都道194号 成木河辺線 前編

公開日 2007.3.26
探索日 2007.3.14

 都内にある自動車交通の出来ない都道は西部の多摩地区に集まっている。その多くは山間部ないし郊外にある。今回紹介する一般都道194号成木河辺線もまた、そのような路線の一つである。
 そしてこの道は、ある“特異な事情”により通行不能となっている。
その事情ゆえ、従来この通行不能区間の南半分については踏査が難しく、ネット上にもこれといったレポートが存在しないようである。今回、私は意を決して挑戦してきた。

 結論から言えば、道はある。
だが、この道を通ろうとするものは皆、心臓にふさふさの毛を生やす必要がある。もの凄く図太くなる必要がある。


 レポートに入る前に、右の地図を使って路線を概説したい。
本線(都道194号成木河辺線)は、東京都青梅市の東部を南北に縦貫する路線である。資料によれば全長は6697mあるが、このうちちょうど中央部に位置する小曽木3丁目(都道28号交差点)から塩船までの約2.2kmが自動車通行不能区間となっているようだ。(はっきりとした資料がないが、大概の地図を見るとこの区間だけ都道の色が抜けていたりする)
中央部で寸断されているこの路線だが、それ以外の区間の通行量は少なくなく、全く独立した道のように振る舞ってはいるが、それぞれに重要な路線となっている。具体的に言えば、北側の成木から小曽木までは北多摩地区から秩父方面への抜け道となっているし(地図中の上端は既に埼玉県である)、南側の河辺から大門をへて塩船までは青梅市街地の外環状線を成しており通行量が特に多い。

 と、このように重要な路線でありながら統一感が全くない成木河辺線。
その不通を暴く!


豹変する都道

青梅市河辺の終点から出発


11:02

 今回が初挑戦となるこの不通都道。事前情報を得られなかったのだが、それもそのはず、地図を見ていると私も正直突破できる気がしなかった。
とはいえ、行ってみないことには始まらないので、青梅市河辺(かべ)の終点側から不通区間を目指すことに。

 終点の河辺交差点は、青梅市内でも有数の交通量を誇る場所。都道29号立川青梅線(奥多摩街道)に立つ青看には、行き先「塩船観音」となっていた。
まさしく不通区間の入り口の地名である。



 青梅市街地の東側を緩やかな弧を描く形で北へ。途中、都道5号青梅新宿線(青梅街道)や都道63号青梅入間線(豊岡街道)といった幹線道路とぶつかり、それぞれに大きな交差点がある。
まだ全く、不通区間へ近づいているという感じはしない。



 豊岡街道とクロスする大門交差点。
ここで道が狭くなる。
とは言っても、まだちゃんと2車線ある。狭くなったのは歩道や路肩だ。



 慶友病院の前を過ぎ、やや下って霞川を渡る。
私はこの途中のコンビニで昼飯を食べた。
再出発は11時48分。
あまりいい日和なのでちょっと眠たくなってきたが、間もなく道は怪しさを醸し始める。

 この写真の交差点は、路面のペイントを見ても分かるとおり右折がメーンだが、都道は左へ進む。右の道はただの市道だ。
とはいえ、左にもちゃんと「塩船観音」という行き先表示があるので不安はない。不安なのはむしろ、この先だ。



 はっきり言って、ここから先の都道の描き方は地図によってまちまちだったりする。同じ地図でも縮尺が変わると途端に色の塗られた道が変化したりしている。だから、どれが本当の都道なのかは現地で確認する必要がある。(然るべき機関に問い合わせる事も出来るが、まずは自力発見というのが、一つの道で二度楽しむ技?)
いずれにしても、この先の山中で都道は2km強ほど途切れているようだ。

 手持ちの大縮尺の地図をコピーした紙切れを片手に持ち、それを見ながら片手運転で閑静な住宅地の道を進んでいく。
そして、左に目印と踏んでいた駐車場が現れた(右写真)。
都道はここから山の中へ折れるはずなのだ  が…



 …こ これか…


 う〜む。

 香ばしい。



 当たり前のように何の標識も案内もない。
だが、私が最も信用する地図には、ここが都道であるように描かれている。
半信半疑ではあるが、その証を求めて曲がってみる。
とりあえず、方角的には間違っていないし。
この正面に見えている山並み(霞丘陵)の先に、目指す小曽木や成木はある。
果たしてこの頼りない道は、山の向こうへと私を連れて行ってくれるだろうか。



 これが、都道探しの面白いところである。
都道に面して建てられた電柱の中程に、小さなプレートが取り付けられている。
そして、そこには都道の番号が付せられている。
よって、この標識を頼りに都道を確定することが出来るのである。
これは、秋田県他東北地方のどの間でも見られないギミックであった。
もっとも、電柱がないような山間部の都道ではこれも通用しないであろうが…。

 画像にカーソルを合わせて拡大してみて欲しい。
そこには、紛れもなく「194」「東京都」の文字が見て取れるだろう。

 ここは都道である!




霞丘陵越えの難所?


 11:53

 ここが都道との確信も得られ、ニヤニヤしながら右折すると、そこには何とも出来損ないな都道が…。
道を広げるなら広げるで、全部舗装してくれても、いいんじゃない。
工事中なのかと思いきや、辺りにそれらしい車はいない。
まさか、これで完工?!



