県道大曲花巻線は、その名の通り秋田県大曲市と、岩手県花巻市とを結ぶ、全長90kmほどの主要地方道である。
その主要な中継地は、秋田県仙北郡六郷町、岩手県和賀郡沢内村などであるが、その路線のほとんどが、奥羽山脈の横断に費やされている。
路線全体が奥羽山脈とのバトルと言っても過言ではない、筋金入りの山岳路線だ。
峠は大きく分けて二つあり、一つは六郷町から県境を越えて湯田町に至る笹峠(海抜620m)と、沢内村から花巻市に至る中山峠(820m)である。
昭和43年に主要地方道に指定された当時は、この両方の峠が不通であり、ほとんど名前だけの県道だったが、平成12年になりやっと、中山峠に近代的なトンネルが開通し、夏期の往来が可能となった。
だが、笹峠については、平成16年現在でもまだ、未開通の不通区間となっている。
笹峠は県境でもあり、中山峠よりも標高は低いものの、脊梁越えである。
この道を初めて拓いたのは、旧六郷町長の畠山久左右衛門氏であり、明治16年に2000円余りの私費を投じて開通させたとされる。
当時は、荒川街道と呼ばれていたようだが、盛んに利用され、かの正岡子規もまた、明治26年にこの峠を越え、湯田温泉郷へと向かっている。
この峠の約10km南方に、国道107号線が僅か海抜300mの巣郷峠で県境を越えている現在では、険難な笹峠越えを敢えて開通させた意義を見いだすことは難しいが、当時はまだ国道の元となった平和街道もまた、白木峠という難所を抱えており、620mという笹峠も、秋田岩手県境部の奥羽山脈の中では比較的低い鞍部であると言える。
荒川街道の往来は、平和街道の整備が進むにつれ衰微し、昭和の車時代の到来と共に、表舞台から姿を消してしまったようである。
なお、レポート中には、「六郷町」の名を使用していますが、平成16年11月1日より、六郷町は周辺町村との合併により113年の歴史を閉じます。
新町名は「美郷町」です。
お読みいただきありがとうございます。 | |
当サイトは、皆様からの情報提供、資料提供をお待ちしております。 →情報・資料提供窓口 | |
このレポートの最終回ないし最新回の 【トップページに戻る】 |
|