国道344号線を、八幡町から真室川町へ青沢越えの長い道のりの途中、すぐ脇にこの写真の隧道を発見。
位置的に、国道の旧道(多分、国道がまだ主要地方道酒田金山線であった時代だろうが)と考えられたが、その隧道は、現役であった。
この場所は、鳥海山の南麓に当たる八幡町上青沢大芦沢。
ご覧のような、のどかとしかいうよりほかのない、山村である。
それでは、いよいよ接近してみよう。
西側の坑口の様子。
重厚な造りの、小隧道である。
延長は実測20mたらず、幅員高さとも3m強といった、スモールサイズである。
坑口の左に設置された真新しい黄看板が、この道が現役である事を物語っており、微笑ましい。
内部は、短いわりにウェットであり、コンクリの内壁には無数の削痕が見て取れた。
…かなりの歴史を持つ隧道らしかった。
東側の坑口の様子。
殆ど、隧道にする意味の感じられない立地である様に見えたが、写真の左に写る土の斜面は、多分この隧道が現役であった当事はまだ拓かれていなかったのではないかと思われる。
さて、この坑門では、西側では見つけられなかった扁額が残されていた。
それも意外な設置である。
まるで表札のような控えめな扁額である。
この隧道が完成した当時に設置されたもののように思うが、こういう縦書きの扁額は他に見たことがない。
さらに驚くべきは、その内容である。
隧道名は『蘆澤隧道』である。まず初めは読めなかった。
竣工年度は、驚きの「昭和3年」である。
図らずも、これが私が実走した中で、最古の竣工年度を記すものである。
これを越えるものは、残念ながら秋田県内にはないようだ…。
現国道に戻り、最後に撮影したもの。
分かりにくいが、“出戸浜駅”(じゃあなくて、貨物コンテナ)の背後に小さな坑門が写っている。
現道の広い切り通しとの対比が面白い。
この古隧道は、しっかりと生活道として根付いているようで、末永く活躍しそうではある。
問題は、やはり、ひび割れや剥がれ落ちの目立つ…老朽化であるが…。