国道7号線秋田南バイパスは、秋田市浜田境川を起点に、まず大森山を長い切りとおしと中村トンネルで貫通、中盤では雄物大橋で雄物川河口を横断、後半は巨大な砂丘である勝平山をトンネルで貫通、さらには間髪いれず秋田運河を臨海大橋を乗り越えて、秋田市県庁近くの臨海十字路にて現道に合流する、総延長8.5kmのバイパスである。
先に述べたように、巨大な道路構造物を多数有するこの道、昭和56年に着工(事業化は昭和50年)しても尚未だに開通していないという、巨大な国直轄の事業である。
しかし、ついに着工から22年の大願かなって、この秋にも最後の工区である雄物大橋の先から臨海十字路までの区間が、開通する見通しとなった。
このたび、工事の合間を見計らい、単身、一足お先の“走破”をさせてもらった。
そこに存在していたのは、まっさらな白紙に描かれた巨大な一文字のような、まさに爽快の一言に尽きる道であった。
この道が、終わりのない喧騒に包まれる日は…もう、遠くない。
独り占めは、今だけだ。
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市内の渋滞ワースト1として長らく悪名高い、臨海十字路は、南北に走る国道7号線と、山王の官庁街を通りJR秋田駅前へ至る主要地方道26号線(県民には「山王大通り」や「竿灯大通り」「広小路」といったほうが“通り”がよいだろうが。)との分岐点であった。 十字路なのだから、もう一方、国道が併走する秋田運河のほうへ伸びる道もあったのだが、この道はすぐに運河に阻まれでいた。 そんな、十字路というには3方のみが強かったこの山王十字路に、まもなく新たな交通の流れが押し寄せる。 それは県南から、さらには環日本海交通の一部としての、秋田市街を通過する交通の流れである。 市街を経由しないバイパスが、運河を越えて、ここに接続するのだ。 そのとき、秋田市の交通事情にどれほど大きな変化が訪れるのだろうか…? 私は専門家ではないから分からない、 しかし、必ず大きな変化がおきると思う。 この開通には、同じ国道7号として“新国道”や“臨海バイパス”が開通したときと同程度のインパクトがある。 そのときは目前に迫っている。 なんかもうまとめっぽくなってしまったが、これより、進入する! (侵入でもある) |
現道との取り付け部分はまだ未完成で、土木工事中である。 ちなみに、この時間はまだ工事が始まるには早く、無人であることを見越しての侵入である。 当然だが、工事関係者に見つかると、厄介である。 まず、引き返させられるのがオチだ。 それで、このような工事中の道への侵入は決まって早朝(午前7時以前)や、休日(休日でも動いている現場もある)に行うことにしている。 ちなみに、ここは工事中とはいえ道路、即ち公地であるから、廃道探索などでおなじみの“不法侵入”には当たらないはずだ。 でも、やっぱり押し問答は嫌なので、そして当然、危険を避ける意味もあり、早朝が一押しである。 で、やはりこの朝も無人のようである。 しかし、思っていたほどに閉鎖は厳重ではなく、これは7月に見たときとはとは違う点だ。 やはり完成が近いということか。 柵の間を縫って、舗装したての路面に立つ。 眼前に広がる無地のアスファルトが心地よい。 幸い、やはり人影はない。 一応、街中であり人の目もあるので、さっさと奥へ行くことにした。 | |
すぐに現れる「臨海大橋(長さ349m)」 完全に橋自体は完成しており、後は路面整備やガードレール設置といった細かな施工を残すのみとなっていた。 どうやら、歩道は片側のみの、片側一車線の道となるようだ。 写真を見ての通り、緩やかに湾曲しており、僅かながらバンク角もついている。 このカーブは対岸の道への自然な接続を成功させており、非常に機能的かつ気持ちのよい線形と言える。 シンプルながらも、近代的な洗練された建築技術を感じさせる。 20mほど下の水面は、川にしてはあまりに静かである。 この秋田運河は汽水河川であり、またの名を「旧雄物川」という。 大河雄物川の膨大な水量のほとんどが、わずかに上流の導水路(現在の雄物川)で海に抜けており、この運河に流れはほとんどないのだ。 漣ひとつない鏡のような水面を、いまちょうど一艘のモーターボートが、その体の何倍も何十倍も大きな余韻を残して橋の下を潜り抜けていった。 …気持ちよさそうだ。 左の写真は、秋田運河河口方向を望んだ。 古くからの工業地帯が操業の前のひとときの静寂の中に立ち並ぶ。 | |
