<天を突く巌>
脇川の集落を出るとすぐに、海岸線に巨大な石の塔が見えてきた。
海岸に直立するそれは、蓬莱山という。
脇川集落内に残っていた旧道。 海岸線すれすれを通る現道に対し、こちらは集落の中を必要以上にうねうねと蛇行しつつ伸びている。 狭いところでは、その幅は2mほどしかなく、とても国道としては用を成さなかっただろう。 写真は、最も狭い部分の直前である。 |
集落を出ると、再びどこからともなく羽越線が現れ、寄り添ってきた。 眼前には、これまでよりひときわ巨大な岩山が、真っ黒な影となって、迫ってきた。 半島状に海岸線に突き出した岩山と本土とを繋ぐ鞍部を、国道と鉄道が仲良くトンネルで貫いている。 なんとも興奮する眺めが次々と現れ、もう、私はすっかりご満悦であった。 |
接近してみると、二つの隧道が連なっているのが見て取れた。 まずは、蓬莱第一隧道。 珍しい角型の断面を持つ。 ちなみに、昭和16年に竣工したという“元祖”蓬莱第一隧道だが、その延長は6.5mとのことで、事実ならば驚きの短さだ。 たしかに、現隧道を見ても、殆どロックシェードのように見えるので(というか、多分これはロックシェードだろう)、信じられぬ長さではないが。 |
続く蓬莱第二隧道をくぐり振り返ってみて気が付いたが、蓬莱山とは大変良く似た双子の岩山なのだった。 第一隧道でくぐったものと、第二隧道でくぐったものは、別の岩山だったのだから。 ちなみに、大変縁起の良いものを想像してしまう「蓬莱山」だが、それもそのはず、古代中国で不老不死の仙人が住まう伝説の地を「蓬莱」といったそうだ。 なんとも、ご利益のありそうな地名である。 トンネル名としては最上級かもしれない。 すくなくとも、ここで事故死する人は、いないだろうと、信じたい。 この、天を突くような巌を越えると、ますます笹川流れの道行きは楽しくなってくるのだった。 |
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