杉林の底に、右左と蛇行を繰り返しながら、幅3m弱の軌道跡が続く。
厚く落ち葉が堆積し、路面の状況は確認できないが、ぬかるんでいる場所はほとんど無く、歩きやすい。
ただし、チャリに跨いで進めるかと問われれば、体力を温存する為の答えはノー。
乗車して進めることは進めるのだが、頻繁に笹藪が現れて、その都度押し歩かねばならず、乗ったり降りたりは負担が大きい。
まあ、10年前だったら、ムキになってチャリを馬鹿漕ぎしたことだろうが、20代後半になって体もついてこなくなってきた。
なんだ、タイトル「チャリの限界迫る」じゃなくて、「ヨッキの限界迫る」が正解じゃないのかと突っ込まれそうだが、いやいや、そもそも林鉄廃線跡は、チャリにとって余りにもイレギュラーな場所なのだ。
もともとチャリのために整地されたことのない地表を、無理矢理走っているのだから、当然だ。
一般に、車道跡とは比べものにならないほどに、林鉄跡はチャリにとって困難だ。
言い訳しているうちに、いよいよ中盤の最大の難所が現れた。
崖に面した林鉄跡が土砂崩れのため、切り株やらツタやら土砂やらに、完全に飲み込まれている。
そして、斜面と一体化してしまっている。
手かがりは多く、歩いて突破するだけならばどうにもなるが、チャリはちょっと… 難しい。
難しいが、冷静な判断で、チャリを担いで何とか突破。
体力は衰えても、判断力までは衰えてないぞ。
なお、この崩壊現場の下方に、今は使われていなさそうなため池が見えた。
見ての通り、かなりの高度差があり、万一滑り落ちると戻ってくることは難しいだろう。
徒歩ならば慎重に、チャリ同伴ならば、より慎重に!
この高度差、そして、この段落のタイトル。
皆さん、期待しているね。
定義を越える橋が、遂に現れてしまうのか?!
男鹿本山から流れ出す無数の小川を、軌道は山襞の凹んだ場所でその都度渡っている。
しかし、いずれも河床からとても近い場所まで軌道が迂回しているので、橋ではなく、暗渠になっている場所が多かった。
そんななか、一つの橋梁が、現存していた。
その、衝撃的な姿を、いま、お見せしよう。
深夜に閲覧している読者様は、家族の就寝の妨げにならないように、部屋の扉を閉め、たとえ暑くとも窓も閉めて欲しい。
会社でこっそり閲覧している読者様、くれぐれも口にはチャックで、見て欲しい。
絶叫注意。
↓
きたー。
再び深い笹藪に行く手を阻まれる。
一時期は林道が傍にあったのでいつでも逃げ出せたのだが、今はそれも見えなくなった。
とりあえず、黙々と進むより他はない。
ガサガサと笹藪掻き分け掻き分け、チャリを引きずり進む。
しかし、今度はなかなか状況が改善しない。
浅い掘り割りの中にもぎっしりと藪が詰まっており、その上、縦横にツタが蔓延る。
なんか、憎々しいほどに、私のチャリの侵入を邪魔してきやがる。
結構距離がある林鉄跡(記録上は7km)のため、チャリを利用できないと往復はかなりダルイと思って突っ込んでは来たが、こいつは帰りもチャリを通すと思うと、余計にダルイんじゃないか?
いい加減、チャリをどこに捨てていこうかと、真剣に考え始めていた。
と、
その、矢先。
あれ?!
しゃ、車道だ。
車道に出たぞ。
思いがけず、私は右手の笹藪から、この車道へと突き出た。
今来た道など、林道側からはまるっきり見えない。
確実に軌道跡をトレースしてきたはずなのに…?
はてな。