道路レポート  
秋田県一般県道102号 大館鷹巣線  最終回
2004.5.1



 現在まで未供用のままの県道102号線だが、既に基礎的な土木工事を終えていることを現地で知った。
しかも、それは自衛隊の手による大掛かりなもので、現地には立派な記念碑まで建立されている。

なぜ、工事は中断されたままになっているのだろう。
その答えを求め、大館市へと下る、最終回。


峠を越え大館市
2004.4.21 13:28


 記念碑のある峠から道は二手に分かれており、右の道が稜線上の造林作業道で、右が本線である。
これは、最初に誤って作業道へ入ってしまったときに撮影した、これまで登ってきた築堤上の道と、その背後の山々である。
巨大な土木工事の痕跡が認められるだろう。
背後の最も高い山が、摩当山と思われる。

この撮影の直後、引き返して峠へと戻った。



 これまでで最も大規模で、かつ高度のある切り通しである。
そしてこれが、田代町と大館市とを繋ぐ峠だ。
法面は一面笹藪となっている。
路面は埃っぽく、付近の伐採地への往来があるようだ。
切り通しの向こうには大館盆地と、県境の山並みの大眺望が開け、爽快である。




 切り通しの先は猛烈な下り坂に転じる。
その始まりには、見慣れた林道の標柱がうち捨てられていた。
そこには、「林道板沢線終点」「延長1860m 幅員3.0m」「昭和42年竣工」「大館市」の文字が。
この先は、本来林道として建設された道を改良し、県道とする予定らしい。

こうなれば、走破は堅いだろう。
ホッとしただけでなく、まさか通り抜けれるとは期待していなかっただけに、嬉しさもひとしおだ。



 大館側は高度のわりに地形が急峻であり、一気に麓まで降りる。
大館市中心市街地は右の山肌の裏に隠れており見えない。
見えるのは、下川沿から川口の集落あたりだ。


 この下りは本当に急である。
路面はキャタピラの跡も鮮やかな荒れっぷりで、県道としての利用は全くない様子だ。
そして、この先はさらなる下りとなる。
ちょっと、始め見たときは圧倒されれたほどだ。

 これがその道だ。
さすがに、これではまだまだ県道として開放するわけにはいかないのも分かる。
この状態では、私も認めざるを得ない。
「ここはまだ、一般道でない」 と。




 この最難所を下から。

一体、どんな勾配なのだろう。
最終的には、さらに大規模な土木工事を行って、高い築堤を築く必要がありそうだ。
ブルだけが走れるような状態のこの道を、一般の乗用車が通れる道まで改善するのは、かなり大変だろう。
こんな状態で工事を中断されてしまったのでは、かなり開通への道のりは遠いと考えざるを得ない。



板沢へ
13:35


 そんな悪劣な県道も、いよいよ終わりの時が近づいていた。
直角的なコーナーと15%を越える急勾配が押し寄せるように続き、あっという間に高度を失う。
擦れるブレーキーシューが悲鳴を上げる。
こうして、我が愛車のシューは、月に一度は交換が必要なほど減るのである。



 広い土砂捨て場で道が分岐する。
本線は、このまま下っていく。
その先には、嫌な光景が。

 嫌な光景ダー。

アレはまさしく、山チャリストの天敵「オヤジ」と、その乗り物だ。
見たところ、切り出した材木を荷台へと載せる作業中のようだ。
大型トラックが道を一杯まで占拠している。
ここまで通行止などの告知もなかったので意外だったのだが、そもそも私が通り抜けてみた道は、一般的には「ないこと」になっているのだろう。
そして、そんな「無いはずの道」から脱出してきた私は、こんな場所で引き返すわけにはいかないのだ。
迂回路のないことを確認した私は、相手に考える隙を与えないよう、速やかに接近し、速やかに脇をすり抜ける。
あくまでも、無知な通行人を装いつつ、素早く華麗に。

オヤジ達のあっけにとられたような視線を微かに背中に感じつつも、誰何されることなくここを突破することが出来た。

…ふ、疲れた。


 景色の変化は早い。
下界に降りるや否や、引欠川を愛宕橋で渡る。
そして、この橋の先は大館平野である。
これで、山岳地帯は終了だ。



 約1kmの直線道路の先で、主要地方道52号比内田代線に合流。
こうして、一般県道102号大館鷹巣線の山越え区間は終了だ。
実は、本県道はこれで終わりではなくて、2kmほど東で52号線から再び102号線は別れ、大館市の中心部まで続いている。
そこは、過密な住宅地を通う路線である。
もちろん、鷹巣町とのつながりを感じさせるものは、路線名の他には何もない道だ。

今回のレポは、とりあえずここで終了とする。


 52号線との合流点には、再び林道板谷線の標柱が。
今越えてきた山並みを振り返ると、そこは低くとも壁のような起伏感がある。

結局、この道の工事が長く止まっている事は分かったが、それ以上のこと、特に今後については現地で知ることが出来なかった。
最後の手段として、本路線の管轄である「北秋田地域振興局」に問い合わせて見たところ、
次のような回答が得られた。

 大館鷹巣線は、大館市と鷹巣町を結ぶ総延長が21.1qの路線で、そのうち4.6qが交通不能となっています。
この区間は、昭和62年から平成2年にかけて、県が陸上自衛隊に依頼し暫定工事した区間です。
しかしながら、その後の公共事業見直し等の社会情勢の変化、周辺の国道・県道の整備による利便性の低下や、また崩れやすい地質など多大な工事費が予想されるため、本格的な改良工事の整備に着手できない状況となっています。
緊急に整備を必要とする他路線の進捗状況を見ながら、また整備手法の検討を行ってから、この路線の整備予定を立てたいと考えています。

 なるほど。
この見解は、今私が見てきた景色と見事に符合するではないか。
公共事業というと、一回始まるともう止まらない、方向も変えられない、そんなイメージがあるが、この道については冷静な判断が効いている様に思う。


 ここが合流点だ。

へ? どこか分からない?

右のガードレールが僅かに切れている場所、あそこが分岐点。
しかし、全く県道らしいものは見あたらない。

ちなみに、将来この摩当山北麓には、日本海沿岸東北自動車道が通ることになる。
鷹巣ICと大館南ICの間の区間には、もう既に摩当山トンネルの計画があり、現在は地質調査中だ。
いずれ工事が始まれば、この辺りの道路事情も変化する可能性がある。
本県道も併せて整備される可能性も捨てがたい。

が、可能性は低そうだ。








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