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  [No.6239] 『伊豆半島の高規格道は、なぜもっと早く整備されなかったのか? 疑問と推論。』について 投稿者:旧静岡市民   投稿日:2011/09/19(Mon) 01:21:50

ご無沙汰しております。
興味深く拝見いたしましたが、旧静岡市民として論点の提示もかねていくつか見解を述べさせていただきます。


1.静岡県自体がばらばらで、行政にとっての伊豆の重要度が高くないから(優先度の高い事業が他にある)

 静岡県は、中部(静岡市、焼津市、藤枝市)、西部(浜松市を中心とした掛川以西)、東部(沼津、三島を中心とした富士市以東)、伊豆という大まかな4区分をし、あたかもそれぞれが別の県であるかのような状況があります。
 70万クラスの政令指定都市の浜松がある西部は独自色が強く名古屋の影響を強く受け、沼津、三島などの県東部は通勤圏にもなる東京の影響を強く受けます。熱海はその傾向がより顕著になります。

 伊豆もそれぞれ東伊豆(伊東から下田まで)、中伊豆(修善寺)、西伊豆(土肥)と傾向が違い、東伊豆は熱海とともに伊豆急も絡めて静岡よりは東京を向きます。

 このような状況の中で静岡県で重視してきた事業としては、人口的に対部分を占める東部、中部、西部に重心が置かれ、国道1号バイパス、第二東名、新幹線駅建設、静岡空港に力が入れられてきました。今はこれに中部横断道路、駿河湾環状道路、三遠南信道が加わります。
 国道1号バイパスの4車線化も各所で進行中であり、駿河湾環状道路など、他にやるべきところは実は結構あります。


2.休日の観光需要だけでは採算が取れないから

 休日は小田原〜熱海からの東伊豆ルート、沼津からの中伊豆ルートともに激しい渋滞になりますが、平日は基本的に流れもスムーズで、おおむね1時間30分もあれば、沼津、熱海から最南端の下田までたどり着けます。
 観光需要だけでは収益性が悪く、色々と後回しにされるのは、中央道の改良が遅々として進まない状況にも似ていると思います。
 このあたり三遠南信道沿線とは事情が異なります。


3.伊豆も含め静岡が豊かで、ある程度域内で事足りるから

 一人当たりの県民総生産は、東京、愛知に続いて静岡は第3位です。伊豆各地は無医村が深刻になるような過疎状態にはなく、そこそこの規模があり活気もあります。
 平日なら沼津、三島、熱海、伊東、修善寺、下田などの主要都市へのアクセスも問題ありませんので、現状それぞれの地域内でも生活が事足りています。


4.のんびりとした県民性であるから

 気候も温暖で所得も高い静岡県民は生活が相対的に楽なので、のんびりしているといわれます。4期16年務めた石川知事も、いい人だけどのんびりしていて、頭の回転が早く切れるというタイプではありませんでした。
 ご指摘のような高速道路が出来たら日帰りされてしまうという事は、考えてみれば確かにあるでしょうが、そこまで考えていない人も多いと思います。
 首都圏に近く黙っていても観光客はやってきますので、食べていくのに困らない人が多くて、現状に特に不満もなく、それ以上に事業を拡大という事を考えない人が多いです。これは讃岐うどんで有名な香川のうどん店にも同じようなところがあります。


5.隣接する神奈川県も含め、伊豆へのアクセスを改良するメリットが相対的に低くて改良が進まないから(それでも現状困っていない)

 熱海を出ればすぐに神奈川県になりますが、この区間も本格的な高速道路が具体化せずに激しい渋滞が休日に発生しています。
 静岡区間だけ改良しても効果が薄く、通過して出て行くだけの神奈川県にとってこの区間を改良するメリットも相対的に低い状況です。
 静岡県として道路をつけるのなら、沼津に近くて静岡にもメリットがあり、伊豆全体に効果が期待できる伊豆中央部を貫通する道という事になりますが、東駿河湾環状道路も含め、入り口の沼津、三島側でもっと改良すべきところがあり、ようやく目処が付き始めたような状況ですので、なかなか末端まで手が回らないという状況があるかと思います。
 渋滞で観光客は困るかもしれませんが、それでも観光客は来ますので、静岡、伊豆ともにそこまで困っていないのが実情だと思います。

