廃線レポート  
森吉森林鉄道跡 探求編 その3
2003.12.6



 崩落と水没という最悪の状況にあることが確認されている森吉森林鉄道、4号隧道。
この突破を目指し、3人の男が挑む。

男たち vs 森吉林鉄 

ラウンド1、ファイト!

<作者注>
本レポートをご覧頂く前に、「道路レポ 森吉森林鉄道 邂逅編」及び「道路レポ 森吉森林鉄道 奥地編」をご一読いただいたほうが、お楽しみいただけると思います。


3号隧道
2003.11.30 9:46

 3号隧道の坑門から流れ出した水は、滝となって下段の軌道へと流れ落ちている。
恐る恐る洞内を覗き込むと…・

駄目だ。
水没している。

出口の見えない洞内から、まるで大河のようにゆったりとした流れが、洞床一杯に広がっていた。
水深は40cm位はあるだろうか。
前回は、小さな水流はあったものの、坑門付近は長靴で問題なく通行できた。
やはり、この雨の影響は無視できないらしい。

さて、どうしよう。
下半身を犠牲にすれば無理やり通行でいないことは無いだろうが、まだ濡れるには早すぎだろう。
そもそも、私以外の二人は、まさか濡れながら進むことなど考えていないだろう…。
引き返すか…。


 ここで、持参していた「新兵器」を初披露しよう。
それは、時代を超えて変わらぬ土木の主役、原点にして至高、
スコップとツルハシである。

男たちは、各々得物を手にすると、坑門付近の水流に立ち向かった。
洞内には、そこを流れている水量以上に大量の水が存在していた。
それは、川下側にあたるこの坑門に枕木やら落ち葉やら土砂やらが累積してダムを形成してしまっているせいだ。
我々は、洞内の水を一気に放出せんと、ダムを破壊する作業に入ったのである。

ああ、楽しい。


 重い枕木や、水気を含んだ土は重く、男三人でも難儀したが、それでも徐々に徐々に水路は広げられ、深くなって行った。
遂に、堰を切って流れ出す濁流。
さっきまで足場にしていた枕木も流出し、あわや濁流にのまれかけるも(←少し誇張)、男たちの抜群のチームワークで乗り切った。
この調子なら、一気に放水できるかも知れない。
一旦手を休め、その行方を見守る。

パタ氏が、ボソリ。

「水が、茶色い」

私は言った。
「そりゃそうでしょ。これだけ(工事)すれば。」
しかし、言われてみれば、奥から流れ出てくる水が既に茶色い…。

パタ氏、ハッと気がついたように大声で、
「離れろ!離れろ!!」
「坑門から離れろ!!」

驚いてそれに従う二人、パタ氏はもう遠くまで行っている。
私は、そこでやっと気がついた。
パタ氏が恐れていたのは、鉄砲水なんだろう、と。
たしかに、洞内の水位を急激に変化させたため、与り知れぬ上流で、危険な土石流が発生しないとも、言い切れない。

幸い、私たちがここにいた時間内ではそう言ったことは起きなかったが、パタ氏の行動は、説得力があったかもしれない。
私は、終始楽しくて仕方なかったが。

 


 残念ながら、一定以上水位は変化しなかった。
だいぶ下がったものの、長靴で侵入できる限界は超えていたし、経験上、奥はもっと泥っぽくて深いはず。
これは、撤退という判断が下された。
帰り際に先ほどとほぼ同じアングルから、流れ落ちる滝を撮影。
幾分水量が増えているのが、お分かりいただけるだろうか。




 それと、内部の写真もパチリ。
水蒸気が激しく鮮明に写らなかったが、3号隧道は一面の水に沈んだままだった。
雨天時には水路となっているようだが、現役当時も同様の悩みがあったのだろうか?

少し悔しいが、一応探索済みの隧道ということで、引き返そう。


 安全性をとるならば、ここは間違いなく来た道を丁寧に戻るべきだが、さすがに少し面倒くさいし、時間にも限りがあるので、全員一致で「2号と3号隧道の間の崖」を降りて、下段軌道までショートカットすることにした。
ここは、前回探索時に二度も登攀した場所だ。
大丈夫だろう。

が、その判断は、少し甘かったかも。
雨に濡れた苔の岩場や土の斜面は、滑り降りたといえば聞こえは良いが、実際は殆ど制御が利かず、「滑って落ちた」といったほうが正確だと思えるほどだった。
幸い、誰も怪我はなかったが、先頭を降りた私は、背後から響く落石音にも一瞬戦慄した。

