ミニレポート第285回 富山県道285号西勝寺福野線 不通区間 前編

所在地 富山県南砺市
探索日 2018.10.26
公開日 2024.09.10

 繋がっていないようで繋がってるけど、やっぱり繋がってない県道


《周辺地図(マピオン)》

富山県道285号西勝寺福野線は、富山県の西部、南砺市内にある全長7048mの一般県道だ。
平成の合併前は西礪波郡福光町と東礪波郡福野町を結んでいた。
路線的には県道42号と県道20号を結び、位置的には福野市街地から金沢市方面へ抜ける最短ルートだが、起点周辺に未整備区間があるため、全線を通しての利用はほとんどされていない。
この県道には一風変わった県道の認定が行われている区間があるが、そんなこととはつゆ知らず、なんとなく手頃な不通県道と思って探索した。

次の地図は、ピンク枠の範囲を拡大したものだ。(↓)



2023年版のスーパーマップルデジタル(SMD)ver.24だと、この県道の起点付近には県道色が塗られておらず、また途中の岩木地区内に徒歩道を示す点線区間があるため、自動車での通り抜けは出来なさそうである。

だが、チェンジ後の画像の地理院地図を見ると、県道42号まで県道の色で塗られており、SMD24では無色だった道が県道であることになっている。
SMD24では徒歩道表記だった岩木地内は軽車道として表現されているが、今度は起点附近の短距離が徒歩道を示す点線表現になっている。

結局どちらの地図を頼っても、まともに自動車で通り抜けることは出来なさそうという印象だが、事実、富山県の道路規制情報を見ると、2024年9月10日現在で……(↓)

本県道の「岩木地先」の「2.7km」が、「道路の破損、欠壊等による通行止め」のため、「当面の間」全面通行止めとなっている。
ただ、探索当時はこのような規制がなく、地理院地図でも道自体はありそうだったし、起伏もさほど大きくないので、自転車なら完全走破の見込みありと期待して走破を企てた。

というわけで、平成30(2018)年10月26日に行った探索の様子を、ご覧いただこう。
終点側から起点を目指して走ったが、終点の南砺市寺家から約3km先の同市岩木地区までは、砺波平野の広大な田園地帯を駆け抜ける至って普通な2車線道路であるので、その先の道路状況に問題がある区間を紹介したい。





2018/10/26 15:17 《現在地》 (海抜60m)

ま〜〜たこんな時間から探索を始めて……と云われそうだが、こんな時間である。……でもまあ、何とかなるんじゃないかな? 距離的には、目指す「起点」まで、あと4kmほどである。
それはともかく、このいかにも日本の平和な田園風景にある四角四面の十字路が、県道285号と48号の接点で、県道285号にとってはおおよその中間地点であると共に、平野区間と山岳区間の境界のような位置づけだ。背後に見える丘陵のような低い山並みを、この県道は未だ真っ当に超えることができていないらしい。

なお、県道285号上にはこの交差点を案内するいかなる青看も設置されていないが、交差する県道48号には双方向に青看があり、それらをチェンジ後の画像に表示した。
青看には交差点の左右が県道285号であることが明記されているが、例によって、これから向かおうとしている方向の行先表示はない。

が、よく見ると、行先をシールで隠している。
かつては行先を表示していたが、道路状況の悪化によって後から隠したものか。
あるいは、将来の開通を見越して記した行先を実際の開通まで隠すパターンもある。
この道がどちらに該当するかは、これからの展開で判断できるかも知れない。
なお、シールの下の表示内容は、いくら凝視しても透けてはいなかった。

ところで、これらの青看には「福」が多く、「福岡」「福野」「福光市街」などの地名が案内されている。ちなみに県道48号の路線名は福光福岡線である。なので、もしも県道285号の向かい側に青看があったら、直進「福野」、右折「福光市街」、左折「福岡」という、マル○クも驚きの完全福頭青看となって、日本中から参詣する者が絶えなかったかも知れない。惜しい!



