国道289号 甲子道路の廃止区間 後編

公開日 2008. 6.26
探索日 2008. 5. 5


 地層が動くとトンネルはどうなるのか?

片見2号橋 跡


2008/5/5 5:42 【現在地】

なんということだろう。

3年前には間違いなくここに架かっていた橋が、すっかり無くなっている。

片見2号橋という橋が架かっていたのに、完全消滅。

対岸には石楠花トンネルが大きな口を開けているが、それが果たして貫通しているかどうかも不明。
なんといっても、あのトンネルこそ全ての元凶。
3年前には貫通していたが、生憎工事関係者の目があって通り抜けはしていないのだ。

もしかしたら、内部は埋められているのかも…。





だがこの谷…。

とても、容易に渡れるものではない。


 ……まずは一旦退こう。

裏側からアタックして、石楠花トンネルの貫通していないことがはっきりしたら、改めて再挑戦だ。

この谷は、大変だ。


それにしても、橋はなぜ無くなっているのだろう。
谷底に残骸があるわけでもないし、奇麗にどこかへ持ち去られている。
第二の人生をどこかで送っていたりするのだろうか… でも分解して再組み立てなんて、PC橋で出来るのか?



と書いたところ、読者様から情報を頂きました。
本橋は、別の場所で再利用するために撤去されたとのことです。
詳しくはnoganaさまの『残存世界ブログ』にレポートがございます。
一体どこに遷ったのかは不明です。

橋の消滅により、この片見トンネルは真に二度と自動車の来ない場所になった。

これからほんと、どうなるのか。

男の隠れ家にするにはいいかもしれないが…。



片見トンネルの洞床のコンクリートに、なぜか一つだけある足跡らしき凹み。
巨大な隧道猫のしわざか。
しかしポツンと一つだけあるのは腑に落ちない。
サイズだけなら熊くらいあるぞ。




たった70mたらずの片見トンネルにも、元は消火器が設置されていた。
しかしこれも今回は撤去されていた。
トンネル入口に設置されていたLED式のトンネル情報表示板も、当然、撤去されていた。




3年前と較べて変化を感じない、片見一号橋からきびたきトンネルの東口。
廃道というには余りに整った、若々しささえ感じられる路面を下りに任せて快走する。
この感触… たった7年間しか使われていないのだ。

しかし、この橋もやがては撤去するのだろうか。
運び出すための道はもう無いが、2号橋をわざわざ撤去したのだから、撤去が無いとは言えないとおもう。




撤去といえば、道路照明も消えていた。
支柱はそのままだが、照明部分だけが無い。

可能な限り、廃止区間にあった財物も活用されたことが分かる。
山形県(宇津峠)にも見せてあげたい光景だ。






きびたきトンネル内の土嚢と壁の狭い隙間。

ここをくぐって、トンネル内分岐に戻った。




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 きびたきトンネルの新洞区間


5:47

洞内分岐地点に戻った。
トンネル内に新たな坑門が作られ、そこから始まる新トンネルは左へ結構なカーブで曲がっている。
これが、銘板に「延長896.3m」と記載のある、きびたきトンネル新洞区間である。

レッツゴー。




新洞区間にはほとんど直線は無い。
分岐するとまずは左カーブ。
これが終わるとすぐに右カーブ、ついで左カーブというように蛇行している。

この新洞の目的は、またいつ崩壊するか分からない地中の地層を避けて、安定した岩盤を通すことにあった。
と同時に、経済性も重視せねばならず、出来るだけ少ない迂回で目的を達するべく、慎重にルートが決定されている。

それでも、全くの直線であった旧道に較べれば、走行性も風光も明らかに低下してしまった。
しかし雪崩の心配は無い道が出来た。




分岐から300mほど進むと、右カーブに切り替わる。
このカーブが新洞区間の最大部分を占める。
ちなみに、旧洞に較べるとカーブを多用したせいか、あるいは時代がそうさせたのか、幅員が6mから7mに拡大されている。
実際に広々とした印象を受ける。

天井には、おそらく旧洞から移設しただろう電光掲示板の姿も。




そして新洞も出口に近づき、最後の左カーブにさしかかる。
明らかな蛇行トンネルであり、その苦闘の歴史を知らないドライバーには不思議にとられるかもしれない。

なお、またも天井に電光掲示板。
おそらくこれは片見トンネルから持ってきたのだろう。
出入り口だけでなく、内部にまで設置している例は珍しい。
トンネルの数が減ったので、余ったのではないか。

ちなみに、この日のきびたきトンネル内の掲示板は、すべて消灯していた。




約1kmの新洞区間を突破。

ここから先は3年前にも通っている。
前回、真っ正面の縞石トンネル(これは安心坂トンネルと連接されている)から下ってきた私は、いま車が停まっている所の向かいにあるガードレールより左に下る工事用道路を通って、川沿いの旧国道へと誘導されたのだった。
当時はそのコースが臨時の国道になっていた。





石楠花トンネルへのリベンジ


5:52 【現在地】

奥にあるのは縞石トンネル、手前の橋は縞石橋。

橋の途中から手前に向かって、使われてない路盤が広がっている。

これこそが、かつての国道路盤であった。


すなわち、ここで振り返れば…

アノ印象的な風景の再来となる。







異様な光景。

今年、この国道が全通すれば、いままでとは比べものにならない多くのドライバーがここを通ることになる。

そのときには、この異様な光景も広く世に放たれることになる。
国道の名所だった「甲子登山道国道」は消滅するが、代わりにこれが迷所になるだろう。
「日本一露出度の高い廃トンネル」
廃トンネルのくせに、存在感ありすぎ!




