道路レポート 十和田湖八甲田山連絡道路 導入
2004.6.20
今回は、まだ目的の道には入らない。
勿体ぶるな!
と思われても仕方がないが、少しだけ待って欲しい。
紹介しないには惜しい景色や情感があったのだ。
完全に自己満足だが、書かせて欲しい。
深夜の樹海ライン
2004.6.16 3:03
午前1時過ぎに出発した私に待ち受けていたのは、いきなりの長い長い登りである。
小坂町の交差点から、県道2号「大館十和田湖線」(愛称は十和田大館樹海ライン)が十和田湖外輪山上の発荷峠で国道103号線に合流するまで約20km。
うち小坂から15km地点の笹森展望台までが延々と登る。
全線2車線の快適な舗装路だが、とにかく高低差が600m強と大きく、徹夜で走るには色々と考える時間がいっぱいある道だ。
具体的には、「この先の不安」「旅先での死への恐怖」「徹夜で走る事へのうんざり感」など、考えなくていいようなことばかり、順繰りに頭の中へと回ってくる。
景色もない延々の登り。
「十和田湖を見たいならまずは汗をかけ!」という感じだ。
とにかく長い登りだったが、午前3時を回るころ、やっとそのピークである笹森展望台の標識が、ヘッドライトに照らし出された。
初めて周辺に広大な景観が広がっている雰囲気を感じる。
しかし、闇の帳は深く、東の空に微かな陰影を認めるのみだ。
三日月よりももっと細い月が、地平ぎりぎりに浮かぶ。
気温は、10度を遙かに下回っている。
厚着しているが、それでもかなり寒い。
発荷峠への下りに差し掛かるとすぐに、辺りはもの凄い霧に包まれた。
ライトが反射してしまい、視界が10m以下となる。
それは、十和田の水鏡から立ち上る朝霧か、或いは雲なのか。
とにかく、最大限の徐行を強いられた。
十和田湖畔へ
2004.6.16 3:35
国道との合流点である発荷峠。
さらに十和田湖畔の和井内へと下りが続く。
峠の駐車場で初めて長めの休憩を取ったが、寒くて長居できない。
霧がますます深くなり、空も見えない。
ここまで、県道ではただの一度も車に出会わなかった。
国道も、走る車は非常に稀で、15分に一台くらいか。
十和田湖という大観光地の中でも特にメジャーな発荷峠に、人が一人もいない。
なんとなく、恐い。
発荷峠から和井内までは、約3.5km。
ここも大変な勾配区間であり、しかも切り立った外輪山の内壁を小刻みなカーブで落ちるように下っていく難所だ。
この高低差は約300m。
湖畔の標高は約400mである。
途中には、今回初めて通る発荷トンネル(1973年竣工)が、煌々と照らし上げられていた。
なんか、体調もいまいち良くない。
眠いというか、気分がさえない。
いつものように、「行くぜー!」と行かないのだ。
ナーバスになっているのが自分でよく分かる。
和井内から滝ノ沢峠へ
2004.6.16 4:05
和井内のT字路で、十和田湖を時計回りと反時計回りのどちら回りで目的の御鼻部山へと進むか選択できる。
距離的には時計回りの国道454号線経由が近いが、十和田観光のメーンルートは国道103号線の子ノ口経由だろう。
しかしこの日は丁度、子ノ口と御鼻部山との途中で工事による通行止があり、選択肢になり得なかった。
黙って国道454号線滝ノ沢峠経由へすすむ。
結果的には、ここで少しでも遠回りしていたら、後で大変なことになっていたと思うわけだが…。
四方を険しい外輪山に囲まれた十和田湖畔に人が住んでいる事に初めは驚いたものだが、この小坂町大川岱などは、湖畔の集落の一つである。
大分明るくなっており、間もなく夜明けと思われる。
そう言えば霧も湖畔に近づいたら消えていた。
やはり、あれは雲だったのだろうという気がした。
穏やかな十和田の湖面。
海抜400m近い湖面の下には、300m以上の厚さで水が蓄えられている。
その幻想的な光景に、少しだけ気持ちが解される。