うーーーん。
ここは反省だな。
ちょっとリスキーだったと思う。



 さて、気をとりなおして、今度こそ4号隧道を目指そう。

ブル道との分岐点まで、戻る。
 

ブル道を登る
1130

 斜度30%以上の強烈なブル道。
使われなくなってから久しいようだが、パタ氏は愛車ジムニーで登れそうだといっていた。
私には、ちょっと信じがたい。

ピクニック気分で急な道を登ると、すぐに3号隧道と4号隧道の間の短い明かり区間に出会う。
そこは、ちょっとした広場になっている。



 まずは、先ほど水没によって断念した3号隧道だが、それもそのはず、こちら側の坑門からも多量の水が小川となって流入していた。
これでは、なんぼ水位を下げても限界があったわけである。

さて、私が今立っている場所の背後には、4号隧道がぽっかりと口をあけている。

今度はHAMAMI氏が広場で何かを発見していた。
近寄ってみる。



 広場には払われた杉の下枝が大量に放置されているが、その中に混じって、やはり沢山の湾曲したレールが発見された。
それだけでなく、HAMAMI氏が発見したのは、この写真の左下に写っている銅色の物体(というか、どこも同じ様な色の写真だが)。


 おおっ。
この重厚な物体は、一体なんだ。
全体は分厚い鉄で出来ており、ゴミ箱のような形をしている。
内部は空洞で、もともとは何かが収納されていたのだろうか。
なんと言っても目を引くのは、本体に誇らしげに陽刻された「日立」の社印だ。
その下には、数字で「5」が刻まれている。
そして、上部の凸部分には、金属のプレートが填められている。
ここを拡大。



 単 相 変 圧 器 …だろうか?

ちょっと、聴いたことの無い名だ。
素人には理解できない数字が並んでいるが、下のほうに「昭和16年」と読める部分がある。
これが、本器の生産年度だとすると、この付け替え軌道よりも10年以上古いものだということになる。
はたして、これが軌道と関係があるものなのか、それすら分からないが、相当に古い時期からこの山林は開発されてきたのだろう。

HAMAMI氏のお手柄である。
なにか、この機械について情報がおありの方は、教えていただきたい。


4号隧道 入洞!
10:15

 3号隧道とは一続きの水路のようになっている4号隧道。

入り口から浅い水流に洗われているが、幸い長靴で問題なく侵入できそうだ。

武器を手にして、いざ、4号隧道へ!
 

 前回となんら変化の無い坑門付近。
泥濘と化した洞内は、相変わらず風が無い。
すぐそこにある大崩落が、まだ見えるはずも無いのに、私に強烈な圧迫感を与えてくる。
隧道の大半を覆い尽くした土砂の山と、その奥に広がる暗黒の湖面…。

ブルッ

これが、武者震いというやつなのか。



 で、すぐに3人はその現場に到達した。
前回の探索後、奇跡的に土砂が押し出され地底湖も解消していることを期待したが、全くそういうことはなく、やはり、隧道は水没していた。
闇の奥へと果てしなく続く地底湖を前に、手にした武器も所在無さげだ。
こんなことを言えば、他の二人に怒られるかもしれないが、現地を一度見ていた私は、この隧道にスコップやツルハシと言った、生半可な人力が敵うはずも無いことを知っていた。



 先の写真でパタ氏が立つ土砂の山は、洞床から3mほどの高さに頂点を持ち、洞内断面の半分以上を埋没させている。
さらに悪いことには、この崩落が川下側であったこと、また推定だが、本隧道の延長が相当に長いことにより、この奥に形成されてしまったダム湖の水深も、2mを超えているようだ。
逆に、この水深が、本隧道の長大さを示しているのかも知れない。
しかし同時に、それとは別に、この地底湖の果ては、やはり土砂の壁ではないかという可能性もある。
それはすなわち、完全崩落だ。
全く風が無いことが、それを予感させる。


 前回は、余り気にしなかったのだが、ここまでの洞床には一つも見られない枕木が、まるで浜に打ち上げられた流木のように、累々と湖岸に積み重ねられている。
崩落後、地底湖が形成されてゆく過程で、比重の軽い枕木が水面に浮き、そのまま下流であるこちら側に流れてきたのだろうか。

パタ氏、HAMAMI氏ともに、この惨状を見て、さすがに人力土木事業は断念したようだ。
ここまでは、正直予感していた。

ちなみに、パタ氏に叱られてしまった。
彼が言うには、私が前回レポートで見せた崩落現場は、「なんとかなりそう」に見えていたらしい。
私の写真が「甘い」らしい。
たしかに、写真でお伝えできる臨場感には、限界がある。

…すまないね。

 

 成すすべなく撤退する3人。

奥に見える明かりは、入り口だ。
このように人が写っていると、パタ氏のように、「なんだ大したことねーじゃん」というスケールの錯誤は起きにくそうだ。(ムフフ)

しかし、これも、いい絵だなー。
もう、最高だよ。
最高。
こんな探険隊らしい絵、なかなかないよ。
ほんと、楽しいなー。


―隧道掘削隊、あえなく敗れる。

じゃ、どーすんのよ?!
もう、諦め?

 





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