“孤立県道”南端部の先には、ごく細い道が伸びて行っている。
少しだけ入ってみると…。
2013/2/1 16:28 《現在地》
……。
一般的なドライバーだったら、余裕で引き返すレベルだろう。
後ほどワルクードで確かめたところ、両側の草がうざいくらいで轍はしっかりしており、
おおよそ300mでまともな整備状態の実谷林道に出る事が出来た。
車が多少汚れたり、小さな傷が側面に付く可能性を受容できるならば、日常使いもまあ可能な道だ。
と言ったところで、南側は調査終了。
今度はスタート地点の十字路から、北側へ向かってみよう。
16:31 《現在地》
十字路から北側区間へ入ろうとすると、まるで「部外者お断り!」とばかりに立ちはだかる“半バリ”。
ここにも千葉県の御名で、「この先通りぬけ出来ません」の看板が大小3枚もあった。
なぜか2枚はだらしなく寝そべったり、あっちを向いたりしていたけど…。
また、一緒に置かれている4本のゴムタイヤも、衝撃防止用のものに見せかけて、実は道路上へのカモフラージュされた不法投棄じゃないかと思えてくる。
すくなくとも、1本だけ混ざっている軽トラ用のミニタイヤは怪しいだろ(苦笑)。
で、笑いながら半バリの裏側を覗いてみると…
そこにはなぜか、ベンチがあった。
一応そこは、県道の走行車線真っ直中なんですけど…
……
……
…まあいいか。
北への道。
こちらもやっぱり白線は消えかけている。
そしてその先は真っ直ぐ、濃い緑の稜線へと吸い込まれているが、
乗り越える手段などは用意されていないことが、もう見えている。
終わりが見えているのだ…。
…公道なんだが、微妙にコメントに困るものが……。
ミッ●ーじゃないだけ、まだ良いのか?
いったい、誰に向けたどんなメッセージなんだよ。
続いて、ぬこも登場。
ぬこの存在を知っている超地元車しかほとんど出入りしない道なので、路上に敷かれたグリーンマットの上で絶賛くつろぎ中です。
道路法的に言えば、このマットは「占有物件」で、ぬこが「占有者」ですな。
いや、この場合はぬこも「占有物件」か?
でました。
人家のそばにある未成道にありがちな…
路上駐車。
ぬこだけじゃなく、車も路上でくつろいじゃってます。
終端部の両側にある民家は大抵新しそうだったが、やはり道路建設に伴って移転したのだろうと思える。
そしてその先で呆気なく道は……。
16:32 《現在地》
DEAD END.
(行き止まり)
終端の先のは地形的に橋なり築堤なり、何かを必要としているのは明らかだが、
その少し手間のかかりそうな工事は、全く着手された気配が無かった。
スタートの十字路からわずか270mの地点で、県道はある種の潔さを感じさせる作りで、終っていた。
未練たらしい工事途中の道路風景は無く、一応最後まで舗装された、歩道さえもある「完成された」終点だった。
古道にさえ繋がっていない辺りが、下敷のない新興の道路作りだったことを感じさせた。
わずか10分そこらで、貴重な県道の未成終端風景を2箇所もゲット出来たぜ…。
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今回紹介した千葉県道174号勝浦布施大原線の“孤立区間”約500mを空撮で見ると、その特異性が際立っている。
ものをあまり知らない小学生相手ならば、「これが飛行場だよ」でも通じてしまいそうだ。
狭い区間に挟まれた広い高規格な区間などというものは星の数ほどもあるが、この道が特異なのは、前後のうち一方は完全な行き止まりであり、他方も一般車は敬遠するようなダート道であること。そして何と言っても、「県道はここだけ」というインパクトである。
沿道には上布施集落の外れに位置する数件の民家および耕地と、そしてその数百倍の広大さを持ったゴルフ場だけがある。
それ以外は山林だ。
従って、この孤立県道の利用者というのは、これら数件の民家の用人と、その何百倍はいるだろうゴルフ客である。
さらにこれは偶然だろうが、孤立県道の入口になっている十字路を中心として、北へ行けば集落で、南へ行けばゴルフ場という風に、大まかな棲み分けがあるのも面白い。
また、明らかな未成道でありながら、建設された区間は一応全区間が開放されているのも珍しい。
それはあたかも、この異様な姿のままで地域の生活道路に溶け込もうとしているようであるが、その健気な夢は外見的な問題から容易には果されそうにはない。
中途半端な形で建設されてしまった道自体に罪はないのだが、一体なぜこのような事態になってしまったのか…。
幸いにして、私は短時間の探索のうちに、この問いに明瞭な答えを与えてくれる協力者に出会うことが出来た。
それがこの写真に写っている、孤立県道を専ら日課の(犬の)散歩に利用しているという男性だった。
こんな所に興味を持って訪れた私を物珍しそうに見ながら、ぶつける疑問にことごとく答えてくださったのだ。
(ちなみに今回ここで撮影した写真で、上の写真が一番気に入っている。最も象徴的な風景だと思う)
…地元男性、曰く!
