畑の沢林道。
秋田市東部から北部にかけて、その境界線に沿って、太平山地を縫うように伸びる、未整備の峰越林道。
人により、白山林道、新城林道とも。
前後の林道とあわせて、その総延長は、少なく見積もっても22Kmを越え、紛れも無い市内最長林道。
それがこの道の、数字的な説明だ。
しかしこの道は、私にとって、特別な思い入れのある一本なのだ。
約10年前、山道をチャリで走る趣味に目覚めたばかりの頃、私と友に、山の恐ろしさを教えてくれた道である。
走れども走れども、一向に終わらない林道。
水が尽き、食料が尽き、疲労と焦燥で鼓動が早まる感覚。
突然のパンクに、容赦なく沈んでゆく日。
あたりが夕闇に包まれた頃、やっと里に降り立った時の喜びは、忘れられない。
そして何よりも、
山河がチャリに対して余りに巨大なこと、
計画は自身の体力と相談して立てねばならぬと言うこと、
それら、重要な訓戒を、与えてくれた道。
その後も、自分たちの力を確かめるように、何度も何度も足を運んだ。
ある時には、無謀にも、上りでの無休息を志し、失神寸前まで疲れ果てたこともあった。
次第に自分たちのフィールドが広がると、さらに長大な林道があることを知った。
河北、ブナ森、田沢、弘西…。
しかし、それでもこの道は、特別だった。
これ程に長大でありながら、その入り口までは、1時間もかからないほど近場だった。
また、この道が余りメジャーでないことや、相変わらず未整備であることも、占有したような高揚感を与えてくれた。
ほかにも、この道が格別に愛された理由があったが、…今回の再走でそれを思い出すことができた。
1998年ごろ、この道に道路生命の危機がおとづれる。
峠付近で、大規模な崩落が起こり、一切の車両交通が断絶したのだ。
その惨状はひどいもので、実際復旧されることなく時が流れていった。
1999年、前後の廃道化が著しかった。
モトクロスバイクまでが、引き返してくるほど、荒れ果てた。
泥まみれで突破したトリオもこの頃から、それぞれの事情により、チャリから遠ざかった。
結果的にこの旅が、トリオ3人で走った、最後の旅となった。 それは、2002年の今も変わらない…。
私は、いっそう山チャリに傾倒したが、近場からは興味が遠のいていた為か、その後、この地をおとづれることは無かった。
そして、今。
ふと気になって、半日の軽い山チャリ。
舞台は、山チャリ原体験の眠る深山「畑の沢」。
カーブを曲がり新しい景色が眼前に現れるたびに、忘れかけていた記憶が、堰を切ったように蘇ってくるのを感じた。
余りに、鮮烈で、感動的な、至福といってよい山チャリとなった。
断言できる、県内有数の、オススメコースであると!
その証を、いまここに!
<地図を表示する>
畑の沢林道には、右の地図をご覧頂ければお分かりいただけるように、多数のアプローチが存在する。 今回は、秋田市からは最も与しやすいと思われる、この白山林道経由で挑戦した。 白山林道は、その名の通り、秋田市上新城白山地区から入るもので、土崎からは県道231号線を終点まで進んだ後、標識の「白山」の文字を頼りに何度か曲がるとたどり着く。 この写真の場所は、白山林道に分け入る分岐点直前のもので、左が目的地方面となる。 ご覧の通りの、のどかな場所だ。 |
時刻は、午後1時半過ぎ。 入山時刻としては、いささか遅いが、慣れ親しんだ地元の山。 のんびり行こう。 ただし、実際はこれから挑むのは、20kmを越える林道であり、安易な突入は慎むべきである。 これから先、自動販売機なども無いので、十分な飲食料の準備は怠ること無かれ、である。 白山林道の前半は、この様な里山風景が続く。 第一号橋から五号橋までの、五つの橋を渡ると…。 |
第五号橋を渡ると、突如砂利道に。 白山林道との白い立て札と「山ビル注意」の立て札。 このあたりの林道入り口付近では、おなじみの光景である。 長い長い山道の始まりである。 | |
この白山林道、個人的に畑の沢林道へのアプローチとしては、もっともやさしいコースと思う。 黒川林道は、全線舗装だが、延長が4500mとやや長いうえに、直線的な登りが多く疲れやすい。 北側からの、大沢林道や新城林道という選択肢もあるが、そもそも、秋田市側からは遠回り過ぎて実用性に乏しい。 その白山林道であるが、ご覧の通りの、河原のような砂利がうざい。(この様な区間は一部であるが。) |
1Kmほどの厳しい登りを経て、勾配はいくらか緩み、稜線上の道となる。 ただ、杉や松の混交林は視界に乏しい。 未整備の林道であるが、通行量が結構あるようで、路面は良く絞まっている。 |
の地点から、2.5Kmほどの登りをこなすと、この分岐点にいたる。 標高は約200m。ここまで、170mほどの登りである。 この分岐を左折すると、黒川林道で、今でも細々と採油が続く秋田市金足黒川にいたる舗装林道。 畑の沢林道は、ここを直進。 いつも思うが、いきなりの威圧的なこの登り。 …心理的に、左へ下っていきたくなる。 もちろん、今回迷いは無い。 一休みして、突入だ!! ここからが、長〜いのだから。 |
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