以上長くなりましたが、ご参考まで


  [No.6240] Re: 『伊豆半島の高規格道は、なぜもっと早く整備されなかったのか? 疑問と推論。』について 投稿者:mh   投稿日:2011/09/19(Mon) 12:06:40

私も便乗して…

ブログでの内容に、能登半島との比較がありましたが、
「半島振興法」以前に、すでに石川県が高規格道路(能登有料道路)を全線開通させていて、
半島振興法関連の能越道建設や北陸道接続などはそれに乗っかるだけでよかった点で
伊豆半島とは前提がだいぶん異なる気がします。

そこらへんを踏まえると、
旧静岡市民さんのコメントに納得することが多いと感じます。


  [No.6248] 旧静岡市民さま、mhさま、転載させてください。 投稿者:ヨッキれん   投稿日:2011/09/22(Thu) 12:40:40

旧静岡市民さま、mhさま。

貴重なご意見をありがとうございます。
お二人のご意見は、掲示板だけに留めておくのはとても惜しいものなので、「おぶろぐ」本編のほうに追記の形で転載させていただきたいと思います。
もし不都合がございましたらお申し付け下さい。

ありがとうございました。


  [No.6284] Re: 旧静岡市民さま、mhさま、転載させてください。 投稿者:mh   投稿日:2011/09/24(Sat) 18:13:10

私は、どうぞどうぞ!
旧静岡市民さんのレスに乗っかっただけですからw

旧静岡市民さんのコメント、ぜひ掲載して差し上げてください。


  [No.6291] Re: 旧静岡市民さま、mhさま、転載させてください。 投稿者:旧静岡市民   投稿日:2011/09/25(Sun) 12:42:01

私も全然かまいませんよ
むしろ色々な見解を聞いてみたいですのでお役に立てれば幸いです

mhさんも言及されている他の半島との比較の着眼点も面白いですね
以下の要因も関係していると考えられそうですね


7.地元の生活圏としてどこまでの行き来が主流か(どの程度の距離があるか)

能登半島の場合は金沢志向が強く、地形的に奥が深いので、観光客誘致だけでなく、医療など生活の為にも金沢までの高速アクセスの必要性が高かったと言えそうです。
googleで調べただけでも、金沢から輪島まで3時間30分、先端の珠洲まで4時間30分とか出ますので。
伊豆半島の場合、たいていは沼津三島圏まで出られれば十分で、平日なら1時間もあれば出られる地域が多く、かかっても1時間半もあれば十分です。
小田原に出るという感覚は希薄で、平塚、茅ヶ崎、藤沢は東京横浜の衛星都市で関係が薄く、電車通勤以外で横浜、東京に出る事はあまりない地域で、静岡への帰属意識も薄い事も影響していそうです。


8.当該半島に地政学上重要な拠点(主として軍事関係)があるか

伊豆半島には軍、自衛隊関係の主要な拠点はありません。
三浦半島には横須賀に巨大な米海軍、海上自衛隊、防衛大学校の拠点がありますし、御崎口に近い武山には陸上自衛隊、航空自衛隊の施設もあります。
横浜横須賀道路、三浦縦貫道路などはこれに対応していそうです。

能登半島は奥が深く輪島に航空自衛隊のレーダーサイトがありますし、海上保安庁にとっても重要なエリアです。
自衛隊は従来は北方重視(ロシアを睨んで特に北海道)、現在は西方にシフト(中国、北朝鮮、韓国を睨んで)といいますが、日本海側の重要度は太平洋側とはまったく重みが異なります。

房総半島も、木更津の陸自のヘリコプター部隊だけでなく、館山の海上自衛隊のヘリコプター部隊の拠点があり、館山自動車道と関係が対応していそうです。


その他ブログなどを拝見して興味深いと思ったのは


>推論1。 伊豆半島の最も主要な道路である東海岸沿いの国道135号が、その交通量の多さゆえ、現在の高速道路網が考えられるより早い段階で、そこそこ高規格化されてしまった

これは確かに的を得ていると思います。現状東海岸で集落の中を通り抜けるようなところはほとんどありませんので、典型的な改良方法の集落を迂回する為のバイパスを建設する必要があるところはあまりありません。
昭和40年代頃に完成した道路が多いので、今となっては古くなり手狭で線形もよくはありませんが、平日走るのに問題はありません。


>推論2。 伊豆半島の最も交通量が多い東海岸沿いは、すでに土地の利用度が高く、地価も高騰していたために、新たな幹線道路を建設することが難しくなっているのではないだろうか?

