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道路レポート 北海道道1045号千歳白老線 第2回

所在地 北海道白老町
探索日 2023.10.31
公開日 2024.07.20

 もう治す気ないでしょ、この道道……


2023/10/31 6:22 《現在地》

1.6km地点の分岐を、置き忘れられたかのような道道標識に従って右折する。
右折直後、ますます道は頼りなくなったように感じた。
距離のうえではまだまだ序盤だが、早くも廃道一歩手前と言った雰囲気だ。新しい轍は全くない。まだ決定的に道が寸断されるような場面はないが…。

この先で道は見通しの利かない笹藪へ曲がりながら入り込んでいくが、こんなところでは特にヒグマとの出会い頭の遭遇が怖い。
だから意識的に音を立てて、こちらの存在をアピールする。近年では人の音に興味を持って逆に寄ってくるクマがいるという説もあるが、人慣れしたクマが少ない山奥ほど昔ながらの対策は有効だと考えているし、ぶっちゃけ個人レベルで出来る対策が他に思いつかない。

ちろん今回も、道内での廃道探索時には欠かさずに携帯するヒグマ対策3点セットは装備済みだ。
ヒグマ対応を謳っている熊避けスプレーと、高音のカウベル熊鈴、そして安心と信頼のHAMAMI印の“オリジナル熊避けブザー装置”だ。



6:23

間もなく、地図にも描かれている、深沢を渡る橋が見えてきて……

うわ! またあるじゃん!

またあった、例の道道標識。しかも今度は別の看板もセットである。

振り返ったらまださっきの標識が見える場面での連続出現。
こんなに立てる必要があったのか大いに謎だ。
ここに2本建てるより、1本は入口に立てたら良かったのに。ものものしい看板の横に。
(道道であることを隠したい思惑でもあるのかと勘ぐってしまう)



通 行 止

この先、法面崩落並びに行止まりの為、通年通れません。

室蘭土木現業所

これは初めて見る看板だったが、この先の道の整備不良を道路管理者が告白する内容だった。
わざわざ、「通年通れません」と書いてあるのも印象的だ。冬季閉鎖だけだと思った? ざんね〜ん、通年だよ、みたいな。

それはそうと、この手の行き止まりの道路の通行止看板には、「整備中」とか「工事中」とか「建設中」とか「未開通」とか、そんなことが書いてあって、将来の開通に含みを持たせる文面のものが多いように思うのだが、この看板にはそういう期待感を持たせる要素が全くないな…。

いずれ、この道専用っぽいこんな看板を作って設置するほど、ここの通行止は長期固定化される見通しのもと始められたのだろう。
その時点で、ここに書かれている「法面崩落」なんかは、もう直すつもりがなかったってことになりそうだ。
なお、室蘭土木現業所は平成22(2010)年に室蘭建設管理部に改名しているので、それ以前からの封鎖と分かる。(探索時点で13年以上経過していることに)

ところで、分岐から少しだけ進んだこの中途半端な場所に、なぜこういう看板や標識があるのか不思議だったが、その理由が先ほど分かった。

平成20(2008)年頃にこの道路を「ある場所」(後述)まで通行した人のレポートを読んだところ、当時はこの場所にも(入口にあった物とそっくりな)片開き式の立派なゲートが設置されていたことが判明した。ゲートは開いており、その脇に今もある道道の標識があったが、「通行止」の看板は無かったことも判明した。

当時既に【入口のゲート】は封鎖されていたが、例の【厳しい文言の看板】は無く、この辺りにも車の轍が多く残っていて、封鎖から間もない感じがした。

で、今回ここのゲートの存在に全く気付かなかったのであるが、当時の写真と見較べてみると、やはりゲートそのものが撤去されていた。
わざわざなんでかと思うが、わざわざである。



6:24

この道道に入って1本目の橋である。
深沢を渡る橋で、親柱に設置された銘板にある橋名はそのものずばり、「深沢横断橋」
深沢橋じゃ不満だったのかと思わないでもないが、命名者に何かの拘りがあったのかもしれない。

他の3枚の銘板も残っており、それぞれ、「深沢」「ふかざわおうだんはし」「昭和41年9月竣功」の情報が読み取れた。
本橋の竣工年は、道道が認定された時期(昭和58年)よりもだいぶ早いのである。
道道の認定以前からここには車道が存在していたのだが、それはおそらく、先ほどの深沢林道と同じような国有林林道だったろう。



40mほどの長さがある真っ直ぐな橋の上から、古いガードレールの高欄越しに深沢の下流側を撮影した。
すぐ先に砂防ダムが見下ろされ、その奥で幅広のポンベツ川と合流している。
これから道道末端まで、末永いお付き合いとなるポンベツ川を、ここで始めて目視した。

