謎の人物T氏から山行が宛てに送られてきた情報は衝撃的であった。
森吉林鉄に数ある支線の中でも、最も深く、最も謎に包まれた路線、粒様支線。
今や徒歩以外では立ち入る術のない山中、マタギ衆が「神の谷」と畏れた絶壁の山渓。
そこに、まだ私たちが知らない隧道が存在するのだという。
T氏は、ライフワークの沢歩きの中で幾度と無く、この穴を目撃しているというのだ。
だが、粒様沢は、これまで沢歩きなどまともにしたことがない私には、とても気安く立ち入れる領域ではない。
しかも、その歩行距離は長く、日帰りは困難だという。
情報を頂戴してから半年近くを経過した9月某日。
その日のために準備を重ねてきた我々だった。
遂に森吉林鉄合同調査隊は、史上最強のメンバーをそろえて立ち上がった。
渾身の探索が、始まろうとしている。
最奥の隧道は、果たして存在するのか。
その日の夜、
我々はまだ一堂にあった。
そこで、今後のことを話し合った。
しかし、遙々千葉から来訪していた自衛官氏には、もはや予備日程などあり得なかった。
メンバーは一人失われた。
代替日程を何時にするか…、協議が続いた。
しかし、日帰りならいざ知らず、一泊という日程は、社会人には難しいものであった。
比較的自由にシフトを調整できる私は恵まれていると思う。
次回の日程として、結局、3日後の9月23日、そして24日が選ばれた。
曜日としては水・木であり、私の通常の休みの日に一致していた。
だが、この日程で可能なのは、私の他に、くじ氏と、HAMAMI氏だけであった。
パタ氏は連休も細田氏も、連休を取ることは出来ないとのことであった。
この決断に、全員が納得していたのだろうか?
或いは、仕切り直しをして、まあ季節的に恐らく今年はもう無理になるだろうが、来年以降に挑戦する手もあったに違いない。
だが、私一人ならば無理と諦めもつくが、くじ氏とHAMAMI氏が行けるというのなら…。
行けるところまで、行ってみようか。
3人だけが、3日後に再び挑むことを決定し、我々は解散した。
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