これに加えて、地形が急峻で大規模な内陸側の工事は難工事が想定され、工事そのものが不可能とされている事も考えられそうです。
小田原から三島までは新幹線も線形が悪く、東名はもちろん、新東名ですら御殿場方面に迂回しています。
伊豆急の工事も大変だったとの話もありますので、活断層や、温泉など地下水脈の関係で容易に着手できない事は考えられそうです。
今でも伊豆半島が日本列島を北側に押し上げていて、これがあるので富士山や箱根芦ノ湖が出来たという説が有力なくらいですので。
明治さんが指摘された伊東線が複線化されないのもこんなところが関係していそうです。

小田原から三島まで箱根をぶち抜いて新幹線や高速道路が付く日が来るのかといえば当面なさそうです。
そこまででなくとも熱海から三島まで一直線に高速道路がトンネルで付く日が来るのかといえば、しばらくは目処が立たないと思われます。
東駿河湾環状道路と熱函道路との接続を見ると、将来熱海までトンネルで抜ける高速を想定しているような気はしますが。


A.熱海の凋落が激しく交通改良で日帰り、通過客が増えるのを懸念しているから

これは昔から熱海の観光業者の見解として言われている事ですが、総合的に見て的を得ているかといえば疑問でもあります。
猫も杓子も熱海という時代があった事は確かで、新婚旅行も団体旅行も泊まりで熱海に毎日のように客が押しかけた時代はありました。
でもこれは稀に恵まれた時代の事で、今が普通になったくらいの感覚で見るのが正しいと思います。
他に選択肢のない時代に、東海道線での大量輸送が可能で、首都圏からも近いという立地に恵まれた為で、
伊豆急行の延伸などで他の伊豆各地へ行きやすくなり、全国的にみても観光スポットが増えてアクセスが容易になれば当然の帰結です。
まして選択肢が多様化した現在に、昔の熱海のような一人勝ちという状況は期待するだけ無理な面があると思います。

地元業者が、新幹線が出来たから日帰り客が増えたとか、道路環境がよくなったら日帰り客が増えるとか、論としてそこに答えを見出して警戒するのはわかりますが、
元々温泉という泊りがけで行くインセンティブが高いコンテンツで、地形も急峻で域内の道路環境や駐車場などの構造も日帰りに不向きな環境がそろっているだけ熱海は恵まれています。

団体客前提の設備が古くなり、時代にマッチしなくなっているという現実を直視して、地道に改善していくしかないと思うのですが、地元業者からはあまり聞かれません。
それでも何だかんだで徐々に適度に建て替えが起こり、それなりにやっていけるのですからやはり熱海は恵まれています。


B.政治的要因(有力な政治家がいなかったから?弱小自治体が多く乱立しているから?社会党が強かったから?)

小沢一郎のような強力な政治家こそいませんが、定期的に大臣は出ており、バブルの頃には原田昇左右という建設大臣もいましたし、複数大臣が出た事もあります。
それでも伊豆の道路に力が入らなかったのは、静岡として他に優先するところがあったと見るか、のんびりしていて具体化になかなか結びつかなかったと見るほうが適切だと思います。

また、中小の自治体が乱立していると道路などの総合的、体系的な開発が進まないのは確かです。
昔可美村という村が浜松市に囲まれてありました。
自動車メーカースズキのお膝元で、固定資産税が入るので裕福な為に他の自治体が浜松市と合併する中最後まで残りましたが、道路整備などで体系的な行政サービスが提供できずに結局合併した事があります。
浜松市から可美村に入ると道路が寸断されるような状況で、金はあっても政策立案、実行能力がなく、体系的なグランドデザインが描けない典型例だったと思います。
結局弱小自治体が乱立していると地域固有の利害だけに目が行く分捕り合戦になり、マンパワーも限られるので、総合的な調整、企画立案能力が欠如するような状況が散見され、最近では整備新幹線を誘致する段階で似たような事例が見受けられます。