 少し行くと、やっぱり狭くなりました。
しかも、もともと普通の1車線しかなかったところが、半分以下になっている!
早くも普通車にはピンチ。

 とはいえ、まだ電線は続いているし、舗装もある。
意外にも、どうにかこうにか抜けてるのか?



 あわわわ。わ。

まずい雰囲気。
既に都道ではなくて、この工場の私道だったのか?
背を向けているオヤジさんがこっちを向いたとき、私の企みの全てが否定される懼れがある!

 ここは突破だ!
オヤジさんが此方を向く前に、突破!!
大の大人がMTBに跨って軒先を疾駆するのだから、きっと端から見たら怖かっただろうけど、これが私の役目。

 まだ、終われない!



 あわわわわ×2。

 オヤジさんの視線をかいくぐったと思ったのも束の間、道を塞ぐ軽トラか?!
ここ、都道じゃないの?

 妙にテンションが上がっているのは楽しいからに他ならない。
怪しい都道はたのしぃねぇ。
で、よく見ると軽トラの脇にはまだ車一台分の隙間があって、一安心。
何もオヤジにビクつく必要なんて無かったんだ!
ここは、天下の公道であるぞ!!



 2車線の道を踏み外してからまだ200mくらいしか来ていないが、大変な転落人生。
既に舗装さえお亡くなりになり、霞丘陵との一騎打ちと相成りました。

 しかーし!

本当の難所はまだ先だった。
道がないなら諦めもつく。
道はあるけど、この先は難所。



 おっ。 ゲートだよ…。


 だが、実はここはダミー。
我々オブローダーの悲しい性で、ついつい塞がれた道が正解だと踏んでしまうが、ここは逆。
塞がれているのは関係なくて、都道は真っ直ぐである。

…って、
真っ直ぐの道はさらに狭まって、いよいよ怪しさマックス。楽しさもマックスに。



 道幅はいよいよ軽トラ一台が限界に。
こりゃ確かに自動車通行不能かも知れん。

 電柱が無くなって以来は、都道だという確信も持てない。(こんな道では持てっこない)
無いが、ここを都道として考えなければ、全長6697mで起点と終点を結べないのも事実。
それに、我らが「プロアトラス」君は、堂々と県道の色を塗ってるしねー。



 で、ものの数分で呆気なく稜線らしき場所へ到達。
直前には、良く遊歩道で見るような木製の案内柱が建っていたりして、ちょっと興ざめ。
この近くには歴史の道として知られる七国峠などが、遊歩道化されて残っているのだった。
しかし、今の私に遊歩道の案内など雑音でしかない。
欲しいのはただ、君だけ。 都道だけだよ。

 で。何気なく足下の道を進んでいく。
でも、もうここで落とし穴に落ちていた。実は道間違い。



 稜線上のこざっぱりした土の道を100mほど行くと、ますます路面は鮮明となって、さらには公園で見るような車止めが。
あたりには、「霞丘陵自然公園」や「ハイキングコース」という、私の嫌いな文字がちらほら。

 「あ〜 こりゃ間違ったな」

そう直感。
地図でもここは間違いやすそうな場所だった。
それで事前にマークはしていたのだが、やっぱり間違ってしまった。
ここまで、例の柵で閉じられた分岐以降に分岐らしい物はなかったが、らしい物が無くても、分岐は確かにあったのだ。
地図には、あるのだ。

 辺りを見回してみると…地図上にある“正しい道”は、確かにすぐ側にあった。

 あったけど、 ちょっと…  こ れ は ……。



いや〜〜ん!

聞いてないよとは言わせない。
地図を見たときに知っていたさ。
だからこそ、今まで誰もレポートしなかったんだとも、知っていた。

山行がの前に立ちはだかったのは、へなちょこな霞丘陵などではなく、

ブルジョアたちの殿堂
青梅ゴルフクラブ

まさにのこ時も、すがすがしいグリーンの上でプレイに興じるお父さん達がチラホラ。
今日は平日だよお父さん。 なんて、私が言えるわけもなく。

今度の敵は、どうにも手強そうである。



 都道は、右の地図の通りにゴルフ場のまっただ中を突っ切っている。(地図中の点線)
前出のアトラス君に至っては、ここを都道の色で塗るという大技を炸裂させているが、例によって車は通れない。
現時点ではあくまでも書類上の都道と言うことなのだろう。
だが、そこを現実の道として体験したいのが私。

 現在地は都道から少し外れた稜線上。
本当の都道は、上の写真にも写っている。
ゴルフコースの手前を横切る砂利道がそれのようだ。

 こっから先、ゴルフ場を突っ切らなくても数キロ迂回すれば反対側に行くことは出来る。
しかし、ごく一部とはいえここを都道として描いている地図がある以上、見過ごせない。
ゴルフ場内を通ったら駄目というのはあくまで常識の範疇であって、実際に通れないのかは我が身で体験する必要がある。

 問題の区間は、約400mである。




 今回のルール。

面と向かって立ち入り禁止と言われたり、
道路を塞ぐ明らかな遮蔽物があったり、
立ち入り禁止が明示されていたら引き返す。

そうでない限り、コース内だって行く!


 果たしてゴルフ場に 乗っ取られた 都道は無事なのか。 そしてその先の都道は?


   以下、次回。