苦い思い出の残る、国道108号線旧道松ノ木峠。
院内から取り掛かった私の前に、早速現れた通行止めの厳重なゲート。
ものともせずこれを攻略した眼前に、いま、通るものの無い道が、広がっている。
喜々として、攻略開始である!
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突入から1Kmほどで、早くも通行止めの原因として十分な崩落に遭遇。 路肩が滑り落ちてしまっている。 しかしこのくらいは、序の口だというくらいでなければ、この先は務まらないのだ。 | ||
路肩はだいぶ草がはびこり、 路傍の木々も成長著しいため、飲み込まれかけてはいるものの、まだまだ状態は良好なおにぎり! 地名は「雄勝町 十分ノ一」とある。 デリネーターも健在で、一昔まではどこもそうであった、一車線の山越え国道らしい景色。 |
入ってみたわけではないのだが、現道に降りることが出来ると思われる路線との分岐点。 写真は振り返って撮ったので、院内側から来ると、支線は左に分かれてゆく。 ここまでは、かなりアスファルトも傷んでおり、通行止めもさもありなんという感じであったが、ここからしばらくは、全然現役で通用しそうな良好な状況。 一車線ながら、林道よりも幅は広く、かつてのロードマップに『乗用車通行無理』などと書かれていた頃の様子は、想像しがたい。 |
この日の気温は最高で29度。 真夏日寸前であった。 院内の標高が約200mであるから、峠までは500m近い高度差がある。 さして角度的にキツイ登りは無い。 しかしとにかく長いのだ。 暑さと、長さと、そして景色の変化の無さ…。 疲れやすい諸条件はそろっている。 じっくりと腰をすえマイペースで進むことを肝に命じながらのアタックとなった。 しかし、熱い…だー。 |
少し景色に変化が現れた。 伐採地にさしかかると、これまで登ってきた院内方面の蒼蒼とした緑の樹海が見下ろせるようになる。 ここまでのこの道の印象は、「淡々」といった感じ。 背の高い樹木は少ないため、道路上に日陰はあまり無く、見晴らしはいいのだが、「山奥」という感じはあまり受けない。 旧国道的な、情緒や風情といったものもあまり感じられず、一般林道といった感じだ。 やはり、国道として満足に利用された期間が短かったことが原因かもしれない。 |
再びおにぎりに遭遇。 「雄勝町 松ノ木峠」とある。 が、峠ままだ遠いのだ。 これが自然林なのか判断に苦しいのだが、一帯は背が低い木が密集しており、杉や常緑樹の混交林だ。 まったく対向車や徒歩の人物にも遭遇しないのは、封鎖されている道としては当然なのかもしれないが、こうも道がしっかりしていると、不思議な気分。 新道の整備後はこのみちを封鎖しようという気は、初めは無かったのかもしれない。 やむをえない事情により、封鎖せざる得なくなったのではないかと、感じた。 もし、新道開通までの数年間のために、これだけ大規模な道路改良(だって、10年位前は『乗用車通行無理』と言われるような道だったのだから)を行ったとしたら、もったいないでしょ!!(ちょっと、怒りモード) |
さらに登ると、初めて大規模な雪崩防止柵設置地帯に遭遇。 法面のかなり上部まで続いており、こんな不通路線にもったいないなー。と、また思う。 現役時代だって、どうせ冬季閉鎖していたくせに(現道は通年通行可)。 そんなどうでもいいことを考えながら少し進むと、遥か崖下に白いものが光って見えた。 よく見ると、それは現道のアスファルトが日光に反射しているようだ。 直線距離でも300mくらいしか離れてなさそうだが、高度差は既に150m以上あろう。 しばらく見つめていたが、まったく通る者はないようだった。 …どこもそうだとは言わない。 現に、このすぐ近くといってよい「鬼首道路」は、その整備効果の高さが実際の経済効果としてかなり上がっているらしく、「エコロード」などと言う聞こえの良さと相まって、花形路線と言ってよかろう。 しかし、山間部の路線改良など、大部分はこんなものなのだ。 嘘ではない、私は知っている。 こういう景色を何度も見てきた。 たとえば岩手県沢内村で、人知れず長大な新道が完成間近であった。 「中山峠」というその道も、主要地方道としては、あまりにひどい状況で、実際年中不通の廃道であった。 私はその廃道から、この松ノ木のこの場所から見たのとおんなじ様なアングルで建設中の新道を見た。思った。 誰が、こんな山奥の、山奥と山奥を結ぶバイパスに必要性を、真に感じているのか?と。 しかし、厚い閉鎖ゲートの奥でこんな工事に巨費がつぎ込まれていることは、なかなか市井には見えてこない。 唯一つゲートの外にあるのは、…おきまりの、『笑顔の子供のイラスト付き綺麗なトンネルのイラスト』と『夢や未来』と言った“文字”だけだから…。 それが悪ではないのだろう。 私などは、こういう“やり方”のおかげで、楽しんでいる筆頭なのだから。 感謝するべきなのだろう。 「ありがとう、お役人さま。」 毒づいてみたところで、この暑さから来る苛立ちはどうしようもなく(笑)。 結局、まじめなこと考えてるわけではないのだった。 ただ、 …暑くて…。 |
いよいよ、峠までの道形も佳境。 レポートも、どうしても絵的に淡白になってしまって申し訳ないのだが、どうしても、衝撃的なものは見当たらない。 この写真の場所は、だいぶ路肩が傷んでおり、延々道の真ん中に亀裂が走っていた。 って、そのくらい、珍しくないよなー。 |
周りには、自分より高いものが急激に減っていた。 はじめはどこが峠なのかも判然としない入り組んだ山容しか見えなかったが、ここまで来ると、獲物は、十分射程圏内だ。 にしても、国道っぽくないよなー。ほんと。 使われてた期間が相当に短いんだろうな。 | |
十分ノ一沢の眺め。 既に新道はトンネルに入っており、眼下には見えない。 遠くには栗駒の山々が一望できる。 チャリで走るよりは、自動車やバイク向けなのかもしれないなー。 景色もいいんだけど、時々見えるって感じじゃなく、ずっと見てると飽きてくる。 って、贅沢かなぁ。 暑さで、調子狂ってる? |
なんか、着いた気配。 これは、峠っしょ。 | |
ほぼ3年ぶり、2度目の到達である。 標高680m。 雄勝郡雄勝町と由利郡鳥海町とが接する峠である。 雄物水系と子吉水系の分水嶺でもある。 秋田県内の地理的区分で言えば、内陸と沿岸の区界もここである。 旧道に分け入ったからは、約9Kmの登り。所要は一時間弱と言ったところ。 国道13号線から分岐したからは、約13Kmにも及ぶ、やや、単調な登りであった。 この峠には、特にめぼしいものはないように思える。 旧国道的な遺構といえば、せいぜい白い町名標識「雄勝郡雄勝町」くらいか。 近くにはおにぎりもあるが、この道では別に珍しくもないし。 | |
先を見ると、まず目に着くのが、またもゲート。 しかしこんなところで封鎖して何の意味があるのか? 管理者もそう思ったのか、今度は流石に鉄条網まではない。 さっさと突破して下りに入ることに。 | |
淡白に、淡々とここまで来てしまいました。 実際走ってて、楽しくなかったわけでもないですけどね。 でも、今回のこの松ノ木攻略、ここまではほんの“お遊び”だったんです。 この先、下界に至るまでの数キロで、ほんと、生きるか死ぬかの戦いが繰り広げられたわけで…。 誇張無しに、次回は凄い。 死んでいてもおかしくなかった。 ご期待下さい。 |
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