その39−1小阿仁森林鉄道 増沢川橋梁2003.8.7撮影
北秋田郡合川町



 小阿仁森林鉄道は、米代水系阿仁川最大の支流である小阿仁川の源流部から、阿仁川と合流する合川町増沢地区までの、本線43km余りの、県内有数の長大森林鉄道であった。
1967年に廃止になるまで、小阿仁川流域の豊富な森林資源開発のみでなく、鉄道など公共交通機関の著しく立ち遅れていた上小阿仁村の主要な地域を縦貫していた本線は、地域の足としても、非公式に活躍してきた歴史がある。
県内有数の長大森林鉄道だった小阿仁森林鉄道だが、その大部分は廃止後、道路敷きなどに転用されており、以外に痕跡は残っていない。
また、地形的に比較的恵まれていたせいか、隧道や橋梁といった構造物も、延長のわりに多くはなかったようだ。
ただ、その非常に発達した支線網や、上流域の萩形地区(ダム水没あり)の極めて険しい山地地形など、まだまだ全容は掴めておらず、その探索は始まったばかりである。

今回は、小阿仁森林鉄道をはじめて紹介するということで、容易に探索できる2遺構を紹介したい。
いずれも、その起点に程近い合川町増沢地区に発見された遺構である。





 主要地方道3号線(二ツ井森吉線)の真新しい「たたらトンネル」は米代川沿いの二ツ井町麻生地区と、ここ合川町増沢地区をつないでいる。
その少し手前に、トンネル以前の丘越えの旧道が分岐しており、この分岐点脇に、一本の錆びたガーター橋が残っている。
これが、紛れもない小阿仁森林鉄道の遺構である。

近づいてみよう。



 ご覧の通り、橋の保存状況は良い。
増沢川という小川を、約20mくらいの赤茶けたガーター橋が跨いでおり、その細さなど、まさに森林鉄道らしい橋だと思える。
橋の向こう、旧県道が写真中央右寄りの森が凹んでいる部分目指し上っていくのに対し、軌道は阿仁川の急な河岸を伝って麻生地区の起点まで伸びていたはずである。
位置はほぼ特定できているが、2003年12月現在、未探索の空白ゾーンだ。

ところで、小阿仁森林鉄道は麻生が一応の起点ではあったが、軌道全盛期の昭和22年(1947)から末期に掛けて、蛇行する米代川沿いに七座森林鉄道が開設され、麻生と仁鮒森林鉄道起点の仁鮒を結ぶ他、さらに銀杏橋で米代川を渡り、白神山地方面へ続く藤琴森林軌道にも通じて、県下随一の軌道網を形成する一翼を担っていた。



 旧県道から阿仁川と米代川の合流点に形成された広大な洪積平野を望む。
その縁を跨ぐこの橋(以降、正式名が分るまで「増沢川橋梁」と命名)の構造は、アノ森吉森林鉄道5号橋梁に同じだ。
ということは、わたしは探索当時全然そんなことは思いもしなかったのだが、“森吉5号橋梁攻略のためのトレーニング”を、この場所でするというもの、悪くないかも知れない。
ここならば、落ちても死ぬまい。
当サイトの森吉林鉄レポートを見て、「あの5号橋梁を私も渡ってみたいけど、はたして出来るだろうか?」とか「一応練習してから行きたい」などという方には、最適ではないかと思う。
というか、5号橋梁よりも長いから、ここができれば、あっちはまず大丈夫でしょう。

なお、ここで怪我をしても、もちろん“本場”逝っても、それは自己責任でお願いします。


2003.12.9作成
その39−2へ

一つ戻る