不通県道への突入 2005.4.27 10:02
3−1 峠への登り
大きな通行止めの看板から砂利道となり、峠に向けての登りが始まる。
通行止めであるが、なお県道の標識(”ヘクサ”と通称される)が設置されており、なんというか…
私たちオブローダーを喜ばせる為に設置されているのかと、勘違いしてしまいがちだ。
ともかく、ここまで再三にわたって「通行不能」と言われてきたのに、なお無視を決め込んで立ち入ると、どうなるのか?
これから皆様に、十分にご覧頂こうと思う。
一旦登りはじめた道は、急角度の連続で、おおよそ300mの高度差を詰めにかかる。
道の様子は林道そのもので、これと言った道路構造物はない。
周囲は笹藪を絨毯のように敷き詰めた雑木林で白樺もチラホラ見られる。
登りはじめとはいえ、既に海抜は600m超。既に高山の様相を呈している。
急角度のカーブと直線的な登りによって構成された、典型的な昔の山道。
こういう道は登り方も乱暴なことが多いが、景色の変化が早く、チャリにとっては、楽しく辛い道。
路肩が流水でかなり削られている。
意外にも路面の砂利は十分に踏み固められ、とても通行止めに向かっている道とは思えない。
これなら乗用車でも通行できそうだし、実は抜けているのかも知れないという気も…。
3−2 かごたて場
吉ヶ沢の通行止め地点から1kmほど、登り全体の三分の一ほどの地点が、勾配は最も厳しい。
海抜は、既に700mにも届いている。
スパンの大きなS字カーブがそのまま、容赦のない上り坂になっており、これぞ心臓破りの急坂だ。
また、この辺りから、辺りに残雪が目立つようになり、先行きに新たな不安を感じる。
その途中に、「かごたて場」と言う場所がある。
ここは、野田街道時代に休憩所として使われていた場所だそうで、町が設置した説明書きがあった。
現在では、ちょうど峠をわたる高圧鉄塔の見晴らしが良く、峠の稜線が間近に見える。
昔の人たちも、ここで籠を停め、或いは牛達の綱をゆるめ、草鞋のひもを結び直したのか。
かごたて場を過ぎると一度登りが緩むが、辺りの林相が松林になると最後の急勾配がある。
どうやら、道の両側の林は製紙会社などの社有地となっているらしく、そこかしこに立ち入り禁止の看板が立てられている。
3−3 尾根を行く
一瞬ヤラレタと思ったが、この雪だまりは分かれていく枝道の入り口に溜まっているもので、県道は無事だった。
焦った。
そして、この地点、登り口から2.5kmほどの場所から先の県道は稜線上に続いている。
分岐から見た限り、枝道は葛巻側(正確には峠の手前側も葛巻町内なのだが)に下っており、黒森峠の迂回路として機能している可能性もある。
稜線上をなだらかに登りながら、黒森山(標高942m)山頂方向へ進む。
単純に鞍部を乗り越えて峠を下るだけならば、敢えて山頂に近づく必要もないはずだが、モータリゼーション以前の古い峠道の場合は、今日の我々の常識が通用しないこともままある。
周辺は、カラマツの林となっており、見通しがよい。
やはり立ち入り禁止の看板がそこかしこに立てられているから、造林されたものなのかも知れない。
路傍には謎の門扉があったりする。
もはや崩れかかっており役目を果たしてはいない、また、その奥にもただ林が広がっているだけに見える。
稜線上に達している私は、いつ下りに転じるかと期待しつつ待ったが、なかなか下らないばかりか、逆に再び急な登りが現れた。
もうそろそろ、峠な筈なのだが、どこまで登っちゃうのか?
す、すごくね?!
あんな所まで行っちゃうの?!
と、一瞬期待したが、さすがにあれはただの造林道路だったみたいで、そこまでは登らなかった。
とはいえ現時点でも既に海抜850mオーバー。
北上高地の峠の中でも、かなりの高さである。
その割に、登った感はさほどでもないわけだが、麓の集落も結構高い位置にあったからな。
じっくり登って40分(車なら10分そこらかな?)といったところだ。
それにしても、いい景色だ。
風が気持ちよすぎるぜ!
黒森峠 2005.4.27 11:04
4−1 峠
これこれ、この感覚が、堪らないのよね!