交差点を直進しても、道路状況に変化はない。
そして県道285号のヘキサがある。
間もなく田園地帯に別れを告げて山地へ向かうが、その間際に沿線最後の集落を通過する。
それが、岩木集落である。田を前に山を背とした伝統の立地と、瓦屋根の落ち着いた佇まいを持つ。



15:21 《現在地》 (海抜70m)

岩木集落の中ほどで、集落のメイン通りである市道と十字路交差する。
ここにも青看などはないが、ここを直進してしまうと、いよいよ県道285号は怪しさを隠せなくなってくる。
まずはその“先触れ”として、「幅員減少」「この先150m」の道路標識が出迎えてくれた。

ちなみに、この県道の路線名に「西勝寺」という地名が入っているが、地理院地図をいくら見てもこの地名は見つからないはずだ。
SMD24だと、ここを左折して1km強進んだところに「西勝寺」というバス停がある。そのあたりが地名としての西勝寺だ。
角川日本地名辞典によると、そこは中世に最勝寺という寺があった土地で、それが西勝寺村の由来となり、明治22年から大字名となったが、昭和45年に附近の大字と合併して現在の大字川西の一部である字西勝寺となったらしい。
県道名にまでなった地名が、地名の合併で見つけづらくなっているパターンである。



15:22 《現在地》

そこから150mを進むと、道は突如……ではないか、予告があったんだから……狭くなった。
ちょうど綺麗に2車線が1車線に堕ちている。
それ以上でもそれ以下でもない。

ただ、意外にも(?)、通行を規制するような表示類は見当らなかった。
狭いだけで、一応通り抜けられるのかも。そんな予感もさせる状況だ。

狭隘区間へ突入!



15:22

狭くなると同時に道は上り坂となったが、まだ左手の谷間には田圃が続いている。
細かいカーブと路傍の緑の旺盛さのため、先行きが見通せない。
路面は荒れていないので、まだまだ普通のちょっとだけ狭い県道という感じである。



15:23

が、1分後、さらに狭くなった。

これまでの道路を“1車線”と定義していたことは、甘えだったのか。
これが本当の1車線であろう。(いや、さっきのも1車線だけど。笑)
同時に路面状況も少し怪しくなり、舗装はあるが、清掃が行き届いていない。
あと、路肩のデリニエータがボロッボロだ。もともと細いタイプで耐久性が足りなかったか。でも律儀に「富山県」のペイントはある。

そして、このような整備状況だから当然だが、この辺から起点までの2.7km区間が例年、冬季閉鎖される。
期間は2023年度だと12月1日から3月24日までという常識的な内容だったが、そのまま2024年は冬季閉鎖が明けず、同じ区間が冒頭で述べた通行規制区間(全面通行止)になった。だからいま行ったら、たぶんこの辺で封鎖されていると思う。
逆に言えば、2018年の探索当年は(冬期以外は)閉鎖されている体ではなかった。(少なくとも規制情報はなかった)



この狭くなった辺りで振り返ると、立ち去ろうとしている砺波平野にサヨウナラを言える。
そこには地理の教科書でも取り上げられる砺波平野の独特な散居村景観(田園と屋敷がモザイクに点在している)が広がる。
若干視点の高さが足りないせいで水田が目立たず、家並みばかりが目立っているが。



15:26 《現在地》 (海抜90m)

冒頭の交差点から約1kmで、ここまで田が続いていた沿道の谷が土堤で堰れた無名の溜池となった。
地形的にも、景色的にも、いよいよ薄暗い山へ入っていく。目指す“起点”までは、あと3kmほどの道のりだ。

探索当日はここまで一切の通行規制はなかったが、交通量はやはり少ないようで、今のところ車が来る気配はない。
あと、険道でも割と容赦なく突入することで定評があるグーグルカーも、なぜかもう少し先で唐突に引き返している。この先はストビュー未整備区間である。



2024年現在はおそらく封鎖されている区間だが、当時は路肩のちょっと怪しい所に「富山県」のコーンを置いていくくらいには行き届いた(?)管理が行われていた。
でもなんで富山県のコーンって、赤じゃなくて黄色いんだろうね。トウモロコシみたいで美味しそうだ。

狭く見通しの悪い池畔を300mくらい進むと、水面は消えて緑の谷となった。
その後も地形に忠実に谷底の近くを緩やかに上っていく。道幅はずっと狭いままだが、もう見慣れてしまった。
そしてやがて谷のどん詰りに着くと、急に勾配を強めて左手の尾根へと上っていった。