今日は間違いなく晴れの予報だというのに、空には厚い雲がかかっているように見える。
この有様では、八甲田などへは到底辿りつけれそうもない。
天候の回復を期待しつつ走り出すと、再び外輪山への登りが始まった。
上部は雲に隠され見えない外輪山に、発荷峠の時よりもさらに厳しい勾配で登り詰めていく。
この滝ノ沢峠は秋田と青森の県境を成す峠であり、と同時に国道102号線との合流点でもある。
上りきれば、いよいよ御鼻部山も近いのだ。
和井内から登り初めまでは約9km。
登り初めから峠までは3.5kmで、高低差300mを数える。
最近は輪行などを駆使してアプローチで楽をする事が多かったが、今度ばかりはスタート地点が海抜900mを超えているだけに、スタート前から本格的山チャリだ。
空が明るくなるにつれて、気持ちも明るくなり、テンションも上がり始めた。
やっと、いつもの旅の気分が戻ってきたか。
御鼻部山入口へ
2004.6.16 4:56
九十九折の峠を上っている最中、一瞬だが、あらゆる景色がモノクロになった。
この日が次に沈むとき、私は無事帰途についているだろうか。
峠を上りきって売店のある分岐点に着いた。
ここにはコンクリート製の展望台があり、十和田湖を一望できる。
十和田の数ある展望台の中では地味な存在だが、ここからの眺めは私のお気に入りだ。
時間は惜しいが、ちょっとチャリを置いて見に行ってみることにする。
湖は外輪山の稜線が成す雲の湖の底に沈み、まったく見えない。
雲海ならぬ、「雲湖」だ。
…あれ? 変?
それはさておき、湖畔から空が見通せなかった訳は分かった。
この景色によって祝福された私の激闘は、いよいよ開始まで1時間となった。
滝ノ沢峠から御鼻部山の入り口までは6.5kmの行程だが、ここもまた登りである。
特に、初めのうちは滴るような緑の森を坦々と進むが、十和田湖北岸にツンと突きだした御鼻部山が近づくと、九十九折りの急な登りがまたも私を苦しめた。
九十九折りの最中には、未だに1車線の部分も残っている。
流石に、徹夜で走り通しで、かつアップダウンがこれだけ激しいとしんどい。
これでもまだスタートラインにすら立っていないのだから…。
そもそも、入り口も出口も海抜900mって、そんな道ザラにはない。
少なくとも、東北地方では稀な存在だ。
登りの途中、遂に今回のターゲットが通う山中が見通せた。
地図によれば、奥に見える南八甲田の連山を地獄峠で超えて行くことになる。
私はこの景色を見た瞬間に思った。
…無理かも…。
24kmは伊達じゃないのだと。
この景色を見て、超リアルに危険を感じた。
一度は上がったテンションが、再び不安に押し下げられた。
ここ、もしや一人で来るような場所じゃ… なかったんじゃ?
不安がる私を山も気の毒に思ったのか、それっきり見通しの良い場所はなく、そのまましばし登ると、遂に運命の場所が現れた。
御鼻部山に繋がる国道の、最後の大ヘアピンカーブ。
その外側は砂利の駐車スペースとなっており、そこに二台の軽トラが停車している。
この場所こそ、目指す道路の御鼻部側起点である。
小坂を発って40km余り、5時間が経過しようとしていた。
そこに軽トラが停まっていることに、少しだけ励まされた。
こんな早朝からすでに入山している者がいるのだ。
もしかしたら、彼らも猿倉温泉を目指しているのかも知れない。
確かにこの場所が旧道の入り口であることを、小さな木標が示している。
「 旧道 」
この二文字に奮い立たされ、私は計画通り、入山を決意した。
時は、5時59分。
山行が史上最長の廃道、
最難
の廃道、いざ開帳!
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お読みいただきありがとうございます。
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