今回紹介するのは、数多くの道を紹介していた「山行が」でも初めてのジャンルである。
それは、高速道路の廃道である。
そんなものがあるのかと思われるだろうが、確かに高速道路で廃道になった路線はない。
昭和38年の名神高速道路栗東IC〜尼崎IC開通以来、日本の高速道路45年の歴史の中で、一度開通した高速道路は今日まで継続的に利用されてきた。(ただし一例のみ、北陸道において一般道路に格下げとなった区間が存在する)
今回採り上げる“高速道路の廃道”とは、線形改良によって生じた部分的廃道である。
一般道路においては線形改良による路線の更新は頻繁で、全国にそれこそ無数に存在しているわけだが、ことさら大がかりな工事と、それ故十分な事前調査を行って産み出される高速道路においては、そういったケースでさえ稀で、私がネット上で調べた限り全国でもわずか2例しかない。
そのうちの一例が、中央自動車道の上野原IC〜大月IC間に存在している。
これは、一日55000台もある同区間の利用者の目に留まっているので、その存在は知っていたという人もあるだろう。
しかし、高速から一瞬だけ見えた“その場所”へと、わざわざ探してまで行ってみたという人は少ないに違いない。
上は近年に撮影された当該部分の空中写真で、この中央を東西に横切る幅の広い道が中央自動車道である。
解れた糸のようにそれが2本に分かれ、再び1本に戻る形が見て取れよう。
ここは、2つのカーブが連続する線形を1つの大きなカーブに改めた部分で、これによって現道に平行する全長1.5kmの未使用部分、すなわち廃道が生じているのだ。
この線形改良では同時に車線数を4から6に増やしているために、2本の道の幅は明らかに違って見えている。
2008/1/3 10:37
高速道路の廃道が存在するのは中央自動車道の上野原IC〜大月IC(JCT)間21kmのうち、上野原ICから西へ2.2km付近より3.7km付近までの区間である。
ここを含む6.8kmが6車線化改良されたのは平成13年、さらに21km全線の改良が完成したのは同15年である。
(余談だが、中央道はこの区間の東西共に未だ4車線であり、いずれも全国有数の渋滞多発地帯となっている)
現地へのアクセスだが、国道20号を起点にするなら、上野原にて主要地方道30号へと入り、さらに高速沿いにその側道である町道を利用することになる。
その途中で出会うことになる、“超”巨大な鉄橋。
このあたりは国道といえども谷を這うような道なので、まさに高速道路の“威力”のようなものを見せつけらた気になるのである。
右の写真の谷底から、ヘアピンカーブと急坂でようやく、高速の側道という“地位”へ這い上がる。
これも一仕事。
一日平均55000台という数字はざらではなく、高速道路としては全国有数の交通量を誇っている。
東名高速と共にこの中央自動車道は日本の東西を結ぶ要路であり、太平洋ベルトを支える幹線である。
車ではなく、路面を動かした方がコストが浮くのではないかと、そんな馬鹿げたことを考えたくなる交通量だ。
これで平日の午前9時台だというのだから、“秋田道”を見て育った私には刺激が少し強い。
ましてこれから、たった5年前まで現役だったこの道のアスファルトをチャリで踏もうというのだから、畏れ多くてワクワクしてくる。
で、高速に沿って走ること1.5kmほどで、突然行く手に柵が現れた。
いかにも工事現場らしい可動式の柵であるが、今日の私に怖いものは、殆どない。
この探索の日付は… そう、1月3日、お正月!
これを明かすといろいろ来年から活動しにくくなる恐れもあるのだが…、はっきり言って、ガチ系オブローダーにとって正月三が日は一年で最高の活動日である。
これ以上は言わなくても分かるよね。
殆ど全ての工事現場がムニュムニュ…
まあ、結果的にはそこまでヤバイ物件ではありませんでしたけどね。
直進の道は塞がれている。
地図を見ると…
うむ、この先が点線で描かれているぞ。
出発前に空中写真で確認してきた廃道区間の東端にも、大体一致しているようだ。
いよいよ、柵の向こうは高速道路の廃道らしい。
それにしても、地図会社も「高速道路の廃道」などというイレギュラーをどう表していいか悩んだのだろうか。
二重点線は建設中の道の記号だと思ったが?(笑)
10:45
柵は完全に閉じているが、立ち入る人は少なからずいるようで、右側のガードレールを乗り越えるための段になるプラスチックの箱さえ用意されていた。
どうやら、わざわざ正月を選んで来るほど厳重警戒でもないようで、ホッとした。
慣れないを通り越して、初めての高速道路廃道だけに、ここに来るまで色々と不安は大きかったのだが、心おきなく楽しませて貰えそうだ。
チャリと一緒に ゲート☆イン!
おおーー。
あるー。
ホントに高速だー。
私は、思わず立ち尽くす。
目の前には、本当に高速道路としか思えない巨大な道が、横たわっていた。
本物の高速道路の跡なのだからそれ以外何に見えるはずもないのであるが、それでもこう実際に目にすると感動的である。
アスファルトと白線の帯が、河口近くの大河のようにゆったりとした孤を描いている。
これだけの道であるにも関わらず、実際にボトルネックとなり、新線を用意するほどの改良を要したというのか…。
いまだ対面通行という、名ばかりの“高速道路”を多く見てきた私にとって、それは新鮮な驚きであった。
ゲートの先は急な下り坂になっていて、直前は跨道橋上にあった道が、半ば強引な感じで高速の路面と等しい高さまで降ろされる。
そして、そこからは中央分離帯を挟んで合計4車線の路面となるが、そのうち、かつて上り線であった2車線は新たに舗装し直され、白線なども敷き直されて“新道”となっている。
しかも、当初の高速の路面を無視して、左右に分かれ道が存在している。
跡地利用が何かしら成されているようで、まだ廃止から5年足らずなのに手の早いことである。
また、100mほど遠方より下り線を塞ぐ高いフェンスが見えており、4車線の廃高速道路はうち2車線を現高速の側道として転用、残りを本当の意味での廃道としたようだ。
とりあえず、向こう側の柵さえ乗り越えなければ自由に歩き回っても大丈夫そうなので、辺りをうろついてみることに。
手始めとして、この“路面上十字路交差点”を、左折してみようか。
って、そっちは現在の高速道路のはず?!