美濃部都政の悪弊ではありませんが、社会党が強い(強かった)地域でもあり、インフラ整備が進まないといった側面は確かにありそうです。
昔間違えてひかりに乗り、土井たか子との三島での待ち合わせに遅れるからと、無理やり新幹線を止めた桜井何某という議員もいましたが、問題になって無所属になっても落選はしなかったなんて事もありました。
西伊豆、中伊豆、熱海、東伊豆の入り口の沼津、三島側での道路整備もようやく目処が付きそうな程度で遅いほうでしたし。

今でも県東部、伊豆地域は中小自治体が多すぎる感があり、これが静岡、浜松ならもっと合併が進んだと思われます。
最低限沼津市、三島市、清水町、長泉町、裾野市、伊豆の国市は同一な50万都市と見るほうが理にかなっているような気がします。

沼津から電車で20分の富士市と富士宮市で40万都市、御殿場市が9万、熱海が4万、伊東が7万で、全体で広域110万都市としてみてもよいかもしれません。
合併の特例で予算配分がされましたが、合併しなくてもやっていけるだけ恵まれた地域が多かったのだと思います。

平成の大合併の成否は、乱立する地方自治体の非効率改善がひとつの目的でしたが、歳出削減は出来たものの地域に政治の担い手がいなくなるという負の側面もあり、成功だったかどうかは疑わしい面はありますけど。
過疎化が相対的に深刻で、公共事業への依存度も高く合併に活路を見出さざるを得なかった、三遠南信道沿線の方が浜松市への合併を前提に早く高規格道路の目処が付いたのは皮肉なところです。
静岡で佐久間、水窪といえば一番の奥の交通の便の悪いところですが、そこまで高速道路が付くのですからさすがに裕福県静岡県という他ありません。


C.東伊豆135号線沿線の観光客目当ての店の政治力が強いから

確かに全線に渡りあれだけ観光客目当てを主とした店が乱立する観光地は他にないと思います。
それも毎年のようにスクラップ&ビルドを繰り返して、何かしら手が入って変化があるので、寂れた感じがせずに垢抜けた感じがするのは魅力です。
また、西伊豆も含め海岸線の道路は景観がずば抜けて良いところが長く続くので、鉄道も含め走ることがひとつのアトラクションになっているのも他地域にはあまりない点かもしれません。
東伊豆は下手に高速道路なんかを作らずに、高規格で立体化などで渋滞の原因になる信号の少ない一般国道を整備したほうが理にかなっている気はします。
が、そこまで本格的に手が入っていないところを見ると、意見集約して具体化できないのんびりした静岡県なのかな…と思う次第。
いずれ沼津経由で山ばかりで相対的に見所の少ない中央部に伊豆縦貫道が出来そうですから、観光に重要な回遊性も出来て良い方向へと向かうとは思うのですが。

ただ、東名沼津インター付近も観光客目当ての大規模な店舗が乱立していますが、100%素通りされてしまう死活問題であろうはずの東駿河湾環状道路が出来ましたので、
行政区域として大きな沼津市だからかも知れませんが、135号線沿線の店舗にそこまでの政治力があるかといえば疑問です。
地元業者の声として反対はある事は確かですが、そこまで意思決定に影響しているとは思えない気はします。

三遠南信道も、通過も含め交通量はまず見込めない事から、60キロで走れる3種2〜3級程度の一般国道で整備したほうが、追い越しも出来て、店や林道など気軽に沿道に立ち寄れてよい気はします。
今の時代の3種3級程度の道路ですらまっすぐつけますから、交通量さえ少なければ淡々と60キロで流せる高速道路のような利便性はあります。
対面通行の高速だと追い越しも出来ないので、トレーラーやタンクローリーなどが間に入ると30〜50kmまで落ちる事も珍しくありませんし。


以上また長くなりましたがご参考まで


  [No.6285] Re: 『伊豆半島の高規格道は、なぜもっと早く整備されなかったのか? 疑問と推論。』について 投稿者:明治   投稿日:2011/09/24(Sat) 21:13:13

以前レポートにも登場した「宇佐美隧道」を抱えるJR伊東線が複線化しないのも関係ある気がしました。