15:33 《現在地》 (海抜140m)

ひとしきり上って、冒頭の交差点から約1.8km地点にて、各種の地図にも描かれている分岐へ到達した。
上の「現在地」の地図はSMD24のもので、この地図だと県道として表現される末端がこの分岐になっている。地理院地図だと普通にまだ県道色の軽車道が続く。

県道はここを切り返し気味の道なりで右へ向かう。
分岐する左の道は民有林林道の麻生谷線というらしく、新しそうな林道標識が設置されていたが、入口から未舗装で、しかもAバリで雑に塞がれていた。地図だと通り抜けられそうに見えるが、荒れているのかも知れない。

まあいい、県道をこのまま進む。



SMDでは(縮尺によっては)点線表現の区間となったが、道路状況はこれまでと変わっていない。
道は完全に谷筋を離れて、むしろ尾根筋へ移った。
しかしまだ上り基調だ。最高地点はまだ先である。
尾根筋とはいえ、鬱蒼としたスギの植林地が広がっているので、見晴らしはほとんどない。



15:37 《現在地》 (海抜150m)

約2.2km地点、再び分岐が現れたが、この直前からなぜか道幅が少し広くなっていた。1車線は1車線でも、少し余裕がある感じだ。
で、今度の分岐も道なりに直進するのが県道である。林道側に「林道七村線終点」と書かれたボロい林道標識が残っていた。地図を見るとこの林道も麓(七村地区)に通じているようだが、状況は不明である。

県道を直進。



15:38

分岐を過ぎると、ようやく尾根上らしい眺望を右側だけだか得られるようになった。
まあ、この方角というのは眺望の主題となるような高山がないのと(能登半島の方向だ)、遠くの平野まで見下ろせるほどの視点の高さがないので、快哉するほどの眺めではない。それでも暑い時期などは風を浴びられるだけで楽なはず。全体的に鬱蒼とした風景が続くこの道路の中では数少ない眺望地点であった。

この辺りはほぼ平坦なのでペースも快調で、すぐに次の目印となる地点へ…。



15:40 《現在地》 (海抜160m)

出発から約2.5kmの地点にて、またも分岐が見えてきた。
しかも、今までよりも広々とした交差点があるようだ。向こう側が明るく見えている。


ん?!



出やがった!!!

予告なく唐突に、「通行止」なってるじゃねーか!

しかもこのAバリの草臥れ方…、封鎖されて数ヶ月以内とかじゃねーだろ……。

なんで県の道路規制情報に上がってないんだよ(苦笑)。おいしいけどw

しかしほんと唐突だ。 ここまで予告もないとかどうにかしてるぜ。



いうまでもなく塞がれている直進路が県道の続きであるが、ここで合流してきている右の道は何か。
先ほどまでの2本の分岐路のように林道標識がないし、舗装もされている。
現地では分からなかったが、帰宅後に南砺市の行政地図サービス「なんとデジマップ」の市道図を見たところ、この道は南砺市道であることが分かった(市道1465号七村線)。だからなんだというわけではないが、林道より公共性の高い道路であり、地図を見る限り、これも抜けられるようである。



で、みんなに見てもらいたいのはこれだ。

市道七村線側から県道を振り返ると、県道の広さがここで劇的に変わっている。そのせいで、遠目にこの交差点が明るく見えたのである。
路傍の草のせいで道幅が分かりづらいので、チェンジ後の画像には路肩を透視して表示した。
今来たのが左の県道で、これから向かおうとしている塞がれている道が、右の県道である。

ここで唐突に県道の幅が変わるのは、意味深である。

……なんて勿体ぶらずに書いてしまうが、いわゆる、 未成道 っぽい気が……。



改めて地理院地図とSMD24の道の表記を見直してみると、地理院地図は特に不思議な表現はされていないが、SMDの方は、ここで再び道路の表現が車道に復帰している。
道幅が広くなっていることの表現なのか。
少なくともこの地図上においては、最大の難関を越えたような感じに見えるが、実際はたぶん、この先の方が問題大なんだろう……。



塞がれているのだもの!(雑にね!)

道の広さが寧ろ怪しいんだよな(笑)。





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