この聞き取りは散歩中のワンちゃんが退屈で困り顔になるほど長時間に及んでおり、なかなか部外者が知り得ないようなリアルな話や、最後はかなり個人的なお話しにまで入り込んでいる(笑)。
上記の文章はご本人の表現を重視したもので、その正確性は検証していないが、全て「いかにも」と納得が出来るような内容だと思う。
ゴルフ場と県道整備がセットと聞けばきな臭い感じがするが、沿道の住民もそれを機会に脱農を考えるなど、悲壮感漂う被害者一方ではない辺りが現代的な印象を持った。 (コンビニかぁ (遠い目)。これが本当のモーソン(=妄想)か…)
ここで、上の話の中に出て来た「南総広域農道」と孤立県道の位置関係を確認しておこう。(→)
南総広域農道は、一つ前の回のミニレポでも登場した道であり、茂原市中心部から、いすみ市山田の県道174号交差点まで、約23kmの全線が既に開通している。
右の図を見れば分かるように、その経路は海岸沿いを通る国道128号を内陸でショートカットするようになっており、広域“農道”ではあるが、一般利用が非常に多いことは沿道に工業団地の建設が計画された事からも頷けるだろう。事実、朝夕は区間によって国道並のラッシュになっている。
もしこの広域農道が、狭隘な部分もある県道174号で終点を迎えず、御宿の国道128号にスムースに出る事が出来れば、それはとても有効な国道128号のバイパスとして機能するだろう。
国道128号の行楽シーズンの交通量を考えると、バイパスとして“効き過ぎ”て、完全に農道としての機能を麻痺させてしまうのではないかと心配になるほどだ。
そしてこの広域農道にとっては“パンドラの箱”ともなりかねない県道の計画を、両者の道路管理者である千葉県が進めていた。
地元の方の話によると、現在ある孤立県道が全通したのは平成5年だが、当時の県の説明は「平成9年に全通」する計画だった。
そしてその御宿側(南側)の接続点として名指しされたのが、「御宿台」という地名だった。
地図で地名を探したところ、御宿駅や国道128号がある町の中心部にそれはあった。
全域が「御宿西武グリーンタウン」というニュータウンになっていたが、その中央を通るメインストリートは域外の西側まで延伸され、実谷地区で別の町道と丁字路に結ばれていたのである。
…怪しい。
今回、御宿側の丁字路は調査していないが、孤立県道の南端と丁字路の間は、直線距離で1.5kmほどしか離れていない。
地形は山がちであるものの、県が説明した通りの工期で開通させることも物理的に不可能では無かったろう。
バブル崩壊や緊縮派知事への代替えが計画中断の理由だと地元の方は仰っていたが、御宿台の中央を国道並の通行量を持った道が通過するような事態も決して穏当なものではないように思う。(→参考)
個人的にはゴルフ場建設誘致のための勇み足などというのはいかにも話が出来すぎ(分かり易すぎ)で、それはあったにしても、それだけではないさらに深く複雑な事情もありそうな気がするが、どうだろう。
いずれ、この道が計画通りに開通する時が来れば、外房エリアの交通流にはそれなりに大きな変化が起きると思う。
もっと具体的に言えば、農道経由は茂原〜御宿間が国道経由より3km短縮されるので、地元車はかなり分散するだろう。
したがって、コンビニを建てればきっと儲かる。(←かつてコンビニ店長だったオブローダーの戯れ事である)
【完結】