都道194号 成木河辺線 中編

公開日 2007.3.27
探索日 2007.3.14

 一般都道194号成木河辺線は全長7km足らずの道だが、その中ほどには約2.2kmの自動車交通不能区間がある。
どうやら道として未開通な訳ではなく、大縮尺の地図であれば県道の色が塗られているかどうかは別としても、ちゃんと道は描かれている。
ただ問題なのは、その一部がゴルフ場のコースを横切る形で存在することのようだ。
県道指定とゴルフ場のどちらが先だったかと問われれば、ゴルフ場の開設年は判明している。
昭和33年である。 …かなり古い。これは都道とも良い勝負かも知れない…(現在調査中)。

 ともかく、ゴルフコース内の都道は果たしてどうなっているのか。
ゴルファーの視線と戦いながらという、未曾有のレポートが始まる。


立ち入り禁止   …じゃないよね?

西コースと中コースに挟まれて


12:06

 前回最終地点より100mほど戻る。
私が知らず道(都道)をロストしていたのは、この写真の場所だった。
そこには分岐らしい物はないが、ゴルフコース内の道と麓から登ってきた道とが同じ平面上に並ぶ唯一の地点である。
この両者を隔てている物は、明らかに枯れた芝生シートだけである。(写真右にある物)

 「これは、明らかに都道を隠す行為である!」

 勘違いかも知れないのにそう激昂してみる。
そうでもしないと、ちょっとこの先へ進む気持ちにはなれない。
なにか、使命感のような物が必要である。
何せ、私が芝生のシートを乗り越えて“こちら側”へ来る直前に、一台の軽トラがこの道をコースの方へ走り去っていくのが見えたのだが、その軽トラにはナンバープレートが着いていなかった…   

 これってやっぱり… モロ私有地?!



 だが、私は今回露骨なまでに図太くなろうと誓った。
暗黙の了解なんてくそ食らえだ。
明示的に立ち入り禁止が示されない限り、私は何食わぬ顔でこのゴルフコースへ侵入し、他の物には一切目をくれず都道を通り抜けてやる!
私はあくまでも、妄信的に道路地図を信じてしまった、ある一人の善良なる市民である。

 そして、今まさに私の侵入とタッチの差で無ナンバーの軽トラが駆け抜けていった道を、私も進む。
この先は間もなく前回最後の写真に写っていた道となる。
いよいよ、ゴルファー達の目の前に私は躍り出る(少し大袈裟)事になるのだ!

 果たして、その運命やいかに!!
正直、日原以上に緊張した私がいた(笑)




 来たーー!

早速キター!
ビクつく私を、ご主人様お帰りなさいませとばかりに出迎えてくれた警告!
以下、全文。

 これより私道につき
部外者(ハイカーを含む)の通行
じます。
万一、進入し事故があった場合
当、倶楽部は、一切関係ありません。
            青梅ゴルフ倶楽部

 いちいち私が反応する単語が赤くハイライトされている。
それに、いくら何でも「関係ありません」とは冷たいじゃないかー。

 ところで、 これは今回のリタイア条件である「明示的な立ち入り禁止」であろうか?


 うむ。




 確かにこれは立ち入り禁止だろうな。








 じゃ… 






 進行!

 だってこれ、右の道に向けられてるじゃん。

 都道は真っ直ぐの道だし。



 そんなイキがった振りしてレポしてる私だが、現実には心臓ばくばくもん。
右手に広がる芝の美しいコースには、大分遠くの方ではあるがプレーに興じる一行が見えた。
当然むこうの誰かしらは私の存在に気づいたはずだ。
まあ、だからといって誰も気にしないとは思うが、こういうときにチャリというのはちょっと不自然で困っちゃう。

 ともかく、私は全速力に近い速度でカメラの電源を入れたまま、走り撮りで進んでいく。



 コース脇の砂利道に入って約200m。
T字路に突き当たった。
これは、進入前に中でもたつかないようにと暗記しておいた地図の通りだ。(現在地はここ

 このT字路から先の道は右も左も舗装されている。
都道は右だが、とりあえず舗装復活だ!

 それはいいのだが。 右も左も……




右も左も

ダメでんわ?









