山形県尾花沢市の南の端に位置する御所山の山中に、すさまじい廃道があるという情報を得た。
あるサイトでその衝撃の惨状を目撃した私は、いても立ってもいられず、遂に遠征に至ったのだった。
当日はあいにくの雨。
天気予報に裏切られ、雨具も持たない私に、暗雲立ち込める未知の山は過酷な試練を与えた。
なんと、道を間違ったらしかった…。
私は、目的の景色を見つけることもできずに終わるのか?
まだ、終わるわけには行かないのだ。
<地図を表示する>
の場所まで生還した。 雨は小康状態になっていたが、既に下半身は泥水でびしょびしょ、上半身も汗だくになっていたので、もうどうでも良い。 やはり、この怪しい道に足を踏み入れなければならないのか…。 気は進まないが、ここを確認せずに戻るのは、後で後悔しそうな気がした。 覚悟して、侵入。 やはりひどい。 人が最近通ったような形跡はまったく無く、路傍の石垣だけが、そこが道であった痕跡のよう。 その上、切り落とされた杉の枝が路上に散乱し、とても漕いで進めない場所が多い。 こんな道が長く続くとなると、一日あっても足りないだろう。 うんざりだ…。 |
わずか200mくらいの直線を行くと、そこで広場になっていた。 その先には、鬱蒼とした杉の植林地が広がるばかりで、まったく道は無い。 いきどまりらしかった。 この写真は、来た方向を振り返って撮影したもの。 完全に草むらと化している様子がお分かりいただけるだろう。 多分、夏場などは、身の丈くらいまで繁茂するのだろう。 そして、この広場を、先に道はないかと探索している最中に気になるものを見つけた。 | |
幾つか連なった、直径50cmほどの石でできたくぼみ。 水がたまっている。 人為的なものであることは間違いない様な気がするが、何であるかは、見当がつかなかった。 いずれ、かつてこの場所に何らかの建物が建っていた可能性は高そうだが…。 一帯の林道の多くは、古くは森林軌道に由来するものらしいので、この前に見た古い石垣や、この遺構。 これらは、やはり森林軌道時代のものなのであろうか? いずれ、ここは行き止まりであった。 来た道を引き返すことにしよう。 |
仕方なく、来た道を戻る。 途中に幾つか分岐はあったが、それらしいものは無かった気がする。 このまま見つけられずに終わるのかもと、焦る。 そうしている内に、の分岐まで戻った。 ここから御所山林道と言う道が東方山中に延びていることが地図から読み取れたが、それは明らかに目指す道とは違うと思われた。 どうしようか…。 かなり困り果てて周囲を見渡すと、気になるものが目に付いた。 来る時も少しだけ気にはなっていたのだが、もうすっかり忘れていたのだ。 | |
というのは、御所山林道とはまた別の方角に伸びる、あぜ道のような小道と、その先を通せんぼする重機の姿だった。 明らかに行き止まりのような景色で、ノーチェックだったのだが…急に気になりだした。 行ってみた。 | |
こっ! これだ!!! その瞬間、目指す道を発見したことを、強く予感した。 確信に近かった。 私がこの道に来るきっかけとなったとあるWEBサイトでも、このガードレールのゲートの写真がアップされていたのだ。 このゲートの先は、目指すその道、…一目見た瞬間にほれ込んだ、その道。 その道はきっと私を待ち望んでいるはずだ…。 一瞬にしてゲートを乗り越え、疾風の速度で、その道に飛び込んだ!! |
踏み込むと、そこは変な道だった。 道幅は5mはありそうだ。 勾配もほとんど無い、直線的な道が杉の木立の中に伸びていた。 しかし、妙なのは、この道には轍が無かった。 轍は、自動車などの車輪が地面に刻むくぼみのことで、未舗装の道には、その通行量に応じて必ず刻まれる。 長い間の封鎖で、轍までもが風雪に洗われ消えたと言うのか…? とにかく、予想以上にその道は進みやすくかった。 車道としては廃れていたが、労せず進むことができた。 そして、予想していたより遥かに早く、その場所は目前に迫っていた…。 |
再び降り出した雨をものともせず突き進むと、突如、杉の森が終わり、景色が開けた。 一目見ただけで私を虜にした、その場所との逢瀬が、今、始まる。 | ||
何も言うまい。 でも言う。 すごい! すごすぎる! こんな道、初めてだ!! | ||
道は、半ば埋もれていた。 御所山特有の玄武岩質の非常にもろい地質。 その岩場が、谷底から遥か道の頭上まで、正味200mは露出していた。 中ほどに、この道。 このような立地では、この道の安全性を確保することは、まさに、不可能。 森林軌道用に開発された道というが、その廃止後しばらくは林道として自動車が通う道であったらしい。 この道を、重いトロッコ電車やトラックが通ったと言うのだから、あまりにも、恐ろしい。 チャリですら、ビビリが入ったのだから。 幅4mほどあったらしい道の、山側は既に埋もれていた。 谷側も、ところどころ崩れ落ち、一部ではまったく道に水平な場所がなくなっていた。 そして、そこを恐る恐る進行する私の前後で、砂礫やら小さな石ころが落ちてきた。 何度も。 現在進行形で崩落している場所の通行は、めったに経験できるものではないと思うが、この地では、年中それを体験できるらしかった。 もう御免だがな…。 | ||
この断崖を突破した直後の場所。 右の写真は、振り返って撮ったもの。 この、落石防止ネットなど、まったく何の役にも立つまい。 これほど危険なのに、谷側に一切のガードレールが無いのは、この道が落石で完全に埋もれてしまわないための処置なのだろうと思う。 それほどの落石地帯なのだ。 静かな霧雨にけむる森を見渡す。 この景色は…、ガキの頃に夢見た、あの世界に似てる。 そう、ファミコンRPGでお決まりのファンタジーの世界の景色。 もっとも、山の頂には魔王の城影などは見えなかったが…。 とにかく、見たいけど実際にはなかなか無いと思っていた景色が、そこにはあった。 その道を走ることができた。 これを幸せと言わず、なんと言おうか。 絶頂である。 が、まだ祭りは始まったばかりであった! |
じつは、私が目指してきたものはもう一つあった。 そのための試練が、先ほどの断崖であると理解していた。 そう、まだ引き返さない。 完全に轍が無くなった。 しかし、これ程にまで車道としての痕跡が失せたのに、なお、これだけの幅を維持しているのが不思議だ。 どうして、草木に覆われないのだろう?先ほどの、柳木沢林道のように。 とにかく、チャリで走る上では、まったく障害は無い。 倒木や落石は多いが、それでも、これまでの苦労に比べたら、屁でもない。 間もなく現れるであろう、最大目的地が、まちどおしい!! | |
これは一体何? 道の端っこに、一本だけ発見。 道路構造物の残骸とは思えない。 森林軌道時代の標識か何かと思うが、はてな。 |
崖の先にそれを見た。 その瞬間、全身のアドレナリンが沸騰するのを抑えられなかった。 私の視界は一点に集中した。 その先にうがたれた、小さな暗闇は、まさに穴だった。 道の先に、穴がある。 穴があったら、入らねばなるまい。 それが、 それが、漢ぞ。 山チャリストというものぞ! | |
意味が分からなくなった読者諸氏には申し訳ないが、今は暫し放って置いてほしい。 しかし、次回の更新時には、この穴の中を大公開! ただの穴ではなかった。 しかも、この穴で道は終わりではなかったのだ。 私の山チャリの原理原則をここでも適用します。 当然終点は、行き止まりです。 私の終点は、道の行き止まりしかありえないのです! |
お読みいただきありがとうございます。 | |
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