突然ですが、クイズです。
←
これは
なんでしょうか?
1.ビル
2.冷凍庫の中のアレ
3.法面
正解は、「3.法面」でした。
すごいでしょ?
こんな場所、見たこと有る?
ここは、「森吉山ダム」の原石山である。
原石山というのは、ダムを作るために大量に必要となる岩石を採取するための場所で、だいたいは現場の近くに設けられる。
この森吉山ダムの場合も堤体から5kmほど上流の川べりにあり、将来はダム湖に面する場所である。
特に、国内最大級のロックフィル形式ダムである同ダムの原石使用量は、生半可ではなかった。
それですっかり山ごとイッってしまった訳である。
10年前にはこの写真いっぱいにあった山がまるまる無くなってしまった姿は、本当に恐ろしい。
まさに、平成の逆さピラミッドである。
平成22年の完成予定にむけ、工事の最終段階に入りつつある森吉山ダムだが、この湛水予定地ぎりぎりの位置で辛うじて水没を免れた一本の廃隧道がある。
それは、当サイトでも人気のレポートの一つである「森吉森林鉄道」の遺構である。
実は、私が森吉森林鉄道の最初の探索(第一次探索)を行った平成○年当時には既にダム工事が進んでおり、工事のため近づくことが出来ない区間というのが相当にあった。
右図中の赤い線は森吉林鉄跡だが、このうちの破線の部分へは、ダム工事のためこれまで部外者が近づくことが出来なかった。
それが最近工事が一段落して、上流部の湛水エリアに下る各種工事用道路入口の警備員がいなくなった。
今ならば、有るとは分かっていても探せずにいた隧道。
「鷲ノ瀬隧道」を、探しに行けるのではないだろうか。
そう考えたのである。
で、冒頭に戻る。
すなわち、私と細田氏の“廃のゴキブリ兄弟”は、初めて禁断の原石山へ接近することが出来たのだ。
こいつは…、 隧道も貰ったか?!
原石山から下流へ向かって、以前は通行できなかった小又川右岸の工事用道路を進む。
そこには、ダム水没を目前とした土地が醸し出す独特の無機質感に充ちた、怪しい光景が広がっていた。
かつてのこの辺りは小又川の中でも特に美しい渓流で、ヤマメやアユ釣りに訪れる人も多かった。
流れている水は同じもののはずなのに、その景色はまったく変わっている。
こんな事なら、いっそのこと早くエメラルドグリーンの帳に隠して貰いたい…。
地元の人ならずともそんな気持ちになるのは、無理も無いことだろう。
今回初めて接近するチャンスに恵まれた林鉄廃隧道の擬定地は、1kmほど下流の小さな尾根の突端部である。
擬定地目前に来た。
右上に見えるのは、湛水線の上に建設されたばかりの付け替え林道で、フレームの左下外には湛水線下に重ダンプ走路(かつて原石山とダムサイトを結んでいた工事用道路)がある。
で、肝心の林鉄跡だが、想像以上に痕跡を失っている。
全然見当が付かない。
将来水際となる付け替え林道下の斜面は、ほとんど人工斜面に置き換えられているから、それも無理のないことである。
隧道も消滅してしまったのだろうか。
…以前に「隧道は残っている」という、工事関係者の証言を聞いたことがあったのだが…。
そう思ってつまらない斜面を眺めていると、突然何かに打たれたように隣の細田氏が駆けだしたのである。
それは、本当に突然の出来事だった。
どうしたんだ。 細田さん!!
すっげ。
まるで魚雷だ…。
これが細田の真の実力なのか。
最近の彼の見る目の鋭さは、もう私を超えている…。
細田氏が“突き刺さった”場所を、私も追いかける。
彼が走った平場は、残存する軌道跡では無い。
単なる法面上の「犬走り」だ。
だが、細田氏はその先に何かを見たのだ。
イメージが湧かない…。
まあ、こんな景色で隧道への期待感を膨らませられるのは、ちょっと想像力がたくましすぎる人だ。
詩人になった方がよいかもしれない。
私もまったくテンションの上がらないまま、見えなくなった細田氏を追う…。
細田氏が見えない。
まさか、本当に…。
苦笑。
来ないね。
これは、ぜんぜん来ないね。
こんなにワクワクしない廃隧道は珍しいよ。
振り返ると、これまた何の滋味もない景色。
憎っきダム野郎である。
俺は、砂防ダムも、でかいダムも嫌いだよ。
まあ、古くてでかいダムにはそれなりに面白さもあるけれど…。
ともかく、この景色では林鉄跡を辿ってみようという気にはならない。
仮にその気になっても、辿りようがない。
改めて坑門。
いやー…
なんなんだこれは。
鷲ノ瀬隧道坑門の唯一の良心。
辛うじて川側の丸石練積擁壁の数平方メートルと、坑口脇の胸壁部分に、旧然のものが残っていた。
これで萌え萌えしなさいと言うのは、さすがにハードル高すぎるだろ。
これが生まれて初めての廃隧道ならばいざ知らず…。
まあ冷静に分析すれば、この隧道の坑口は素堀ではなかったということだ。
それが分かる。
林鉄の開通と同じ大正末頃の建造だと思われる。
これが入口。
低いように見えて、これがなかなか嫌らしい高さ。
ジャンプしても届かないし、周りには手掛かり足掛かりとなるようなものがない。
細田氏がしきりに「俺を踏み台にして…」と泣かせる提案をしてくれるが、それに頼るのはオブ的なプライドが許さない。
そんなこと言ってるけど、前に細田氏の引っ張るロープで隧道から救出されたのは誰だったかな…?
