道路レポート  
雄勝峠(杉峠) 旧旧道 その5
2005.4.1


 チャリを取りに旧道へ戻った私は、今度はチャリを押しながら、旧旧道へと沢を渡って踏み込んだ。

 さて私は、
 峠まで、チャリを運ぶことが出来るだろうか?



 進撃開始 
2004.12.2 10:08


 午前10時9分。
スノーシェードの横穴へと戻った私を、チャリが独りぼっちで待っていた。

旧旧道へのアクセスは、ここからのみ行えるわけだが、一切利用されている気配がない。
それもその筈で、入り口がゲートで閉じられた旧道を峠まで登って来たその場所に、この旧旧道との分岐があるのだ。
旧旧道どころか、旧道ですら、余程の好き者しか立ち入ってはいないだろう。

チャリは、初っぱなから押しオンリーだった。
全く轍の無い、土の地面は、グリップが無く、私の体重を支えることは出来なかったから。



 <D><C>と、下りてきたのとは全く逆にチャリを押して登っていく。
僅か300mメートル程度しか進んでいない上に、それは道なりに大きく蛇行しているが為で、真っ直ぐ来れば、この<B>地点のヘアピンまでなど、ほんの100m程度の距離しかない。
だが、チャリ同伴では、急な沢斜面を登ることは困難であると判断し、道なりに来たのだった。

しかし、結果から言えば、どうせ押すならば、強引に藪を突っ切ってきた方が早いし楽だと思う。
特に、<D地点>の藪は蔦主体で、苛つかされたし、大きく時間を浪費した。

現在<B地点>まで、既に13分間を要していることからも、その苦戦がお分かりいただけよう。


 そして、既知部分の終わりである<A地点>をほんの30mほど過ぎると、予想以上に道形は不鮮明になった。
写真を見ての通り、いよいよ峠を目指す本格的な登りが始まっている。
周囲の斜面も逃げ場がないほどに急になって、そこから崩れてきた土砂が道を埋め、さらに長い年月を経て、そこにも木々や羊歯植物が生えている。
乗り越えて進むことが出来るが、先が、思いやられる展開になってきた。
もし、最初のリサーチのときにここまで来ていたら、「やっぱちゃりは無理だな」と判断した可能性も少なくないだろう。



 そこを越えても、覆い被さるように倒れてきた木々によって、再び道は閉ざされる。
その先には、おそらく次のヘアピンカーブののり面と思われるものが斜面に見えているが、そこまで行くことは、結局出来なかった。

いきなりの挫折。
その原因となったのは…。

 

 最大の難所 
2004.12.2 10:26


<E地点>
 写真から、果たしてその印象をお伝えできるかいささか不安なのだが、覆い被さる木々の向こう、次のヘアピンまでの区間は、もはや道無き斜面と化していた。
古そうな石垣があるのも注目だが、この石垣が旧旧道時代のモノなのか、それとも、その奥に見えるコンクリート製の流水路と同様、旧道のモノなのかは、分からない。
しかし、いずれにしても、この石垣の上に続いているべき旧旧道は全く失われている。
その上、木々の張り出しも凄まじく、歩いてでもなければ、通れないだろう。

仮にそこを突破したとしても…。



 …ヘアピンカーブまでの道は、まるっきり消失しているのだ。

コレにはマイッタ。

チャリ無しならば、もちろん斜面に張り付いて前進出来るのだが、こんな場所までチャリを引き上げてしまった為に、容易には引っ込みが付かないではないか。
もう、20分近く時間も掛けているし、またあの激藪を押して戻るのも、すごく憂鬱だ。

こんな事なら、もう少し先まで歩きでリサーチしてからチャリをつれてくれば良かったと後悔。
チャリでの踏破力を過信したか、旧旧道を侮っていた報いか。

正面突破は無理。

じゃあ、どうする?!



 振り返ると、今来た道がそこにはあり、そして、その道とのり面一つを挟んで、一つ上段の道がある。

この斜面さえ、おおよそ10m登ることが出来れば、目の前の惨状を回避して、先へと進めるのである。
むろん、徒歩であっても、そうした方が楽に進めよう。

この斜面、果たしてチャリに、超せるだろうか?

