道路レポート 千葉県道280号白井流山線“木”狭区 前編

公開日 2015.01.24
探索日 2015.01.05
所在地 千葉県白井市


【周辺図(マピオン)】

え〜、千葉県道280号白井流山線である。

地味目である。
山らしい山のない下総地方を東西に走る一般県道路線で、別に廃道というわけではない。
県道としての全長は約17kmで、起点の白井市から、柏市と松戸市を経由して流山市に至っている。
全体的にあまり繋がりの良くない、継ぎ接ぎ感がある路線構成だが、指定されたのは昭和30年と、そんなに最近の事ではない。というか、千葉県道のなかでは古参である。

このレポートでは、起点寄りの短い区間を紹介したい。
探索のきっかけは、右図の地理院地図である。
県道280号の起点付近は、関東有数の交通量を誇る国道である国道16号とまるで絡み合うような径路を取っているのだが、中でも白井市“木”(「木(き)」は大字名)地内に、幅広の国道と狭い県道とが極めて近接しているが重複はしてはいないという、奇妙な描かれ方の部分がある。

ここの実際の風景を、見に行ってみたのだ。

…ぶっちゃけ、良くてミニレポ級と想像していたが、 予想外に凄い風景が待っていた…!




木下街道から地味に始まる県道280号


2015/1/5 13:23 《現在地》

県道280号は、ここ白井市白井(しろい)で、「木下(きおろし)街道」という愛称と古称を持つ県道59号市川印西線から分岐する。
木下街道は印旛地方と江戸を結ぶ重要な街道だったらしく、白井には宿場も置かれていたという。
道の両側に家屋が連なる歩道の狭い2車線道路は、なるほどそんな歴史を感じさせる。

国道16号との交差点から、この県道59号を300mばかり北進したところが、県道280号の起点。現地へと近付くと、青看が設置されており、行き先はちゃんと県道280号の終点である「流山」を表示していた。
途中には、これから紹介する“とても怪しい区間”があるにもかかわらず、立派なことである。
分岐は青看が示すとおりの丁字路で、普通の場所だった。




歩道が無いか、あっても狭い2車線道路。
それが、起点から国道16号と1度目の接触をする1.1km地点までの、県道280号である。
車窓は、小さな起伏が連なる中に、畑や果樹園が民家と混在する、平穏な農村風景。
白井市の特産は梨らしく、梨園がやや目立つ。

とりあえず、ここまで道路的に特筆するような事は無い。
強いて言えば、地図上の地名が少し変わっている。起点の白井市白井、これはいい。だが、その次の地名は白井市根(ね)。そこを過ぎると今度は白井市木(き)である。
県道の通り道からは少し外れるが、白井市内のこのすぐ近くには、他に「中(なか)」と「復(ふく)」という漢字1文字の大字がある。

(これら4つの漢字一文字の大字名は、いずれも明治8〜22年頃の印旛郡の村名で、明治7年に複数の(漢字二文字以上の)村が合併して生まれたようだ。しかし、なぜこれら文字を選んだのか、互いに関連があるのかなどは、分からない。)



13:28 《現在地》

特に何事も無く、起点から1.1km地点にある、国道16号との最初の接触地点に着いた。

県道280号は、ここで国道16号と交差するわけではなく、重複(重用)するわけでもない。
地図での描かれたかを信じる限り、二つの道は少しの間並走してから、また離れていくのである。

そんな奇妙な区間の始まりを告げる交差点に着いた。



県道と国道の交差点の格式に恥じない、大きな青看が設置されていた。
だが、この青看の内容には、大いにツッコミどころがある。
ずばり、何の予備知識もなくこの交差点から県道280号へ行こうとするドライバーが、その目的を達成することは、ほぼ不可能だと思う。

これから見て頂くように、交差点の形状が極めて変則的であるのに対して、青看などの標識群は、その実態を正しく反映することが出来ていないのである。
だから、標識だけを頼りに県道280号へ行こうとすると、誤った道へ誘導される。

それでは、説明を始めよう。
まず、県道280号の白井側(私が来た道)からこの交差点に近付くと、ほぼ間違いなく信号待ちに引っ掛かる。これは国道16号の方が圧倒的に優先道路で、目測ではあるが、1:9くらいの割合で国道側が青信号であるからだ。
そして信号待ちの間に、これらの標識類を目にする事になる。写真でハイライトした3枚の標識類が、ドライバーに与えられた、進行方向を正しく選ぶための情報である。