誰だったっけ? →.こたえ
プライドを守るため まずはちょっと石を積んでみました。
が、これは全然ダメでした。
やっぱりこれだよね。
木を使おう。
これなら行ける!
さあ、行くぞ!
行きたくねー…。
この木、メチャクチャきのこ生えまくってるよ…。
握りたくねー。
でも・・・。
辺りには他に手頃な枝がない。
伐採までするのは気が引ける。
これで行くしかないぞ。細田さん!
甘ったるい臭いに顔をしかめながら、なんとか登った。
もう萎えまくりだ。
これが初公開、鷲ノ瀬隧道の内部だ。
森吉林鉄の新たなる隧道である。
やっと少しテンションが上がる。
内部はそんなに弄られてないようだ。
いかにも林鉄らしい、小さくて細長い断面が好ましい。
なんか、物干し竿のようなものが気になるが。
ちゃんと自力で戻れる事も確認した上で(←ここ重要)、洞床に下りた。
さほど長い隧道ではないと思うが、いよいよ鷲ノ瀬隧道の内部探索だ!!
湿った洞床に降り立つ。
空気も湿っている。風もない。
出口も見えず、これは閉塞しているのかも知れない。
それはそうと、隧道の上半分を塞ぐような黒い壁は何だ?
素材はプラスチックのようだ。
奇妙な坑門の封印や、真新しい金属棒などとともに、この隧道が今でも何かしら使命を帯びた現役施設であることを物語っている。
黒い壁の先へ進むと、壁が岩を削りだしたままの乱暴なものに変わった。いわゆる素堀隧道。もっとも、森吉林鉄隧道としては珍しい事ではない。
しかし、やはり素堀は危険なのである。車一台分くらいの岩石が洞床に山を作っている。天井には対応する凹みがある。
この辺りはまるっきり廃隧道のそれであるが、ここにも金属の長い棒と、さらに梯子まで現れた。
何かおかしいぞ。
出口の明かりが見えてきたのは良いのだが、その見え方が変だ。
どう見ても小さすぎる。
もしこれが距離によるものなら、1kmくらいはありそうだ(笑)。
これ…、 出口塞がれてるな…。
天井には、コウモリが静かにぶら下がっていた。
小さいのが 一匹だけ。
なんか寂しいな…。
最初死んでいるのかと思ったが、よく見ると微妙に「ふにふに」している。
仲間はどこに行ったんだろう。
洞床には彼らの“生きた証”がほとんど無いし、ともかくこの隧道はあまり好かれてないらしい。
まあ、最近まで近くでガンガン山を削っていたのだから、彼らが好かないのも無理はない。
やっぱり出口が塞がれていた。
先ほどまで外の明かりが漏れていたのは、一番下の20cm四方くらいの穴だ。
いま明かりが見えないのは、近づきすぎて見下ろすようになってしまったからだ。
これが何のための穴かは分からないが、人が出入りすることは不可能。コンクリートの壁も分厚い。
また、閉塞壁にペンキで大書きされている「52.5m」の文字。
これが隧道の長さと考えて良さそうだ。
この閉塞壁を囲むコンクリートの内壁は、元々のものだ。
閉塞壁にある、もう一つの穴。
しかし、これまた人が出入りできるものではない。
一応外へは通じているようだが、一体何のための穴なんだ…。
閉じこめられた状態で、ここから水やコンクリートを流し込まる嫌な姿を想像してしまった。
脱ッ〜出!!
さて…。
反対側も一応探しに行きましょうか。
結末、分かっちゃってるんだけどね…。
ちょっとちょっと、細田さんどうしたの?!
何かまた走ってったよ…。
とりあえず私も追いかける。
ちなみに、この写真の左下の辺りに隧道はあった。
出口は当然、この林道の小さな掘り割りの裏側にあるはずだ。
これが掘り割りの反対側。
ここから右下の草藪に下りてみた。
当然、塞がれた坑口がすぐに発見されるものと思われた。
無いんだけど…。
…何で見つからないんだろ。
見つからないわけ無いよな。絶対に地上に何かしか痕跡があるはず。
塞がれた坑口がドンと置かれていなければおかしいはず。
なのに、無い。
手抜きして探していたわけではなく、二人は真剣に捜した。
10分くらい、藪の中を徹底的に這い回った。
何もったいぶってやがるンだよ…。ショ●ネタのくせに…。
ダメでした。
真摯な探求者の気持ちを失った二人に、オブの女神は微笑みません。
でも、本当に無いんだよな〜。
何で見つからないんだろ。
この山(←写真)の右から入った隧道が、左に出てくるだけの事なのに、見付けられなかった。
…まぁ、いいかな(笑)。 萎えたし。