自転車で峠を登っていて、一番嬉しい瞬間が、この 「空に臨む」 感覚。
峠に立つ直前の、ちょうど峠が間近に現れ、地平の切れこみの向こうに、新しい空を見たときの、この感覚!
うまく言えないけど、登ってきてヨカッタナーと、そう思える瞬間。
下るのが楽しいんじゃないんだよね、特に私の場合はね。
むしろ下りはスピードでるんで、疲れる。
登っていく過程は辛いけど、やっぱ詰める瞬間が、一番好き。
オアフッ!
意味分かんねー!
ナンデスカ、これは?
マジで、峠で終了?!
あんまりにも、潔すぎじゃないデスカ??
まッ、マジで終了かよ!
かつてこれほどまでにキリの良い、終わり方があっただろうか。
本当に、峠でスパッと道が無くなっている。
行き止まりがここまでの最高所で、黒森峠であることに疑いはない。
峠から葛巻側を望もうにも、まるで欄干のような車止めが二重に設置されており、そのうえ、本来は車道であるべき中央部分に、デンと構えた通行止めの道路標識。
こんなに存在感のある標識って…、背景に青空しか見えません。
まさしく、峠で車道はきっぱり終了。
潔い。
本当に、通行止めだったんだね…。
ぶっちゃけ、信じてなかったよ。
いやはや、凄い場所です。
なにがって、行く手はメチャメチャ切り立った山並みです。
崖というわけじゃないが、とても道が開通できそうな景色ではない。
実際に、峠の降り口である小屋畑集落までの直線距離は僅か2kmほどなのに、その標高差たるや驚きの500mもある。
これほどに、峠の東西で地形が対称的じゃないのも、珍しい。
比較的なだらかな西側(今来た道)は約14kmで500mを登り、一方東側は2kmで500mを下る。
まるで断頭台だな。
古ぼけた標柱が風に吹かれ立ち尽くしている。
そこには、「塩の道旧道入り口」とある。
入り口 ッたって…どこよ?
半ば冗談のような峠の行き止まりに立ち尽くし、今来た道を振り返る。
背中にビュンビュンと冷たい風がぶつかってくる。
もう一度振り返ったら、もう少しマシな道があったら嬉しいのだけど、ありえない。
これが現実だ。
どうしよう…。
チャリごと下っていって、途中で嵌ったら、生還できるだろうか?
経験上、2kmで500mを下るというのは、道がないか、あったとしても車道ではあり得ない。
まともなはずがない。
リスキーすぎる。
だいぶ下った辺りで道を見失ったりしたら、私はちゃんと戻る勇気を持てるだろうか?
蛮勇をふるい道無き道に踏み込んだら、おそらく大変なことになってしまいそう。
自分を分析すればするほど、この先に下っていくのには勇気が要る。
チャリが、絶対に重荷になる予感がするのだ。
4−2 これを下れと…
これを下れと?!
こんな笹藪にチャリごと突入していったなら、どうなるかなんて、それこそ火を見るよりも明らかなのでは?
おいおい。
俺だって、素人じゃないんだよ。
これは絶対に、嵌るって。
無茶言うなよ。
マジヤバイって、絶対に孤立するって。
…私の理性と、野性が、激しくぶつかり合う。
ただし、チャリを置いてちょっと見て来るという、おそらく一番無難な選択肢は、なぜかこのとき考えなかった。
行くならチャリで、行かぬならここで引く。
さあ、どっち?!
いまならまだ、戻れるよ…。
戻った方がいいと思うよ、ぜったい。
そんな理性の訴えが、徐々に耳の後の方に遠のいていくのを感じた。
なぜならば、全く道がないわけではないのだ。
笹藪に覆われ見えぬが、地形的には確かに、下っていく道はある。
おそらく車道であった歴史はないのだろうが、まさに「塩の道」「牛方の道」「野田街道」、かつて確実にここを往来した人々がいたわけで、牛方っつったら、荷台くらいは引いていたのかも知れないし…車輪付きのチャリンコだって、何とかなるやもしれぬし…。
そんなふうに、勝手に理由を付けて、チャリに跨り ソロリ ソロリ…。
ああっ、気がつくともう、わたしはこんなにも藪の中にッ!
もー
どーにでもなれー
ガサ ガサガサガサ……
以下、次回。
第三回へ
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