橋梁レポート 大畑森林鉄道 太兵衛沢支線1号橋(仮称) 前編

所在地 青森県むつ市
探索日 2012.05.21/2006.06.07
公開日 2012.06.02


よし、次だ。


近藤川支線の橋は落ちていたが、平成18年の探索ではこの近くで、大畑川に架かるもう1本の木橋を目撃していた。

続いてそちらの安否を確かめようと考えるのは、当然のことだった。

少なからず嫌な予感は感じていたが、事前情報は皆無であったから、最後まで望みは持っていた。



まずは、所在地情報とバックグラウンドから。

本橋は、大畑森林鉄道の太兵衛(たへい)沢支線が大畑川を渡る地点に架されている。
本線、支線、川、橋、それらの位置関係が近藤川支線の場合と酷似しているが、両者はわずか2kmしか離れていない。

本橋も正式な名称は不明なので、前例に倣って「太兵衛沢支線1号橋」と仮称することにする。

太兵衛沢支線(昭和26年開設、全長2234m、昭和39年廃止)には、弥一郎沢分線(28年設、長3200m、39年廃)と右衛門四郎沢分線(33年設、長2030m、39年廃)という2本の分線があったが、これら全ての廃止年が昭和39年で一致している。つまり、本橋が廃止(少なくとも林鉄橋ではなくなった)された年もこの年なのだろう。

それにしても、凄い路線名だな。「大畑森林鉄道太兵衛沢支線右衛門四郎沢分線(おおはたしんりんてつどうたへいざわしせんうえもんしろうさわぶんせん)」。多分、日本一長い林鉄路線名だろう。



本橋附近の地図は右の通りである。
赤いラインが林鉄だが、大部分は現役の車道と重なっている。
この車道のうち右から左に抜けている一連の道は、青森県有数のダート県道として知られる「青森県道284号薬研佐井線」である。

大畑林鉄の本線と県道は一致しておらず、林鉄本線は引き続き大畑川本流沿いを遡行する一方で、県道はここから太兵衛沢川沿いに下北半島の分水嶺を目指しはじめる。

それはさておき、車道の橋と林鉄の橋の位置関係も近藤川の場合とそっくりである。
したがって、林鉄橋目撃の特等席は、県道に架かる橋ということになる。


では、期待と不安を胸に秘めて…

今回(平成24年5月)の橋風景を、どうぞ。 ↓↓





!!!


すまない。

「ある」

というだけで、ちょっと驚いてしまった。

近藤川のそれより、随分とデカイ。


…あるのは分かっていたんだ。

問題は、

架かっているか…。




落ち…ていた。




ここから見える橋脚は、谷中より直に立ち上がる2本。

その形状は近藤川のそれとそっくりだが、橋脚の高さは桁違いにこちらが高い!


よく見ると、右岸側の斜面に木製桁の残骸が大量に散乱しているが、

この橋も平成18年6月の時点では、架かっていた。





この規模の木橋が、ほんの6年前まで架かっていたのである。

現存木橋としては、おそらく全国有数規模だった。


今回の結果は、残念だったが……。

仕方がないことだ。

とりあえず、ここに記録だけはある。

前回、細田氏と大変な興奮状態の中で撮影した、写真の数々が。






平成18年6月7日午後1時00分、橋の上にて。

「現存木橋を見つけると、こうなっちゃうんだ!」

と、言わんがばかりの勢いで細田氏が橋の上に駆け出した!(わけではないが、これは合成写真ではない)

彼のことは置いておいて、この橋(名前を失念)が林鉄橋発見の舞台。

右を見てみよう。(西から東へ歩行中)




うーわっ…。

↑ 分かるでしょ、この感じ。

「見つけちゃったよ。 …き、き き、」





「キター!」






高いっ!
    ヤバい!



さっきの渡っちゃったから、今度も渡るのかよ?

渡るのがデフォかよ?


やばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばいやいやいやいやいやいやいやいやでもみたいみたい見たい!




落ち着け落ち着け。

通常業務だ。

こう言うとき、マズすべきは、


橋のヘルスチェック!


そしてそのために成すべきは、袂への近接!


アプローチ&リーチ。

手近な右岸橋頭へ、森を最短距離で分け進むと、

それは現われた。



橋本体ではなく、遭遇へのトリガー、築堤の遺構!




―― さらに、数瞬の後 ――




遭遇せり。

橋頭への接近と同時に、当初見る事が出来なかった、もう1本の低い橋脚を発見した。

これで少なくとも4径間である。


そして、この位置より左へ数メートル移動すると、

私と橋は重なり合う。




ばけもの


前のより、うねってやがる…。





“最初の橋脚まで” は、誰が見てもセーフティだ。

その後のことは、そこに立ってから。




彼はいつも言わない。

や め ろ ―とは言わない。

いつだって、決めるのは個々。

そして彼は決断した。 「渡らない」。




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