私の注目は、この一点に集まった。
そして、少しでも手がかりが多く、斜面の緩い場所を模索して彷徨った。

3分後、行動を開始するに至った。


 斜面は急な上に、柔らかい土が主体で、しかも厚く落ち葉が堆積しているという、最もグリップを欠いた状況。

単身登るだけでも、何度か滑り落ちる羽目になったのだが、大体のあたりを付けて、いよいよチャリの引き上げ作戦に入る。

作戦といっても、きわめて単純な作業であり、ただ単に、両足で斜面に踏ん張りながら、片腕は手がかりになる木々をつかみ、もう片腕で、チャリを引っ張り上げる。
登るにつれて斜度は増し、しかも、足元も何度も滑っているうちに、つるつるぴかぴかの泥のゲレンデと化してしまう。

10分後、なんとかチャリを引き上げたときには、私は泥にまみれており、全身脱力してしまった。
これは、堪えた。

 

 そしてこれが、なんとか辿り着いた上段の景色だ。
奥に見えるV字の切れ込みが、峠である。
以前掲載した<B地点>からの眺めと比べて、かなり高さ的に接近してきているのがお分かりだろう。
確実に、道半ばは来ていると思われた。
果たして、チャリごとの峠突破はなるのだろうか?!

文章にするとなんて事はないのだが、実際に現地での私は、かなりせっぱ詰まっていた。
この後、さらに困難な場面が現れた場合、いよいよ進退に窮する場面が予想されるからだ。
ここまで来たからには、もう引き返しは出来ないという脅迫めいた考えが、頭を支配する。

探険者としては、きわめて危険な思想だ。



 チャリをそこに置いたまま、少しだけ突破できなかった部分へと、上段から迫ってみた。

そこには、朽ち果てた落石・雪崩防止柵が、その遺骸をさらしていた。
この柵や、旧旧道を横断するように設置された流水溝は、いずれも旧道用に建設されたモノだろう。
旧道を守るために、旧旧道敷きが犠牲になるというケースは、決して珍しい事ではなく、近接する主寝坂旧旧道や、あとは同じ三島道の名残である宇津峠旧旧道なども、同様の末路を辿り、例外なく完全な廃道と化している。



 峠への険路 
2004.12.2 10:41



 いよいよ峠への道程は示された。

写真には、峠へと至る、最後の三重九十九折りが写っている。
写真ではやや分かりづらいが、肉眼ではよく確認することが出来た。

私は、堪らなく嬉しくなった。

三島が築いた道の全容が、いま一望のものとなった。
苦労して来た甲斐もあったというモノだ。

明治時代に切り開かれた旧旧道などという遺物が、限りなく元の自然を取り戻しつつある静かな峠に、確かにその痕跡を留めている。
その事実を目の当たりにして、興奮度は、一気に跳ね上がった。
現存するとは思っていなかった道形だけに、感激は、本当に大きかった。

※右の写真にカーソルを合わせると、写真から判別される旧旧道敷きがハイライトされます。



<F地点>
 間近に迫った三重九十九折りだが、その前にまだ難所が控えていた。

ここは、<B>の直上にあたる場所。
現国道脇からせり上がるように旧国道雄勝隧道脇へ、そしてさらに旧旧道と重なりながら、ほぼ一直線に峠へ繋がる冷水沢の、源流部大斜面だ。

沢の源流部にはありがちな、稜線から一気に掛け下るまるでまな板のような斜面である。
旧旧道は、この斜面の途中を横切っており、それが堆積させた膨大な土砂や倒木によって完全に埋め尽くされ、一様な斜面の一部と化していた。
道のあった痕跡はまるでなく、やせた枯れススキの斜面が、おおよそ20m続く。

迂回路は当然ない。




 そして、その斜面の下に大きく口を開けているのが、<B>へと直滑降の冷水沢である。
冷水沢は、県下随一の大河雄物川の複数ある源流の一つである。
秋田県内の国道13号線は、この県境から終点である秋田市付近まで雄物川に沿って下っていく道であると表現できる。
冷水沢は現雄勝トンネル傍で雄勝川と名を変え、さらに下流の横堀では役内川を拾って雄物川となる。
そして、その傍らには常に、羽州街道が転じた国道13号線が、常に多くの車に溢れている。
その原点が、今はうち捨てられた旧旧道の一点にあったのだと考えると、なんとも感慨深いものがあるではないか。

チャリがなければ、ここはそれほど危険はないが、チャリは大きな足かせとなった。
枯れススキの斜面は、チャリという重量物を支える強度に乏しく、かなりヒヤヒヤさせられたのである。

数分後、かろうじてここも突破。


 冷水沢源流を渡っていた構造物は、果たして橋であったのか、暗渠だったのか。

おそらくは、後者であろうと思われるが、土砂に埋もれた斜面の一角には、破壊されたコンクリートの固まりが多数、散乱していた。

旧旧道のこの地点には、なんらかの沢を渡るための道路構造物があったことは、間違いないだろう。
昭和30年までは現役国道として車両を通していたのだから。
 

 いつの間にやら、かなり下方に下がったこれまで登ってきた道。

旧道のSSなど、本当に遠くなって見えた。



 峠は、 もう遠くない。

 次 回 は 遂 に …。


※右の写真にカーソルを合わせると、写真から判別される旧旧道敷きがハイライトされます。






その6へ

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