2015/9/14 15:33
今日の日が昇る前からずっと続いていた、いつ果てるのかと思うほどの長い海岸の旅も、ようやく終わりの時を迎えそうだ。
福井市近郊を出発し、ひたすら自転車で越前海岸を南下してきた私だが、今見えてきた敦賀市五幡の集落で内陸へ向かう県道209号へ入り、今庄(南越前町)を目指して走る予定だった(今庄からは輪行でスタート地点へ戻る)。
そんな計画を達成するためには、この県道209号は是非とも走破したい要所となる。これが越えられないとなると、このまま敦賀駅を目指すことになるから、そこから福井方面に輪行すると………高い。
まあ、単純にそれだけなんだけどね。時間的には別に得もあまりしなさそうだが、どうせなら、探索も出来て安いほうが、嬉しいよね。(ウンウンペンチウム)
15:34 《現在地》
あれれー?
ここはまだ、予定していた県道の起点である五幡交差点では無い。
その300mほど手前(北側)の地点であるのだが、
いかにも県道っぽい、真新しい立派な道が、
国道から分岐していた。
しかし、
「行き止まり」だという宣言も、忘れてはいなかった。
すなわち、県道の未成道か〜! いいね〜いいね〜〜。
いいね〜〜!!
「行き止まり」の表示に続いて、入口から見える近場にもう一枚、間髪入れず、
「この先県道行き止まり」の大きな看板が設置されていた。
これにて、この道が県道209号の未成の新道であることが、ほぼ確定。
「行き止まり」だといいながら、今のところ特に封鎖はされていない。
それにしても、この海岸沿いの国道を背に、新しい起点から見るウツロギ峠は、
標本的な鞍部の形を見せていて、170mという高低差が、実感的に迫ってきた。
特別に険しい様子は無いが、これを越える道路の開通には、なぜかだいぶ手間取っている。
最近になって集落近くに作られたらしい道にしては珍しく、歩道は無い。
しかし車道の幅は立派で、全然車が通っていないのが奇妙に見える。
道の両側にあるのは水田だけで、人家は全くない。
広大な水田は、山に向かって徐々に高くなっていく地形を、大きな短冊状に区画整理された綺麗な段々で上手く利用していた。
この行き止まりだという県道の現時点での役割は、ただただ、農道であるのだろう。
15:39 《現在地》
400mほど一直線に進んできたが、ここで唐突に左カーブが出現。
ただカーブがあるだけで紹介するのは変な話だが、実際にはそれだけでなく、このカーブから先は微妙に道が未完成である。
鋪装は完備されているし、道幅も今までと変わらないが、センターラインや車道外側線といった白線が未施工である。
だが、それでもまた「通行止め」を示すものは何も無い。
水田の終わりとなる山裾の緑も近付いてきているが、果たしてどこまで作られているのか。
地理院地図だと、そろそろ、やばいはず。(スーパーマップルデジタルは、最新版の「16」でもこの道を全く描いていない)
で、ここで全く唐突に、前触れ無く、
見返り絶景!
こんなに綺麗だったとは、思わなかったでしょ? 私もここまでとは思わなかった。
なにせ、地形としては別に平凡な、結構どこにでもありそうな海と田圃の組合せである。
でも、美しかった。標高が高くなくても、地形が険しくなくても、珍しいものが写っていなくても、
絶景と思う景色は、日本のそこかしこにあるから良いな。道路が主役だから、なおいいな!
個人的には、今の景色を見れただけで寄り道した甲斐は十分あったと思ったが、そんな満足感を道路が感じ取った訳でもなかろうに、田圃の連なりが終わる山の端に辿り着くと同時に、突如道は姿を消していた。
農道としても使える区間だけは整備したが、峠越えにしか使えないこの先の区間は、まだ整備しないということなのだろう。
まあ、これは多分賢明な判断である。十分に貫通できる目処が立ってから、一挙に工事を始めれば宜しい。
問題は、そういう日が何時来るのかな、ということだが…。
15:41 《現在地》
結局、国道との分岐から500m少々、高度については10mばかり登っただけの山裾地点で、この立派な未来の県道は終わっていた。
地理院地図が描いている終点は、正確な位置である。
なお、県道としての工事は今のところここまでだが、田圃の中の畦道を通ることで、本来の県道へとショートカットする事は出来そうだった。(ただし、なぜか柵があって車は通れなくしてあった)
しかしこのショートカットは、敢えてしなかった。折角なら、現県道も一から走ってみたい。
もう、振り返ったら絶景があるのは知っているので二番煎じだが、いいものはいい!
少し望遠で振り返る、五幡の田園&海浜風景である。
背後の敦賀湾と、さらに向こうに敦賀半島の存在感が、静かな里の風景に迫真の印象を与えていた。
なお、新道沿いには田圃しかなかったが、これから向かう現県道は、向こうの集落の中で産声を上げている。
一旦国道へと戻り、左折して五幡交差点を目指す。
ちょっとだけ補足。 新道はいつごろ整備されたのか?
現場の雰囲気としては、ここ10年以内くらいに建設されたように見えた、今のところ田圃の中を横切っているだけの約500mの新県道であるが、実際はいつ頃整備されたのだろう。
残念ながら、正確な時期や経緯の調べはまだ付いていないが、平成になってから撮影された、以下のような3枚の航空写真を見較べてみると、確かにここ10年台の出来事であろうという事が分かった。少なくとも、どんなに早くとも、平成6年以降である。
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五幡地区内の水田は完全に区画整理がなされており、その幹線として新県道が機能している現在の状態。
| 水田の区画整理が北側から進められており、それに伴って新県道の位置が造成されている(まだ路面はなさそう)。
| 地区内の水田は昔ながらのモザイク模様であり、その間を沢が曲流し、新県道は影も形もない。
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以上を見る限り、この区間の新県道整備は、大規模な農地の区画整理事業が「主」であって、道路はその副産物的に、将来の全線改良の可能性を残すべく、先行整備されたもののように感じられる。
なので、いま現在もこの先の山岳区間における新県道は、建設の時期は無論のこと、ルートの詳細さえ決定していないかもしれない。
航空写真からは、そんなようなことを感じた。
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