ポンベツという川や地名は道内に複数あり、その由来はアイヌ語で「小さい川」を意味するようだ。



6:26

深沢横断橋を渡り終えた道は蛇行しながらポンベツ川の畔へ近寄っていく。
林道時代からなのか、道道認定後に拡幅されたのかは不明だが、林道にしては道幅は広めだ。
が、笹やススキが車1台だけの幅を残して路上に生い茂り、その様子はほとんど廃道と変わらない。

切り立った法面に地山が露出しており、その滑らかな地肌は一種独特なものがあった。
おそらくは凝灰岩で、一帯は火山地帯だから火山灰由来の地層だと思う。



6:27

ポンベツ川の畔に近づくと、古びた1枚の標識が現れた。
それは国有林の林班界を示すもので、周囲が国有林だということが分かる。
この道は道道としても、林道としても、ほとんど利用されていない現状があるようだ。



6:28

か細い道は、河岸段丘らしき小平坦地を直線的に貫いていく。
周囲はおそらく植林によるエゾマツ類の針葉樹だが、同じ植林でも薄暗いスギ林とは印象を異にする。
木々の間隔が空いていて遠くまで見通せる開放感があり、その眺めを美しいと感じるのだが、少しもリラックスした気分にはならない。緊張が途切れない。
もちろんその理由は分かっているが、しつこくなるので省略する。

硬い意思を持って、自転車を漕ぎ進める。



6:28

轟々という盛大な水音に目を向けると、まだ新しい雰囲気を持った巨大な砂防ダムが見えた。
工事中はこの道が大活躍したに違いないが、終わってしまえばそれまでだ。



5:29

う〜〜ん! これまた際どい状況だ!!

分かるかな〜、この写真で。道が盛大に斜めってるのが!!

土砂崩れで盛り上がった路面に、薄らとしたダブルトラックが続いているが、全体が谷側に盛大に傾斜していて、自分なら絶対運転したくない。
しかも、ノコギリか何かで灌木を伐開した跡もあった。
とても行政関係の仕事とは思えないので、入口のゲートを開けて進入した地元関係者だろうか。まあ何であっても、轍が続いているのは心強い。



6:31 《現在地》

が!

深沢林道分岐から約1.1km、入口からだと通算2.7kmの地点で、路肩が大きく決壊していた。

直前の崩壊地を越えた轍の主は、ここも越えられただろうか?
自転車とかバイクならなんてことない路肩欠壊だが、四輪でここを突破できるかどうか。
自分なら絶対に試さないが……、う〜〜ん…。

しかしまあ、入口の様子を見た時点で嫌な予感はあったけど、もう完全に北海道(道路管理者)は、この道道の管理を止めている。
路線ごと廃止されてしまってるんじゃないかと疑いたくなるレベルだ。
一部とかでなく、(入口のゲート以外は)全線が全く管理されていないのは凄い。
路線全体が廃道状態ってのは、全国の都道府県道まで目を広げても、なかなか無いと思うぞ。
(全線廃道状態の都道府県道を知ってる人がいたら教えて欲しい。あの大嵐佐久間線とかだって、ちょっとは現役区間有るからね



6:37

地図だとあまり川から落差のないところを通っているように見えるが、実際は結構高い。
ときおり道のすぐ下まで川の蛇行が寄ってきて、スリリングな感じになる場面もあった。
崖道になっても、ガードレールとかコンクリートの護岸とかは全くないので、林道だとしても低規格。

眼下に横たわる、微かに朝靄のかかった清楚な渓流。
艶やかな錦も、銀色の水辺の前ではしっとりと落ち着いた雰囲気に感じられる。
美しい。とても美しい。

けれど、この川を見ているとき常に連想されたのは、こいつの姿だ。絶対やってるでしょ、あのポーズここで。超似合うもん…。遭いたく無い〜。



6:43 《現在地》

入口から約3.3kmの地点には、周囲を高い立ち木の森に囲まれた、だだっ広い空地があった。
道からは見えないが、地図だと直近に2連続の砂防ダムがあり、その工事絡みのヤード跡か、はたまた林業関係の土場か、あるいはその両方か。

まだ陽が当らない周囲の地面は、朝靄が凝結したみたいな色で着霜していた。
川の音は常に聞こえるが、それ以外は凝結したような風景だ。とても冷たく、固まっている。音のある静寂。
だが、今日を爆発するための光と熱のエネルギーが、向こうの山から次第に下りてくるときの期待と高揚が、私にも作用を始めた。
全線の3分の1ほどの距離を臆病な気持ちで進んで来たが、ようやく肝が据わってきて、楽しさを感じ始めたぞ。



広場で見た、西の山の風景。

かの有名なエアーズロックを思わせる赤茶けた岩山に、月がぽっかりと浮かんでいた。

前景の森と、背景の岩山が、別の世界であるかのような、不思議な取り合わせ。

謎に満ちた道道に連れられて、奇なるポンベツ川を窮める旅は、まだまだ続く……。







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