その48地中海穴2004.3.14撮影
 青森県弘前市 乳井


 弘前市乳井は、北流する平川の東側にある、弘前市としては唯一の市域だ。
市の東側に突きだしたような乳井地区は、三方を大鰐町と平賀町に囲まれ、何とも窮屈そうに見える。
坂上田村麻呂に縁があるという歴史の古い乳井神社が知られているが、道路的にはこれといって見るべきものは、無い。

だが、そんな道の片隅に、放ってはおけない地中物件を発見!

隧道とは、少し違うみたいだけど…。



 主要地方道19号「大鰐浪岡線」の乳井地区を走行中、ふと民家の裏手の斜面に、「気配」を感じた。

さっそく、接近してみる。

小さなリンゴ畑の奥、ただの土の崖だ…。
通りがかりに一瞬何かが見えたような気がしたのだが。
私の隧道アンテナが、ピクリと動いたのは、ガセだった?!



 あれか。

崖の下には、半ば埋もれかけてはいたが、穴のようなものが見え隠れしている。

いや、あれは穴だろう。

穴だ。 穴だ!!

穴発見!!!




 このような、飛び入りの探索は、残念ながら稀だ。
以前であれば、結構行き当たりばったりでも「穴」を発見すると言うことがあったが、最近は、良くも悪くも、二重三重の事前調査の上で、少しでも時間を無駄にしないように山チャリという調査活動をしているので、なかなか思いがけない出会いというのは少ないのだ。
特に、道路由来や鉄道由来のものは、かなりの部分、事前に把握されているので…。




で、今回の発見はそれだけで、もう興奮度まっくすである。
車から降りてきたパタ氏を待たず、早速暗闇に降りる私。
素堀のままの穴は、その坑口の半分以上が崩れてきた土砂で埋もれ、洞床は1m以上低くなっている。
特筆すべきはこの土質で、見たとおり白っぽい、猛烈に脆い砂礫だ。
そして、濡れると粘土質になるようだ。




 なんと、内部にはいるとそこは通路だった。
通路は、左右に伸びており、正面は壁になっていて進めない。
左を向けば、そこには、今降りてきたのとよく似た、やはり崩れかけの出口がある。

なななな、なんなんだ。 これ?




 あっけにとられたまま、右を向けば。

今度は、すぐに出口は見えない。
しかし、あの直角コーナーの先には、なにやら、明かりが反射している。

写真からは、非常に狭い様に思うかもしれないが、実は、大人が直立できる高さがある。
幅も、十二分にある。
部屋にすれば、12畳くらいはあるだろう。
何とも、細長い部屋だが。
家具の破片のようなものが散乱しているが、倉庫などとして利用されている訳でもない。
民家の裏に、謎の穴である。
生活の痕も、ない。



 右側のカーブの先は、やっぱり出口だった。
しかし、3つの出口の中で一番埋没が進んでいて、空は人一人分の隙間からしか見えない。

いまではこの様に埋没が進む穴であるが、当初はもっと大きな坑門が三カ所もあった訳だ。
通路としての穴。つまり隧道ではないだろう。
3つの出口が同じ方を向いており、しかもあまりに近すぎる。
隧道を掘って迂回する様な障害も、外にはないし。
とすれば、防空壕か、倉庫か。
三つも穴がある理由は、全然説明できないが…。




 パタ氏は、身長180cmくらいあるけど、それでも余裕の洞内の広さ。
内部は、浅いせいで明るく、開放的でさえある。
しかも、特異な土質によって一面が白い。
ちょっとイメージが湧かないという人もいると思うけど、私的には、「白亜の地中海のホテル」というイメージである。
それで、所有者がいるとしたら申し訳ないけど、勝手に命名。「地中海穴」。

でも、整備したら、ここはいい部屋になりそうじゃない?
静かそうだし、暖かそうだし。
頭上は、お墓だし(実話)。




 ひとしきり探索したら、あとは脱出。
結局、何のための穴なのかは、全然分からず。
入ってきた穴からでるのも芸がないので、一番小さな、そして急な穴から脱出を企てる。
それが、ご覧の穴なのだけど、意外にこれが大変だった。
笹立隧道の湯野浜側坑口並みに狭く、しかも、足場はあそこよりも遙かに悪い。
ここから出る必要がないのだから、他の穴からでたらいいのに…。
意地になって、何度も這い出ようと斜面に張り付く私だが、アリ地獄のように次々に崩れてきて、しかも頭がつかえて出られない。

ムキー悔しい!

あきれるパタ氏が車へ戻っている間にも、私はまだ頑張っていた。

そして、ついに脱出に成功。

結果、頭が泥にまみれました。
ごめんなさい。そのせいで私はパタ氏の愛車を相当に汚してしまいます。この後。





 やったぜ、自己最狭記録だ!!

探険の目的がスッカリと抜け落ちてしまったところで、謎の地中海穴の探索終了。

ほんと、何も分からないままだ。





 私は、図中の「入口1」から入り、まず「入口2」を左に見つつ、最後には「入口3」から脱出した。
「入口2」から「3」までの全長は、20mほど。
脆い地質を考えれば、そんなに歴史のある穴では無さそうだが。
他にも、付近に同じような穴があるかと探してみたが、見あたらなかった。

お近くにお住まいの方で、何かご存じの方は、是非ご一報下さい!





 おまけに、入口2の外見。
こりゃ、実は一番くせ者の坑門だったかも…。
よかった…、ここから出ようとしなくて…。

 おわり。


2004.3.23作成
その49

一つ戻る