いやいやいやいや


違うでしょ これは。


これは、よく見ると右も左も、コース内へ入るなと言う表示でしょ。
そういう向きで建っているもの、看板。




 … 進 行 。




 ここから先、約200m区間がこの都道で最も気を遣う部分である。
ゴルフ場内を横切る部分であり、コースとコースの隙間を走る事になる。

 写真はT字路を右折してすぐに右手の「西7番ホール」である。
倶楽部サイトの解説によれば、このホールはPAR5 483ヤードで「右クロスハンガーの左狙い」がポイントとのことだ。

 まあワタクシ、マリオオープンゴルフでしたら出戸浜で十指に入る飛ばし屋でしたけれど、生ゴルフはちょっと…。



 最も恐れていたエリアだったが、これは僥倖。

ちょうどそこは小さな峠となっており、浅い掘り割りとなっていた。故にコースから私の姿を見ることは出来ないだろう。
ここで初めてチャリを停めた。

 あ、長居しているとまた無ナンバー車が現れるかも知れない。

慌てて出発した。



 ここが霞丘陵越えの峠である。
都道194号で最も辿り着き難い、ゴルフ場内の峠。
名前は知らない。
ゴルフ場の関係車輌やカートも通るのか、砂利道ではあるが路面は整っている。
残念ながら、電柱などにも都道を示すものは見つけられなかった。

 この先は、下りとなる。




逃げるように都道を駆け下る


 12:09

 峠を過ぎると今度は左手の視界が開ける。
見通しが良すぎるのでじっくり立ち止まって観察できないのが残念だが、ここからの眺めはすばらしい。
作られたゴルフコースの景観は決して美しいと思えないが、その背景に絨毯のように続く霞丘陵から秩父山地への繋がりはすばらしい。
遙か遠くに見えるのは秩父の武甲山だろうか。

 眺望を味わいつつも、下りとなった私のペースは時速30kmを越え、このままさらっと逃げ去るつもりであった。



 だが!


 やば!

再び何本かの道を束ね舗装が戻った都道(←しつこいくらい都道にこだわるよ)だが、そのまま一直線に管理棟の真っ正面へ!!

 これはイヤー!!

だが、道はこれが正しい。
これが都道なのだ!
逝くしかない!! 逝くしかない!!!




 速度を速め、

明らかに有人の管理棟前を


             突 破!



 キタッ!

後はこの2本の道の中で正しい1本を選びさえすれば、生還!
吊されず帰れる!

 センターラインさえある舗装路の左。

 砂利道で下っていく正面。


正解は、もちろん右!



 ここでようやく張りつめていた気持ちが少し緩む。(現在地はここ
後はもう下っていくだけで脱出できそうだ。
こっちはゴルフ場の裏口だから、まさか守衛がいたりなんてしないだろう。

振り返って管理棟をちょっとだけ撮影。
あくまでも私は根がビビリーですからね。
チキン大好き!




 急で狭い砂利道を30mくらい下ると、すぐに別の舗装路へ突き当たった。
しかし、もう私は脇目を振れない。
地図はそこがどんな道であろうとも、このまま直進するが都道であるといっている。

 たとえこの交差点の都道側には奇妙な段差があって、普通の車が通れないような状況であったとしても、敢えてそれを確信犯だなんて言わない。



 突如轍が消えた都道。
この下りでゴルフ場とはおさらばだ。
私は耐えた! 衆人環視と非常識のプレッシャーに!
自分を褒めてあげたいとは、なぜか思えないが… ともかく俺の勝ちだ。
道路との語らいを、勝ち負けでしか評価できなかった10年前の可愛い自分が、ちょっと帰ってきた。尖った廃道オタが帰ってきた!

 背徳のゴルフ場横断都道を駆け下る。イクナイ充実感とともに。

 背後に(きっと空耳だと思うけど)誰かの呼ぶ声を感じながら…。

 一目散に…。







 こうして最大の難所を突破した。
 なんだかんだ言っても、これは合法だよね。一度も警告に反さないルート取りだったよね?


 山は越えたといえ、不通区間は残り半分。

  次回、最終回。  余り期待せずに待て!