おはよう。
どうやら今日の空模様はあんまり良くないようだね。
雨合羽に包まって、真っ黒い雨雲に煙る山並みを見つめる彼。
その姿こそ、われらが、”ホリプロ”だ。
いよいよ始まりだね。
やる気になってるんだね。
知る人ぞ知る10キロオーバーのロング林道「観音森林道」入り口。
彼は、全く振り返らなかった!
その視線の先にはまだ見ぬ“峠”しか映っていないのか?!
嬉しくて仕方ないんだよね。
えっ、こんな舗装路じゃ、ヌルいって?!
ここでは彼の下半身に注目していただこう。
ジーンズである。
山チャリとジーンズ。
しかし、私は、彼がジーンズ以外で山チャリに望むのを見たことが無い。
いぶかしがる私に彼は言った。『今日は一番アチーやつ、履いて来た。』
(注意)下肢を酷使する山チャリにおいて、ジーンズのような締め付ける衣服は疲労を増幅させやすい。決して、真似してはいけない。
なんか、楽しそうだね。
まだまだこれからだって言いたいんでしょ。
観音森林道のハイライトが、この写真に写る、2Kmにも及ぶほとんど直線的な登りで、一気に峠直下まで登りつめる。
正に、「心臓破り」と呼ぶに相応しい難所である。
かの場所を前にして、彼は静かに腕を組んだ。
その視線を、どこまでも登る道筋に沿ってゆっくりと、上げて行く…、
私は見た、彼がかすかに、しかし、満足げに頷くのを。
お疲れさま。 どうだった?
…良かったみたいだね。
観音森林道終点。
今回の旅では唯一彼がカメラの方を向いた瞬間。
なんともいえない、いい表情である。
彼の心中は、察するに余りある。
ちなみに彼は後日語った。
「13%のぼりぐらいがそんなにツレーかぁ?
ツレー登りってのは、14%以上じゃねーか?」
どう、ここは?
ん、いまいち?
再び登る。
国道341高尾越えから少し脇道にそれ、一際高地にある、通信施設へアタック。
彼は途中、軽快に登っているとき、ハイキングする、子供の集団から「いーなー」との声があがったことにかなり、立腹していた。
「何も分かってねー奴の言葉だ!!」
そろそろ帰りましょうよ。
まだまだお家は遠いぞ。
高尾山荘前より、国道から分かれ、麓に下る「高麓沢林道」にイン。
下りを前にした彼の表情は……、
さながら、得物を倒し、今まさにその肉にありつかんとする、肉食獣のよう。
楽しかったね。
また行こうねー。
麓に降り立った我々。
平和な写真を撮ろうとするが、彼は。
彼は最後まで、ポージングを解こうとはしなかった。決して。
--オ-- --マ-- --ケ--
帰り道。彼の愛車「アルカディア」は、“8段”に入った。
いつものことだ。
ところで。
なんで彼、サドルから降りた写真が殆ど無いの?
<終わり>
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