目>大釈迦隧道  解決編 その4
闇の奥、未知の闇
青森県 青森市〜浪岡町

 
 10時13分。
「コワシ」の穴へ侵入開始!

這い蹲らねば通れない穴に、潜り込む。
50cmほどの狭窄部を越えれば、そこには一回り大きな断面が待っている。

まずは、二度目のチャレンジとなる私。
そして、協力者パタリン氏の順序で、ここをくぐった。




 これは、穴の内部から、隧道へと続く狭窄部を振り返って撮影したものだ。

本来在るはずのない空洞が、隧道の内壁の外へ存在することが分かる。
穴は、隧道の上り方向(弘前向き)に対して約45度の角度を付けて、並走するはずの現在線の隧道方向へと伸びている。
穴と隧道との接続部は、不自然な狭さであり、また当初から想定された施工ではないような、荒っぽさを感じる。
コンクリートの欠片などが、ただですら狭い穴の脇に積み重ねられ、棄てられている。

初めて入った時もそうだったが、とにかく「?」が次々と現れる穴なのだ。
まだこのとき、この穴について我々は、何も分かっていなかった。


 穴の内部の様子。

パタ氏自慢の200万カンデラの灯りさえあれば、撮影にフラッシュが不要なほど明るい。
それは、当然200万カンデラのパワーの賜物であるが、それだけではなく、とにかく穴が狭いのだ。
狭さ故、灯りは壁に乱反射し、その姿を赤々と、我々の前に曝しだしたのだ。

断面の大きさは幅2m、高さ1.5mほど。
大人が直立することは出来ない。
強烈な圧迫感を与えてくる内壁は、総コンクリート製。
よく光を反射するコンクリは、決して朽ちたものではなく、天井には光沢すらある。
しかし、かといって整然とした印象にならないのは、洞床の異常のせいだ。
足元には、巨大なコンクリート片がごろごろとしており、全体に水が張ってある。
丁度、コンクリ片を飛び石のように伝っていけば、水に入らず歩くことが出来る。
これが作為的なものなのかは、この余りにも荒々しいコンクリ片の様子からは、図りかねる。







 最初の探索時に、ここを見た瞬間の驚きは、とても言葉では言い表せないものだった。

穴を入り口から30mほど進むと、突然二手に分かれる。
それぞれの穴は、大きさなど瓜二つであり、どちらがどこへ通じているのかなど、まったくのノーヒント。

こんな、昔のRPGのダンジョンのような展開が、よもや現実に在ろうとは、本当に驚きだった。
帰宅後、レポートを書き始めた私は、すぐにでもこの発見を発表したかったが、それは出来なかった。
この穴については、伏せたままにレポートを一旦閉じたのは、
一つ、デジカメの電池切れにより内部の様子を撮影できていなかった為。
そしてもう一つ、最大の理由は。

この先には、私はついに進めなかったから、 だ。

それも、ただ単に恐かったから進めなかったのだと、私は素直に告白しよう。

それ故に、悔しくて、仕方がなかったのだ。
まだ、中途半端に公開するのは躊躇われたのだ。


しかし、今回は恐怖など無い。
二人なら、進める。
そのために、無理を言って、私はここまで連れてきてもらったのだ。
今こそ、借りを返す時だ。




 前回は気が付かなかったことだが、200万カンデラの光の先に、行き止まりが照らし出されていた。
分岐の左は、30mくらい先で、壁によって行き止まりとなっているようだ。
200万カンデラの力を思い知る、圧倒的な照射能力である。
もし、あのときにこの灯りを持っていたら、また別の結果になっていたかもしれない。

どうやら行き止まりらしいと分かっても、実際に行ってみなければ確認は出来ない。
パタ氏には分岐点で照らしてもらいつつ、単身左の穴の奥へと進んだ。


 左の穴は、進むにつれ浅くなっている。
そして、どうしても頭上すれすれにならざるを得ない天井には、小さなコウモリが、たくさんぶらさがっている。

サラッと聞き流さないで欲しい。

小さなコウモリが、鈴なりになってい のだ。一ヶ月前には。
初回探索時に、私の中途半端な灯りは、すぐ先にあった筈の行き止まりは照らし出さなかったくせに、天井に鈴なりのコウモリだけは、しっかりと照らし出したのだ。
鈴なりというのは、コウモリの体に、また別のコウモリがぶら下がっているような状態を言う。
当然のように、天井にはびっしりと灰色の毛むくじゃらが…。
分岐の手前には数えるほどしかいなかったコウモリが、どうして分岐の先には、左にも、右にも、あんなにいたのか。

そして、どうして今回は少ないのか?

パタ氏には、なんだヨッキれんはこの程度の数のコウモリに怖じ気づいて帰ってきたのかと、思われたやもしれないが…。
信じてくれ。
本当に鈴なりだったんだよ。前来た時は。
それで、断念したというのも、はっきり言って、ある。




 そして、私はついに行き止まりを確認した。

前回よりは少ないとはいえ、それでも相当に沢山いるコウモリ達を刺激しないように、慎重に屈んで進んだ末に、たどり着いた閉塞部。
ご覧のような壁が、扉ではなく、コンクリートで目張りされた木製の壁が、しっかりと行く手を遮っていた。
押しても、ビクリともしない。
引くことは、出来ない。
壁からは、ただ一本だけ鉄製のパイプが付きだしており、その先端からは洞床に水滴が落ちていた。

なんなんだ?
この、厳重な閉塞は。
かつては、どこへと通じていたのだろうか。

立地的に、ある一つの仮説は、当初から頭にあったが。
まだ、それを実証するようなものは出てきてはいない…。
このまま、何も分からないままに、探索は終わってしまうのか?



 ここで、デジカメの電池が切れてしまった。
フラッシュ撮影を相当繰り返しているので、やむを得ないだろう。
大丈夫。
今回は、新たに買ったばかりの換えの電池がある。
閉塞部に座って、パタ氏に照らしてもらいながら、電池を取り替えた。

写真は、分岐で待つパタ氏のライト。
この直後、パタ氏も閉塞部まで歩いてきたので、ひとしきり観察した後、分岐まで戻った。
その、戻りの最中、

ついに、決定的なものを、発見してしまったのだった。










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2004.3.22