すっかり石楠花トンネルの方は塞がれている事も覚悟していたが、バリケードが設置されているだけでちゃんと開口している。

後はこれがちゃんと貫通しているかだが…。
人目のないうちに入ってしまおう。




新トンネルの完成と同時に埋められても何ら不思議ではない、危険な“破損トンネル”であるはずの石楠花トンネルだが、バリケードはさほど厳重とも思われない。
銘板も扁額も残され、照明が取り外されているのは3年前も一緒だった。
消えたものといえば坑口にあった電光掲示板くらいだ。
坑門に描かれた石楠花のレリーフも、荘厳さをイメージさせる石積模様も、当然だが変化していない。
新トンネルのゆで卵のようにシンプルな坑門とは大違いだ。




石楠花トンネル

1994年3月竣工
 福 島 県
延長349.15m 巾6.0m
 高 4.70m

小数点二桁まで書かれた延長が珍しい。
平成6年にこの世に生まれ、翌年から供用開始。
しかし、それからわずか7年で廃止された。

バリケードの向こうに見えるのは、おそらくトンネルの変状を測定するセンサーだろう。
くれぐれも触れないようにしないと…。




入洞。

出口は見えないが、風が抜けている。

どうやら、貫通はしているようだ。


当然だが、静まり返っている。

反射して見えるのは、トンネルの変状を計るための光点だと思う。

今度こそ、このトンネルを破棄させた「地層崩壊」の痕跡を確かめたい。(それが果たして素人に解るかは別として)






少し進むと、早くも内壁に異変が。

白いチョークで線や円、数字などが描かれている。

それは手の届かない天井にまでほぼびっしりと、しかし何の法則性もなく、ある。

これが、トンネル変状の状況を測定したものなのか。
私の見たところでは、目に見えるような亀裂や破損はないのだが、それがまた不気味である。
プロの目には、これだけの “見えざるもの” が、このトンネルにはあるのだ。
もはやこのトンネルの強度など、砂上の楼閣同然かも知れないのだ。



来た…。

たしか前回はその途中で引き返した、鋼セントルによる巻き立て補強区間。


カーブの先には、ごく小さくさが出口の光が壁に反射している。
とりあえず最大の目的であった通り抜けについては、達成がほぼ約束されたようだ。

あとは、このトンネルの変状を見極めたい…。
確かにチョークのラインは不気味だが、古いトンネルでは時々見ることが無いとも言えない光景だ。
これは新しいトンネルであるから、既に異様は異様なのであるが、本当にそれだけなのか?

この巻き立て区間こそ、もっと深刻な問題が発生した場所に違いない。




ギャー!

セントル巻き立てが始まった途端、内壁のチョークは一挙に倍加!

プロが見ても何が何だか解らないのではないかと、そう思えるほどにグチャグチャだ。

そして遂に目に見える亀裂も、黒っぽい地下水の沁みだしたラインとして、はっきり現れている。

このトンネルの健康状態は、どうやら本当に悪そうだ…。
仮病じゃなかった。

そして、これがプロでも復旧不可能だと判断する「破損の程度」というものなのか。
(目に見えない部分もいろいろありそうだが…)




うわ…





うわ…




うぎゃー!


ヤバイやばい。

今すぐ隧道が崩れてきて生き埋めになるなんて、そんな確率は天文学的に小さいと思うけれど…。

でも、せめてヘルメットを被ってくるんだったな。

明らかにチョークの後から崩壊していると分かるのが、特に気持ち悪かった。
いかにも、 現在進行形で崩れてます ってカンジ。



さっきから何かが「バシャバシャ」いっていると思ったら、側壁からめちゃくちゃ出水してた!
美味しそうな、甲子天然水だけど… 出 過 ぎ。


…やっぱり、このトンネルはもうどうにもならない状況になってしまっている感じがした。

ふつう、こんなに側壁から水が噴き出してこないでしょ。
近代的トンネルであるならば、こういう事がないように予め地盤改良を行ってから掘っているはず。
こんなに水が噴き出していること自体、壁の向こうの地盤がなんか大変なことになっているっていう証拠なのでは?




整然と並んでいる壁面の光点だけど、ちゃんと機械で計ると多分、許されざる数値になっていたりするんだろうな…。

地層が動くと、その中にあるトンネルは壊れる。
近代技術の粋を結したトンネルも、一撃で葬られた。


それにしてもこのトンネル。
これからどうなるんだろう?

この空洞が残っていることで、将来の土砂崩れのリスクを増すことになるのだろうか。
しかし、埋め戻すのもまた容易では無さそうだ。
今後の経過を、ちょっと距離を置いて見守りたい物件だ。




ほんと、一直線。

だが、バリケードが邪魔をする。


とはいえ、もしこのバリケードが無かったらと思うと、それは恐ろしい。




もしバリケードがなかったら

トンネルを出た途端 「ああ、まぶしい」 とか

そんなことってる間に、


 ヘルダイブ ズモモモモ…

してしまいかねない。




 6:03 

これで、甲子道路の廃止区間の全線を走破したことになる。
(この橋も前回渡っているしね)

おめでとう。俺。




石楠花トンネルを戻り、縞石橋の上から最後にもう一枚。


この異様な光景を含む甲子道路の全線開通が、待ち遠しい。