道路レポート  
国道106号旧線 区界峠 その1
2003.9.9



 区 界 峠くざかいとうげ

これほど、旅情をかき立てる峠の名を、他に知らない。

この峠は、岩手県は盛岡市と宮古市を結ぶ一般国道106号線最大にして唯一の峠である。
北上川に沿って南北へ連なる長大な平野部と、太平洋岸のリアスを基調とする険しい海岸線、そしてその中間を埋める広大な北上山地。
県としてはもっとも広い岩手県の地勢は、意外に簡単に説明できる。
そして、内陸平野部と沿岸部の間には幾筋もの街道が拓かれてきた。
それらの多くは、険しい北上山地を越える峠道であり、区界峠もそのうちの一つである。

国道106号線は、全長約100km。
その長い行程の全てが、区界峠越えといっても差し支えない。
盛岡を発すると一路東進。
梁川に沿って、緩やかに、そして徐々に勾配を極めながら登ること30kmと少し。
そこが、県都と下閉伊郡川井村の行政界にして、北上水系と閉伊水系の分水界である、区界峠である。
海抜751mの峠をあとにすると、太平洋岸宮古市に至るまで、70km近くの下り道。
めちゃめちゃ楽そう、楽しそう。
そう考えていた私は、甘かったのであるが、とにかく、あとはひたすらに閉伊川沿いを下り続ける道程だ。

国道106号線唯一の峠、区界峠。
そこにも、やはり旧道があった。
断続的に出現する旧道を、数回に分けて紹介していこう。

   

岩手県盛岡市 川目
2003.7.17 9:02


 南北に肥大した盛岡の市街地だが、東西方向は山が迫り広がりは少ない。
国道4号線盛岡バイパス上の起点から国道106号線に入り、約9km。
梁川沿いを東へと進むにつれ、都会的な景観は農村のそれとすっかり入れ替わった。
片側1車線の至ってありきたりの国道は登り基調であるが、まだまだ峠に続いているという印象は薄い。

川目地区の東端である宇曽沢にて、思いがけない光景に出会う。

行く手の山上に見える巨大な橋。
あれは、一体なんだ!
手持ちの地図には描かれていない。
高速道路?!



 さらに進むと、国道に並走するように山上を橋でつなぐ道の姿が鮮明に見える。
頭上100mくらいはありそうだ。

このあとで分かったことなのだが、この道は、現在建設中の地域高規格道路「盛岡宮古道路」の一部となる予定の、国道106号線の新道だ。
このような高所に建設されているのは、現在の国道がもう少し先から、水没する為である。
やはり現在建設中の梁川ダムが完成すれば、現国道は水没してしまう。
その付け替え道路としても必要性があって、先行して建設しているのだ。

しかし、見上げるほどに凄い高さである。
高速道路では無いので、自転車や歩行者も通ることになるのだろうが、風の強い日など、大丈夫だろうか?
かなり怖いことになるのでは無いだろうか。
楽しみである。(笑)
ダム建設予定地
9:10

 集落を過ぎると、梁川はV字の狭い峡谷を伴って、蛇行を繰り返す。
ちょうど、将来ダムサイトが建設されるのも、この地点である。
工事車輌と思しきダンプが目立つ現国道も、いずれは(ちなみに2012年竣工予定だそうだ)、深いダムの底へと沈むのである。
そう思うと、何の変哲もない国道だが、感慨深いものがある。
多分、私がこの道を通うことは二度とはないのだろう。



 ダムサイト建設予定地より先も、しばらくは深い峡谷の底を橋やトンネルを交えながら進む。
ここにあるトンネルは2本、写真の落合トンネルと、境鼻トンネルである。



 こちらは、境鼻トンネル。
どちらも、1972年の竣工であり、現代的なコンクリートトンネルである。
ダムの建設さえなければ、まだまだ耐用年数には余裕があるのだろうが、もう数年で強制的に利用は停止される。

ダムサイトから近い部分は、ダムが廃止されるということが万が一にもない限りは、二度と水上に姿を見せないだろう。
このトンネルは、どのような姿で永遠の眠りにつくのだろう。
塞がれるのだろうか?
それとも、このまま?



梁川地区
9:30


 ダムの湖底に沈む定めを背負った梁川の集落が近い。
久しぶりに、建設中の付け替え道路が視界に入ってきた。
いずれここも水没するのだろう。



 梁川集落には、数軒の民家が残され、生活を続けている様子であった。
国道は、ここより本格的な峠の登りに取り掛かる。
江戸時代には閉伊街道と呼ばれた元々の道は、このまま梁川支流の栃沢にそって直線的に峠を目指したというが、車道は通わない。
国道は梁川をさらに遡上するが、沢底からは次第に離れ、尾根に向かって上りは険しさを増してゆく。
ちょうど、梁川の集落を見下ろすこの地点が、付け替え道路との合流地点となるらしい。
ダム湖の上端も、大体この辺りになるのだろう。




 盛岡と宮古を最短で結ぶ国道106号線は、梁川のバイパスが完成しなくとも、十分に改良を受けており、快適なドライブが可能である。
現道をたどる限りは、標高750mにも及ぶ峠の登りも、見渡す山並みと流れる雲が心地よいコースである。
通行量は少なくないが、道幅も十分あり言う事はない。


現在の標高は、約400m。
まもなく、旧道が現れる。
次回は、熱くなるぞ。



その2へ

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