振り返ると、そこには燃えるような朝日の輝きに、SFの世界のような(いやそれは大げさか)黒い街並み。 しかし…、美しい。 しばし、声を失う。 それほどに鮮烈な美しさである。 この眺めは、きっと、秋田市の新たなる美点になる。 (異論もあろうが)酒田市以来100kmぶりに現れる“都市”の、このオープニングは、秋田市にとって大きなイメージアップになると思う。 それほどまでに、この一瞬の、この眺めは、美しい。 願わくば、この景色に、無粋な背丈ほどもある“隔壁”が加わりませんように…。 | |
橋は、それを意識させないほどに自然に、対岸に降り立つ。 そのまま緩やかに左へカーブしつつ、その先には、ゆったりとした緑の帯が広がっている。 見渡せば、白い洞門、そして都市的なトンネルが、すでに完成している。 |
見えていた洞門に近づく。 路面は、アスファルトではなくコンクリートのような特殊舗装となっており、この舗装は割山までの今回開通区間のほぼ全てが同じである。 ただ、このあと更に舗装されるのかもしれない。 洞門は、名称不明。 秋田では洞門よりもはるかに多いスノーシェードとは明らかに違う。 これは紛れもない洞門である。市内初の洞門である。 しかし、洞門は全部で2車線分しかないので、将来4車線化の折には、一方の車線が洞門の外ということになるのだろうか? そうなると、不思議な光景が見られそうだ。 しかし、ふと思ったが、この洞門って、どうしても必要だった?? 洞門入り口の脇の路肩に乗用車が一台停まっていた。 工事関係者かと、一瞬戦慄したが、中を覗くと、オヤジが一人寝息を立てていた。 車でどうやって侵入?? | |
抜けると、さらに直線が続き、まっすぐトンネルに吸い込まれていく。 トンネル前から、緩やかな登りになっていることが、トンネルの先の小さな窓に、青空が映ることからも、わかる。 ここに小さな飯場があったが、幸い無人。 改めて「立ち入り禁止」の看板が立てられていたが、こんな奥にも設置されているということは、私のほかにも侵入者が後を絶たない?! さっきのオヤジといい…。 |
勝平山トンネルは、勝平山という日本海の巨大な砂丘地形をくり貫いている。 しかし、トンネルと地上との高低差は僅かしかなく、もしここが完全な無人の山地であれば、切り通しと言う選択肢もあったであろう。 そうならなかったのは、地上に「秋田カントリークラブ」というゴルフ場があるためではなかろうかと、私は考えている。 また、この勝平山の、南側の一帯、秋田運河に落ち込む河岸は急峻であり、なかなか踏み込める場所ではないのだが、ここが異常繁殖とも言われるほどのアオサギの大コロニーとなっている。 時期によって、一帯の木々の葉は、山が禿山に見えるほどに無残に食い荒らされてしまう。 この写真に写っているのは、当分は利用されることのないであろう、4車線拡幅時のための予備トンネルで、さすがに砂利敷きのままである。 | |
こちらは、完成間近の車線のトンネル。 正確な長さは不明だが、結構長く600mくらいだろうか。 まだ電気工事が残っている。 設置物がまったくないトンネルは、なんとも、のっぺりとしており、気持ちよいような、不気味なような? 緩やかな登りの向こうに見える出口からは、朝日が強烈に照らしこんでおり、中央部でも長さほどの暗さはない。 | |
