走破レポート  畑の沢林道 その3
2002.5.20


 畑の沢林道攻略においては、20Kmを越える山越えが、ヨッキれんを待ち受ける。
白山沢の源流域に深く深く踏み込んだ林道は、いままさに、はるか頭上の稜線に向けての登攀を、開始しようとしていた。
現在地点は、レポート開始位置(白山林道入り口)から、約10Km。
先は長い。
<地図を表示する>


立ち入り禁止区間を突破
2002.5.16 14:53
 立ち入り禁止の告知板を無視して、少し進むと早速、集材されたと思われる杉が道の左右に積まれていた。
作業車や架線ワイヤが道を遮っている光景を懸念したが、すぐ頭上で激しいチェーンソーの唸りは聞こえども、“オヤジ”には遭遇しなかった。
ホッとしながら、そそくさと現場を過ぎる。

 萩形の奥地では、道のど真ん中で作業していたところに遭遇、「通さないぞ」と言う親父と押し問答になって、強行的に突破したいやな思い出があるもので…。
林道って、林業の便宜のために作られた道だから、林業と関係ない私の権利は、実はすごく小さいわけで…、でも、「通りたい」気持ちは、どうしようもないわけでして…。
“チャリ馬鹿”としましては。

支線分岐点
14:53
 おっつ!

 分岐点発見!
これまで、畑の沢林道に、現役の支線は無いと思っていたが、今回、進入できそうな支線を発見。
方向的には、北側の俎山へのアタックとなるのか?
まさか、井川側に抜ける道とは思えないが、少しは初めてのルートも走りたいし、廃道覚悟で突入!!
標識などは無いので、これを勝手に、「割沢支線」と命名することに。
(なお、写真は少し分岐を過ぎてから振り返って撮影した。登ってゆく道が、この支線である。)
 いきなりの激しい登り。
取りついたのが、非常に勾配のきつい斜面である以上、これはやむを得ない展開だろう。
この日の気温は、23℃。
一気に汗がにじんでくる。
畑の沢林道は、長くて厳しい林道だが、これ程に厳しい勾配を見せる区間は無い。
アッツイ支線にもぐりこんだらしかった!
登りを抜けると…
15:00
 その厳しい登りも、一歩も引かない構えの俺の前に敢え無く戦意喪失。
300mで、高度50mぐらいの登りであったろうか。
一気に視界が開ける。
どうやら、先ほど渡った割沢の一つとなりの沢筋上部に取り付いたようで、正面には、俎山主峰斜面が覆いかぶさるように迫っていた。
まもなく行き止まりだとの予感がした。
崩落!
15:04
 ここまで、どういうわけか車一台分と思われる真新しい轍が残されていたが、それもここで消滅。
景色的にも、どうにももう前には進め無そうな、どん詰まり。
そして、写真の通りの、決壊。
もはや進む価値はなさそうだが…。

 チャリを持って、先に進んでみた。
 支線の終点
15:07
 いくらも行かない内に、今度こそ終点。
道はご覧のように広場で終点を迎えました。
いかにもな終点で、ホッと一息。
この支線、余り悪あがきしなくて、助かったな。

 現場は、写真右のように、沢のてっぺん。
この立ちはだかる斜面を越えれば、井川町の大又沢上部のはず。
かつての大伐採の難を逃れた天を突くような巨木が、じっと、迷い込んできた変わり者を見下ろしていた。
下り道
15:10
 引き返し、下り始めると、登りの時は余り気にならなかったのだが、ひどく道が水浸しなのがいやだった。

 脱線するが、最近いつも持ち歩いている『HandyGPS』について、お話したい。
このアイテムは、携帯サイズのGPSで、それ自体ただ、緯度経度を表示する機能くらいしか持たないが、PCと連携して、移動した経路を地図上に表示したりする機能を持つ。
測位(衛星と通信して、位置情報を取得すること)が途切れやすい欠点を持つが、その精度は十分実用的。
今回のように地図に無い道を走った際などに、後から経路を確認できるのが最大のメリットだ。
これにより大体の距離も分かるし。
(一応車載のサイクルコンピュータもあるのだが、こっちは現在記録用に使っておらず、その場でのデータ確認用に専ら使用している。)
 前置きが長くなったが、このHandyGPS。
困ったことに、露出していないと測位しない。(念のため言っておくが、リュックの中では駄目と言うこと。別に裸に…以下略)
さらに、身体に密着していても、測位しない(不良品?)。
仕方なく、手に持ってハンドルを握るわけだが、これが辛い。
特にダートの下り坂など、揺れが激しいところでは、GPSが激しくぶらつき、支える指先が痛い。
しかも時々、GPSから電池がこぼれ落ちるし…。
 かなり、イラつくのである…。
仮に、チャリに固定すると、チャリの振動をもろに受け、絶対無事ではないと思うし。
頭の上にでも固定したい今日この頃である。

 以上脱線終わり。
本線まで戻って、再び進む。
15:19
 再び、畑の沢林道本線に戻ってきた。
一路、峠を目指し再出発だ。
 これまでは白山沢に沿っての、峠までの距離稼ぎの道であったが、この辺りから本格的に、高度稼ぎが始まる。
と同時に、周囲の景観も、鬱蒼とした森のなかから、高度を増すにつれ、沢を見下ろし、近隣の尾根を眺めるものへと変化してゆく。
この急速な変化が、山岳道路の面白みだ。
見晴らし場
15:20
 そして…。
突如と言ってよいほど予想外に、私がこの道のハイライトと考える景色は、眼前にその姿を現す!


 写真の荒々しい切り通しをくぐり抜けるとそこに…。




 そこに広がるのは、の地点からは、決してうかがい知ることのできなかった、まさに秘境と言うべき広大な空間。
白山沢の険しいV 字峡の最奥部には、幾筋もの沢が一点に集中する、さながら、漏斗のような地形があった。
標高400m近いこの場所から眺めるそれは、まさに、緑に囲まれた巨大な空間である。
 そして、さらにこの景色が鮮烈なのは、この地からは、はるか先の峠で越えるべきその尾根までもが、一望できると言う点だ。
写真でもくっきりと写っている奥の斜面の削れた岩肌が、峠直下の法面に他ならない!
ここをズームで撮影したのが次の写真だ。

 峠はまだはるかに遠いようであるが、その手前に、すさまじい存在感をもった、超弩級サイズの黒い一枚岩が写る。
そして、その岩肌にえぐられたような横線…、
そう、そこが道路である!

 ここが、この道で私が最もアツイと感じる景色である!
長い長い沢底の道を経て、突如現れるこの景色のインパクト。
そしてこの先に越えてゆくべき、この「断崖」の存在。
それこそが…

 長くこの道を離れているうちに忘れていた、この道の良さ。
この道を、この上なく愛した理由であったのだ!


 最高にエキサイティングな気分のまま踊るような気持ちで、さらにペダルに力を込める、ヨッキれんであった。

その4へ

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