その15
大排水橋
2003.3撮影
秋田県秋田市外旭川
私の住み、そして働く外旭川。
そこにも、奇妙なものがある。
とはいっても、まぁ、小ネタ
…じゃなくて、“ミニ・レポート”級なのだが。
外旭川にある中央卸売市場。
これから紹介する橋は、そのすぐ近くを通る市道に架かる。
ご覧の橋なのだが、まあ、何の変哲もない。なさ過ぎる橋だ。
そして一帯は、市街地を囲むようにして広がる広大な水田地帯。
しかし、かつて、ここはただの農村ではなかった。
二車線の道路に対し、かなり斜めに架かる橋で、その名を、「大排水橋」という。
変わった名といえば確かにそうだろう。無骨な印象を与える名である。
その橋の実態も、全く持って実直である。
対岸の親柱には「大排水」の文字。
これは、橋梁銘板のしきたりに従えば、河川名ということになろうが、なんとも、味気ない。
それ以上に、この短い橋の下にある流れの異常に驚く。
この赤褐色、本当にこれが農村の只中を流れる川だというのだろうか。
しかし、この色にこそ、この地がただの農村ではなかった、証なのだ。
どこまでも続く赤い川。
そう、これは「大排水」、すなわち、排水路なのだ。
農村にあるべき、用水路ではない。
この景色にも、この地の過去を知る手がかりがある。
赤茶け、傾いた電柱が乱立する。
これもまた、水田には不要なものであろう。
謎解きだ。
とはいっても、察しのいい方、あるいは、秋田に住まわれて永い方には、不要だろうが。
昭和30年代まで、この広大な水田には、見渡す限り採油櫓が立っていた。
それらは、昼となく夜となく、地中からエネルギーを吸い上げた。
かつて、日本一の産油量を誇った秋田油田、または八橋油田とは、この一帯を含む、それはそれは広大なもだった。
今でも、辺りには、片手で数えられるほど僅かになったが、無人で稼動する“リグ”と呼ばれる油井がある。
この赤い水の正体。
それは、この地が染み出させる、油分を多く含んだ地下水だ。
すぐ近くを流れる草生津側(くそうず)川は、永く県内水質ワースト1だ。
流れの遅い小河川であり、また市街を貫流しているせいもあろうが、そもそも源流部からしてこの色なのだ。
「大排水」とはいいつつも、生活廃水などではない。
そんな“川”に架かり、土地の移り変わりを見続けてきた、そんな橋が、私の家の近くにある。
河川名「大排水」は、結構珍しいものと思いますが、これと似たケースが山形にも在るそうです。
詳しくは、相互リンク先の『
山形の廃道
』サイトをご覧ください。
あちらは、「排水路」ですか。
2003.4.1作成
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