中央部から出口を撮影。 差し込んでくる光の強烈さが強調されている。 走りながら撮影したせいか、いつも以上に迫力のある一枚が撮れた。 まるで、漫画の集中線のような効果が出てるでしょ? 思えば、このトンネルへの侵入はこれが、3度目か。 1998年ごろに始めて発見したときには、まだ臨海大橋など影も形もなく、計画も知らなかった私は、なんとも突飛な場所にトンネルを掘ったものだと、驚いた記憶がある。しかし、その当時からこのトンネルと洞門は現在と同程度完成していた(未舗装ではあったが)。 どうやら、臨海大橋の施工には予算的な問題があったのか、しばらく工事は中断していたようだ。 2度目は、2001年の夏ごろではなかったかと思うが、丑三つ時に真っ暗なトンネルに一人、チャリの小さなハドゲン球のみで侵入したときは、さすがに鳥肌が立った。 このトンネルの無機質さが、逆に生々しいとさえ思えたほどだ。 | |
で、脱出。 | |
先は、トンネル内と同じ角度で尚も登り。 疲労を感じるほどの角度ではないが、長さは相当のものだ。 写真の通り、犬の散歩中のオヤジに遭遇。 トンネル出口付近に工事車両が出入りするポイントがあり、おそらくはそこから侵入したものと思うが、なんか、“自分だけじゃなかった”のが無性に悔しい。 しかも、犬付き、とは。ちょこざいな!(←意味不明) これをさっさと追い越して、さらに先の景色を何とか独り占めすることに! |
登り終えると、そこには防砂林の向こうに日本海が広がる。 荒涼とした景色の中にぽつんぽつんと立ち並ぶ風車。 今や、秋田県内ではそれなりの知名度を得た“発電風車”だが、初めてここにお目見えした頃は、私もその異形ぶりに驚いたものだった。 無数に立ち並ぶ風車は、風力発電所としてちゃんと(?)営業運転をしている。 実は風車と、この秋田南バイパスには、切っても切れない関係があるという。 先ほど越えてきた「臨海大橋」のロードヒーティング、「勝平山トンネル」などの道路照明、それらに必要な電力が、勝平山山中に新設された一基の風車で賄われると言うのだ。 実用は開通後、今冬からだそうだが、このような風力発電の活用は県内初、東北でも2番目のことらしい。 余剰な電力は、東北電力を通して一般に販売するということも含め、なんとも画期的である。 |
右に旧秋田空港跡の赤茶け草生した路盤を見下ろすようになると、今回開通区間は終わりが近い。 まもなく、空港跡と海岸線の風車の合間から通称はまなすロード(主要地方道65号線)が接近してくる。 同時に左側には、割山の住宅地と、通勤の車でごった返す、やはり主要地方道65号線が現れる。 バイパスは、県道にランプ構造で接続しつつ、そのまま既に開通済みの雄物大橋へと続いてゆく。 | |
幅13m以上ある路盤の隅に敷かれたなんとも華奢な感じのレール。 そのレール上に、兵器のような巨大重機が道一杯に鎮座まします。 何の機械なのか私には分かりかねるが、状況から見て、そして「日本鋪道」というロゴから考えて、このコンクリの路盤自体、コイツが動いて作り上げてきたものではないか。 なんとも大掛かりな機械であるが、その能力も相当なものだ。 洞門からここまで、継ぎ接ぎのない綺麗過ぎる路盤を見てきた私は、そう思った。 | |
その重機の先には、コンクリの路盤はなく、むき出しの土であった。 直前の県道交差部分から県道を見下ろしたのがこの写真。 写真からはそう感じられないが、通勤ラッシュの通行量がすごかった。 きっと、この開通でいくらかでも緩和されるだろう。 |
間近に見えてきた大森山、はるか遠く、雲上に見える鳥海山。 秋田南バイパスとして既に共用されて久しい雄物大橋の袂で、今回のレポートは終了。 ここまでの区間が開通すると、ついに、秋田南バイパスは全通となる。 確かに、本年中の開通ということが実感される工事の進捗振りであった。 まもなく、我々の前にこの道は、登場する!! | |
END
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