ちなみに、県道280号の白井側で信号待ちをしている段階では、“県道280号の正しい進行方向”が見えない。
理由は、この交差点の形状にある。
交差点の全体の形状が見えない状態で、標識だけによって、行き先を判断しなければならないのである。

交差点の標識類から分かる事を整理する。

まず、「県道280号へ行くには、交差点直前の道を右折する必要がある」こと。
そして、「国道16号は左折禁止である」こと。
さらに、青看にその道は描かれていないが、進行方向の道路標識により、「交差点を直進出来る」ことが分かる。
(左折禁止なのに、青看の左折方向に「千葉」と行き先が書いてあるのは、ミスだろうか?)



上のような標識の情報だけで、左図の如し変態的な交差点を、正しく乗りこなせるはずがない。

この交差点(名前は特に付いていないようだ)、極めて変則的な八叉路になっている。
県道280号の白井側から来ると、7つの行き先(@〜F)があるわけだが、このうち左折(F)だけが禁止されている。

先ほどの青看の情報だけで県道280号へ進もうとすれば、普通は@かAを選ぶだろう。
おそらく、「国道16号の直前で右折」という表記内容から、@を選ぶドライバーが多く、@の入口を見逃したドライバーが疑心暗鬼でAを選ぶであろう。信号の停止線まで行くともう@を過ぎているから、案外Aも選ばれそうだ。
いずれ、正しい進路であるBを選べる期待は低い。そして迷うこと必至。
はっきりいって、事前知識か地図か、或いはカーナビが必須である。

なお、県道280号の起点の青看には、行き先にはっきり「流山」の表記があったが、この交差点で急にネグレクトの姿勢を見せるとは、酷いのである。

それはともかく、これから正しい県道の進路へ進んでみよう。
あなたは、付いてこられるか?(笑)



信号が青に変わったら、まずは国道16号へ右折する。

だが、そのまま交差点の外へ出るまで進んでしまえば、ダメだ。
それでは、国道16号を進む事になってしまう。

正しく県道280号をトレースするには……

あ! ちなみにだけど、県道280号の行き先である流山や柏へ行くだけならば、黙って国道16号を辿ってOKよ。
なぜなら、わずか1km足らず先で、再び県道280号は国道16号と交差しているからね。
そこで改めて県道280号に入れば、十分に十分に十分に事足りる。(笑)
だから、ここで私がレクチャーするのは、あくまでも県道280号を正確にトレースしたいという、ロードトレーサーに向けてである。(だから、青看にも県道の行き先は書いていないw)




はい、ここ注目!→→

テストに出るよ。



この“隙間”に、入って下さい。


大丈夫です。

国道16号の立派な対向車線との位置関係から、まるで国道の歩道に見えてしまいますが、これが県道280号なのです。
大丈夫です、歩道じゃなくて、ちゃんと車道です。
すぽんと行きましょう、スポンと!



おっ?!

もしや、こいつは!



いったー!
さすが地元感全開の軽トラ!
何の躊躇いもなく、行った!ww

なお、ここは一方通行なので、対向車の心配は無い。

でも、歩行者には注意だぜ!



あと、完全に余計なお世話だが、先ほどの青看の勝手な改訂版を用意してみた。

まさに、誰得である。 つうか、要らないな。一般ドライバーの邪魔だ(苦笑)。



いかがでしょ? こいつは、なかなかぶっ飛んだ奇抜な風景だと思う。

国道16号が片側2車線で、それでも足りないくらいの交通量があるだけに、余計にその隅っこにオマケのようにくっついた、一方通行1車線だけの県道280号が際立つ気がする。

自専道の側道じゃないんだからさぁ…。
多分、この二つの路面は管理者も違うはずだ。
国道の方は、直轄区間だから、国土交通省の管理。
県道の方は、千葉県が管理していると思われる。
ちゃんと別の道。
だけどこれは、予想以上の近付きッぷりだった。




なお、反対側からいま来た県道280号の入口を見ても、特に変わった風景では無い。
国道側には一切青看もないので、ここが県道だと意識する事もないと思う。
ジモピー以外は皆素通りだ。


といったところで、次回はこの国道と県道の超絶接近並走区間の変な風景を、じゃじゃ〜んと余すことなく紹介します。へばね。