直根林道は、秋田県由利郡鳥海町下直根と袖川とを結ぶ、総延長約5Kmの未舗装林道である。
そこには知る人ぞ知る、県内最長の林道隧道がある。
ついにその隧道に到達した私だが、その狭さと長さに圧倒され、進入をためらってしまった。
意を決して、今、入る!
<地図を表示する>
いざ進入!! と奮い立たせてみても、どうにも気が進まないよ。 どうしてだ?? 長いから? …違うよな。 狭いから? …それだけか? 第六感? …それは絶対無いし…。 なんか変なんだよなー。 わかった! 暗いんだよ。 だって、真っ暗じゃないか。 そりゃ不自然だよ。 何で、626mもあるのに、真っ暗なんだよ。 | |
最近は、廃隧道を多く攻略してきたためか、無灯であることに慣れていたはずですが、この長さで、しかも現役のくせに無灯は反則くさいですよ。 そんな私の不満を知ってか、よく見ると坑門左になにやら注意書きが…(写真右) なんだ、そういうことか!! しかし前代未聞だなー。セルフサービスの電灯。 でも、こんな僻地では、節電になるし、いいアイデアですよね。 「通り抜けたら消せ」というところが、さすが『東北電力』直筆の注意書きらしいですが…。 |
入って3mくらいの右側の壁に飾り気の無いスイッチ発見。 恐る恐る、スイッチに指をかけた…。 カチッ 隧道の天井に点々とぶら下げられた豆電球が、それこそ、目にもとまらぬ速さで…しかしその長さゆえ手前から順に点灯してゆくのがかろうじて認められた。 まもなく、隧道内に、ほのかな明るさが宿った。 …という展開を期待していたのですが、実際は、シーーーーーん。 やられた。 完璧にはめられた! くそぅッ!!! |
いくらスイッチを触ってみても何ともならないので、観念して、このまま進入。 幅2m位しかないため、入り口から10mも入ると、もうあたりは殆ど真っ暗…。 20mくらい入ると、もう、足元も見えない!! 写真を見てください。 出口が、小さいっ。 やべっ、足元見えないのって、怖い。 チャリ漕げねーーよぉ。 曲者なのが、狭いだけでなく、足元が悪い。 暗くてよくわからないのだが、入り口はコンクリートの路面だったはずが、明らかに、土。 っていうか、泥。 しかも、道の真ん中辺りを踏むと、ペコペコペコ…という音が響き渡った。 ドキッ! …どうやら、溝の上にコンクリの板が敷かれているらしい。 よく側溝の上を走ると聞くことになる、“アノ音”です。 じゃ、道の真ん中はコンクリだから安心してここを走ろう。 とは言えない事情が…。 だって、怖くないですか?? …もしかしたら、ふたが外れていたりしたら…。絶対激しく転倒するだろう。 怖過ぎる! ダメ。 もうだめ。神経切れる。 狂っちまう。 左右との壁との距離感覚が狂ってきて、よろよろとよたつく。 まだまだ修行不足の私は、ここで無灯走行を断念。 |
ライト点灯!
じつは、この写真は、デジカメのフラッシュを焚いて撮影したもの。 実際には、私の持参した懐中電灯の明かりは、非常に暗く、気休め程度にしかならなかった。 でも、何とか足元を照らすことで、進むことができた。 この隧道の、異様な圧迫感を感じていただきたい。 |
なにか、数mおきに、左右の壁に何か余分な空間があるような気がした。 そのうちの一箇所で、フラッシュを焚いて撮影。 実態は、奥行き50cm幅高さとも1mくらいの小さなくぼみで、鉄筋の枠組みはすっかり錆び切っている。 これが一体何なのか、しばし逡巡したが、帰ってきてからこの道の過去を知り、判明。 森林軌道用に掘られた隧道ゆえの、待避所、と思われる。 しかし、進んでも進んでも、なかなか出口はちかづいてこない。 時速10Kmでやっとという感じだもんな。 ここを、脇目も振らず突っ走れるやつがいたら、その勇気に拍手! |
懐中電灯は点灯させたまま、撮影。 しかし、暗い。 前も後ろも、おんなじ景色。 多分、ここで何回かぐるぐる回ったら、どっちから来たか分からなくなること必至だな。 | |
おんなじ場所でフラッシュ撮影。 なにやら周囲から異様な雰囲気がすると思ったら… 殆ど素掘りに、コンクリ吹き付けただけじゃないかよー。 ところどころ漏水も酷く、地面にはたくさんの水溜りができてます。 いい加減、気分が閉塞気味。 早く出たいよ。 |
真ん中を少し過ぎたと思われるあたりで、突如、30mくらいにわたり道が広い。 当然隧道の断面も太くなっている。 これはその部分の天井の写真。 何ともいえない怪しさが漂ってきてます。 なにこれ? 金属? 木? さすがに気持ちが悪いと思い、そそくさと通り過ぎましたよ。 |
まるで拷問のような暗闇の中を約10分。 出口間近で、今度は左側の壁にスイッチを発見。 一応触ってみたが、やはり電灯がつく気配なし。 どうなってんだ? | |
脱出してみると、こちら側の坑門には扁額があり、そこには紛れも無い「延長626米」の文字が。 やっと日光の元にかえってこれた。 楽しい探険気分を、少し超越してしまった感がある、本当の隧道でありましたな。 肝試しにはもってこいだと思うけど、ほんと、気の弱い方は入らないほうが無難。 夜だと、出入り口までの距離も掴めないだろうから、パニクっても知りませんよ。 …でも、興味あるな。 | |
ふー。 長かった…。 先へ進もう。 もう時間が無いぞ。 |
お読みいただきありがとうございます。 | |
当サイトは、皆様からの情報提供、資料提供をお待ちしております。 →情報・資料提供窓口 | |
このレポートの最終回ないし最新回の 【トップページに戻る】 |
|