羽越本線 温海温泉の未供用隧道 <その2>
使われなかった短絡線
山形県温海町 大岩川

 

 羽越本線あつみ温泉駅・小岩川駅間には、建設されたままのトンネルが2基、放置されている。

右の地図に示したとおり、いずれも長大なもので、これを利用する新線が供用を開始されれば、一挙に同区間の運行性は改善されるに違いない。
しかも、小岩川以南の複線化区間が、あつみ温泉まで延びるというオマケ付なのである。

しかし、前述のとおり、この新線は、途中の最大の構造物であるトンネルを掘ったままで放棄されてしまったように見える。

いったい、何が起きているのだろう。


私は、その内部を探るべく、高いゲートを突破して進入するつもりだったが、はじめにたどり着いた天魄山トンネルの北側坑口は街地で通行人の姿もあり、断念した。

海岸沿いの国道を経由し、二つの新設トンネルの合間のただ一カ所の明かり区間となるだろう大岩川集落へと、私は向かった。






 国道7号線を2km少し走ると、小国川の河口に面した大岩川集落が現れる。
ここでは国道は、小さな湾になった河口兼漁港部分を大きな橋で一跨ぎにしている。
このような湾のショートカットは、「おけさおばこライン」という愛称が付けられたこのあたりの国道7号線ではよく見られる景色なのである。
湾内の海岸に面した集落は、すぐ背後まで山が迫っており、新たに国道のバイパス用地を海上に求めた結果である。
線形の改良や集落内の安全というメリットは計り知れないが、一方で、昭和40年代という早い時期に施工された海上橋の多くは、その後未曾有の塩害を被ることとなり、数年おきの更新や改築といったコスト高をもたらしている。
実際この日も、途中の海上部分では、盛んに新橋の建築工事を行っており、片側交互通行による渋滞が生じていた。

鉄道は、隧道で山中を、
国道は、橋梁で海上を。




 大岩川集落には、羽越線の駅はなく、集落内を現在線はスルーしている。
新線の建設が計画されたのは、集落からほんの200mほど小国川を遡った地点であった。
一般県道348号線を辿っていけば、すぐにこの景色に遭遇するだろう。

県道の脇にぽっかりと口を開けた、巨大なトンネル。
そこへと通じる唯一のスロープは、バリケードで封じられているが、至って簡単な封鎖に過ぎない。
これならば、人目を気にせず接近できそうだ。




 県道にチャリを置き、足早に坑口へと向かう。

真っ正面から見る坑口はやはり大きく、複線断面であることは間違いない。
車道規格のトンネルとも構造的な見分けは付かないが、強いて言うなら、入ってすぐの場所に見える待避口が、車道には見られぬ特徴か。

坑口のバリケードは、温海温泉側のものと同じ作りで、その高さは3mにも及ぼう。
とてもジャンピングでは超えられないので、超古典的なよじ登りで攻略した。
特に立入禁止とは書いていないが、「封鎖されているんだから、立入禁止は自明」である。
皆様は真似しないように。




 と、その前に、よじ登りつつトンネルの延長線上に目を向けると、早速次のトンネルが見えているではないか。
あっちは、住吉山トンネルというのだが、まずは目の前のトンネルを先に攻略しよう。



 トンネル内は、外よりも冷たい風が吹いている。
とはいえ、この日は過ごしやすい日だった。
2月上旬でありながら、午後からは雨がぱらついた。
また、全国的に多雪だったこの冬であったが、一帯の海岸沿いはほとんど積雪もなく、私の住む秋田市とはえらい違いだと思った。

柵を突破した私は、愛用のライト「SF501」紛失(…。もう、3本亡くしました…)のため、代用のマグライト(実は、細田氏から奥羽本線合調の日に借りたままのやつです。 告白します。私は使いまくり、電池を使い切ってしまいました…。)
と、SF501以前に利用していたヘッドライトを、装備した。
また、冬季の山チャリでは、デジカメのバッテリーの低温による劣化が心配なので、ホッカイロを装備させたデジカメ袋という新装備を、投入していた。
結果、この作戦は功を奏した。




 そしてこれが、初めてお見せする、天魄山トンネル(仮称)の内部の様子だ。

見事に何にも無い!!

やはり、出口の明かりは見えないが、風通しがあり、貫通しているようだ。
壁は出来たての様に白いままで、地下水の湧出も多くはない。
全く静かな暗闇へ向け、一歩一歩進む。
自分の足音が、よく響く。




 はっきり言って、内部の様子は、皆様が想像するとおりである。

ずばりそのもの、面白みはない。

ただただ淡々と、コンクリートの函の中が続いている。
進むほどに坑口から届く光が弱くなり、足下も暗くなる。
たとえ2灯を点灯させても、広い内部は壁に光も届きづらく、暗くて、目が慣れるまで距離感が掴めず怖かった。







 規則的に現れる、大小交互の待避工。

その他は、ただただ、平坦な、コンクリの壁。床。

 つまらない。

生き物の姿一つ無い。

いたずらっ子の置きみやげも、悪ガキの悪戯の跡もない。

なーんにも、無い。
精々、乾いた落ち葉が落ちているくらいか。

 つまらない。



 このまま、何の変化もないままに、地図上で1700mもあるトンネルを歩かされるのかと、正直うんざりし始めていた。
しかし、思いがけぬ変化が訪れた。

いきなり、床のコンクリが潰え、乾いた泥が敷かれたままの、基礎部分が代わりに現れたのだ。

これがなにを意味するのか。

すなわち、本トンネルは、未完成である。
ということだ。
てっきり、坑口の様子から、完成した後で放置されているのかと思っていたが、実はそうではなくて、未完成のままだった。
トンネル建設の途中で、何らかの事情により、工事は止まってしまったのだろう。
工事停止は、予定されたものではなく、何か突発的なことだったのかも知れない。

いったい、この計画になにが起きたのだろう…?

さらに、分からなくなってしまった。




 目測だが、大岩川側坑口から300mほどの地点より先は、ご覧の通り、床の施工がされぬままになっている。
その他、壁などの様子は、それまでと変化がない。


足下の感触にこそ、少し変化を感じることが出来たが、相変わらず、景色は灰色一色。


また、すぐに飽きてしまった。





 長いなー。

全長1700mだもんなー。

長いなー。

歩きなら、通過するだけで20分以上掛かるんだろうな…。

しかも、私の場合は、いっても戻ってこなきゃ、ならんのだよな…。





 1kmくらい歩いたと思うが、緩いカーブを感じた。
そして、その先に、遂に(本当に「遂に!」っていう気持ちでした)出口が、見えましたとな。

私は、もうこれだけで満足して、引き返し始めた。

もう、いいわ。
このトンネル、面白くない。
残りの区間に何かあるかも知れ無いだなんてこと、考える気にもなれなかった。

いくらトンネルが好きだからって、長いと飽きるな。
しかも、これだけ何にも無いとな。
ぶっちゃけ、もういいわ、ここ。



 引き返しては見ても、なかなか入り口も近づいてはこず。

なんか、体も冷えてきた。


スマソ。
なんか、テンション下がってるね。
おかしいね。
みんな大好き、鉄道ネタのはずなのにね。

でも、このレポ読んだら、きっと入り口のバリケードを越える不届き者は減るだろうな。
めでたしですな。




 やっぱり、外が恋しいっす。

往復20分。
やっと、戻ってこれた。




 なんか、“人気投票”で一票も入らない、さっびしいレポになりそうな予感を、
ひしひしと感じながらも、一応次回もある予定。
もう一本、あるしね。


   …ダ ル 。


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2004.2.27