その20 | 国道282号線 湯瀬旧道 | 2003.4撮影 秋田県鹿角市 湯瀬 |
鹿角市は、明治初めの廃藩置県当初、青森県の一部であった。
その後、鹿角郡として秋田県に編入したのが、この鹿角市と小坂町の一帯だ。
そんな経緯からも予想が付くとおり、あまりにも県都から離れている。
文化圏という分け方でも、そこは津軽地方の一部なのだ。
だから、鹿角市に行くだけでもなかなか大変な旅行である、なんせ電車でも乗り換え無しでは行けないばしょだ。
しかし、広大な鹿角市のなかでも、岩手県と接する湯瀬温泉は、特に遠い場所の一つだ。
今回初めて足を踏み入れたこの道にも、見るべき旧道があったので、報告したい。
これが湯瀬温泉だ。
秋田市からは概ね130kmの距離がある。
奥にみえる山の辺りはもう、岩手県安代町である。
米代川の両岸の狭い平地に林立するホテル群は、手前に橋梁が写る花輪線が昭和6年に全通したのを契機に建てられたものという。
一帯は、鹿角市の中心地からも10km以上離れているだけでなく、その途中には湯瀬渓谷と呼ばれる険難な峡谷が存在していることもあり、もうここにたどり着いた時には「こんなところもまだ秋田県なんだなー」と妙に感じ入ってしまった。
さて、この湯瀬地区を過ぎると、いよいよ県境が近い。
しかし、県境は意外にも何も無い。
いや、道路に標識とかはあるのだが、地形的な目印のような物は無く、緩やかに流れる米代川の川べりを進んでゆくうちに、岩手県に入る。
今回紹介する旧道は、この国道282号線の湯瀬から県境である石通に掛けての1.5kmほどだ。
ご覧の分岐点で、現道が右に分かれてゆく。
左の道は明らかに旧道っぽく、この先の状況は不明ながら、進入してみることにした。
するとまもなく、空に覆いかぶさるようにして真っ赤な高架橋が現れた。
これは東北自動車道で、湯瀬渓谷からここまで何度と無く頭上を横切ってきた。
東北道には、この居熊井橋を含め、湯瀬渓谷に五本の巨大橋梁が建設されており、それらは湯瀬五橋と呼ばれている。
いずれも個性的な橋であるので、橋ファンには必見の場所といえる。
話が脱線したが、旧道は米代川の右岸を、現道は左岸を走る。
そして、500mほど進むと道はご覧のような広場に出る。
元々未舗装だった訳は無いので、旧道化した後舗装が剥がされたのだろう。
しかし、この場所には簡易な車止めが設置されており、一応通行止めということになっている。
し か し 。
私にとっては、これほどそそる眺めはそう無い。
…一人、ほくそえんでしまった。
迫ってきた山肌と米代川に挟まれる。
この先は、かなり長いスノーシェードが続いているようだ。
まだまだ現役を退いて間もなくといった感じのスノーシェードは、廃道らしくはない。
しかし、決してうるさい対向車が来ることはないのだ。
悠々とこの景色を、道を、堪能できる喜びは、大きなものだった
雪解けシーズン真っ最中の米代川は、かなり上流とはいえ大変な水量。
轟々と音を立て、渦巻きながら流れてゆくさまは、壮観そのもの。
いくつかのスノーシェードが連続しており、雪崩や落石の多発地帯なのだろう。
現道は、蛇行する河川の中洲側となる対岸を緩やかなカーブで抜けており、そういう危険は少なそうだ。
〆て1km弱の長いスノーシェードを潜り抜けた。
こちら側にも車止めが設置されており、更に少し先で現道に合流しているのが見て取れた。
いまはまだ廃道らしさは余り無いが、近い将来必ず廃道化するであろうから、今後に期待出来る逸材といえる(?)
さて、これでこの旧道は終わりかと思ったのだが、一つ、この場所に気になる物が。
次の写真を見ていただきたい。
これであるが、ちょうどこの場所の山側にあった。
閉鎖されたコンクリートの短い階段の向こう、斜面にぽっかりと穴が見えていた。
トンネル…なのか?
フェンスを乗り越え、探索に向かった。
うおーーー!!
って言うと思ったでしょ?
でも、残念ながら、この先には進入できませんでした…。
背丈よりも低い小さなコンクリートの穴が確かに山中に続いておりましたが、入り口の門は固く施錠されており、カメラを使って覗くので精一杯でした。
隧道は、見たところ近代的なもので、通路となっている金属の部分の下には水流がありました。
水量はそう多くないようでしたが、一帯どこから流れてくるのでしょう?
この先には、何があるのでしょうか。
凄い気になります。
しかし、どうしようもありません…。
穴の前から現道と旧道の合流点を眺める。
奥に見えるクリーム色の橋は、花輪線のものだ。
これで旧道の探索は終わりだったのですが、帰宅後どうしてもあの穴が気になり、いろんな地図をあさってみました。
どうやら、米代川に沿って全長3kmほどの地下水路が設置されているようで、その地下水路へのアクセストンネルのようです。
あの奥には少なく見積もっても数100mの通路が続いているはずで…。
東北電力の関連施設らしいので、立ち入ることは未来永劫出来そうもありませんが、なかなかカッコイイ穴でした。
2003.4.27作成