道路レポート 福井県道209号五幡新保停車場線 前編

公開日 2016.1.25
探索日 2015.9.14
所在地 福井県敦賀市


【周辺図(マピオン)】

福井県土木部道路保全課『道路現況表』(2010年) を参考資料として挙げているwikipediaの「福井県道209号五幡新保停車場線」の項によると、本道路は福井県敦賀市五幡(いつはた)と同市獺河内(うそごうち)を結ぶ、全長約5km(重複区間を除く実延長約4km)の一般県道である。

路線像は右図の通り、低い山を挟んで並走する国道8号と国道476号を連絡する、いわゆる「ハシゴ道路」だが、中間地点にあるウツロギ峠の前後に、道路地図や地形図が破線で描いている未整備区間があり、実際に福井県は峠の周辺に1519mの「自動車交通不能区間」を指定しているそうだ。

なお、この路線名には「新保停車場」という名前が入っているが、同名の駅は存在していない。
本県道が路線認定を受けた昭和35年当時、終点には確かに新保という北陸本線の駅があったのだが、僅か2年後の昭和37年に、北陸トンネルを通る現在の路線へ付け替えられた際、駅は廃止されたが、県道は路線名を含めそのまま据え置かれたという経緯があるそうだ。
不通区間があるような県道だから、名前もなおざりにされたのではないかなどと思ってしまうが、まあそれは置いておこう。
(実際は、県道の路線認定には細かい要件が絡んでいるので、停車場がない停車場線を、名前だけ変えて存続させることは容易でないだろう。つまり、県道を存続させるために、駅がなくなったことを無視した可能性がある)

ただし、今回のテーマは廃線や廃駅ではなく、単純に不通区間の走破である。
しかもどちらかというと、この探索は探索目的で侵入したというよりは、より純粋に、ここを通行して先へ進みたいという気持ちが強かった。
この日の探索の行程上、ここを自転車で通過出来るのと出来ないのとでは、その後の工程にだいぶ違いが出る状況だった。
というわけで、正直言えば探索的な面白さを求めるより、さっさと通過させてほしいという気持ちで挑んだ、この不通県道。実延長4kmの走破。

実態は、いかなるものであったろうか。 本編スタート!




えっ?! 海岸から山裾へと伸びていく爽快なバイパス。


2015/9/14 15:33

今日の日が昇る前からずっと続いていた、いつ果てるのかと思うほどの長い海岸の旅も、ようやく終わりの時を迎えそうだ。
福井市近郊を出発し、ひたすら自転車で越前海岸を南下してきた私だが、今見えてきた敦賀市五幡の集落で内陸へ向かう県道209号へ入り、今庄(南越前町)を目指して走る予定だった(今庄からは輪行でスタート地点へ戻る)。

そんな計画を達成するためには、この県道209号は是非とも走破したい要所となる。これが越えられないとなると、このまま敦賀駅を目指すことになるから、そこから福井方面に輪行すると………高い。
まあ、単純にそれだけなんだけどね。時間的には別に得もあまりしなさそうだが、どうせなら、探索も出来て安いほうが、嬉しいよね。(ウンウンペンチウム)




15:34 【現在地】

あれれー?

ここはまだ、予定していた県道の起点である五幡交差点では無い。
その300mほど手前(北側)の地点であるのだが、
いかにも県道っぽい、真新しい立派な道が、
国道から分岐していた。

しかし、

「行き止まり」だという宣言も、忘れてはいなかった。
すなわち、県道の未成道か〜! いいね〜いいね〜〜。



いいね〜〜!!

「行き止まり」の表示に続いて、入口から見える近場にもう一枚、間髪入れず、
「この先県道行き止まり」の大きな看板が設置されていた。
これにて、この道が県道209号の未成の新道であることが、ほぼ確定。
「行き止まり」だといいながら、今のところ特に封鎖はされていない。

それにしても、この海岸沿いの国道を背に、新しい起点から見るウツロギ峠は、
標本的な鞍部の形を見せていて、170mという高低差が、実感的に迫ってきた。
特別に険しい様子は無いが、これを越える道路の開通には、なぜかだいぶ手間取っている。



最近になって集落近くに作られたらしい道にしては珍しく、歩道は無い。
しかし車道の幅は立派で、全然車が通っていないのが奇妙に見える。
道の両側にあるのは水田だけで、人家は全くない。
広大な水田は、山に向かって徐々に高くなっていく地形を、大きな短冊状に区画整理された綺麗な段々で上手く利用していた。
この行き止まりだという県道の現時点での役割は、ただただ、農道であるのだろう。




15:39 【現在地】

400mほど一直線に進んできたが、ここで唐突に左カーブが出現。
ただカーブがあるだけで紹介するのは変な話だが、実際にはそれだけでなく、このカーブから先は微妙に道が未完成である。
鋪装は完備されているし、道幅も今までと変わらないが、センターラインや車道外側線といった白線が未施工である。

だが、それでもまた「通行止め」を示すものは何も無い。
水田の終わりとなる山裾の緑も近付いてきているが、果たしてどこまで作られているのか。
地理院地図だと、そろそろ、やばいはず。(スーパーマップルデジタルは、最新版の「16」でもこの道を全く描いていない)



で、ここで全く唐突に、前触れ無く、



見返り絶景!


こんなに綺麗だったとは、思わなかったでしょ? 私もここまでとは思わなかった。
なにせ、地形としては別に平凡な、結構どこにでもありそうな海と田圃の組合せである。
でも、美しかった。標高が高くなくても、地形が険しくなくても、珍しいものが写っていなくても、
絶景と思う景色は、日本のそこかしこにあるから良いな。道路が主役だから、なおいいな!



個人的には、今の景色を見れただけで寄り道した甲斐は十分あったと思ったが、そんな満足感を道路が感じ取った訳でもなかろうに、田圃の連なりが終わる山の端に辿り着くと同時に、突如道は姿を消していた。

農道としても使える区間だけは整備したが、峠越えにしか使えないこの先の区間は、まだ整備しないということなのだろう。
まあ、これは多分賢明な判断である。十分に貫通できる目処が立ってから、一挙に工事を始めれば宜しい。
問題は、そういう日が何時来るのかな、ということだが…。




15:41 【現在地】

結局、国道との分岐から500m少々、高度については10mばかり登っただけの山裾地点で、この立派な未来の県道は終わっていた。
地理院地図が描いている終点は、正確な位置である。

なお、県道としての工事は今のところここまでだが、田圃の中の畦道を通ることで、本来の県道へとショートカットする事は出来そうだった。(ただし、なぜか柵があって車は通れなくしてあった)
しかしこのショートカットは、敢えてしなかった。折角なら、現県道も一から走ってみたい。



もう、振り返ったら絶景があるのは知っているので二番煎じだが、いいものはいい!

少し望遠で振り返る、五幡の田園&海浜風景である。
背後の敦賀湾と、さらに向こうに敦賀半島の存在感が、静かな里の風景に迫真の印象を与えていた。

なお、新道沿いには田圃しかなかったが、これから向かう現県道は、向こうの集落の中で産声を上げている。
一旦国道へと戻り、左折して五幡交差点を目指す。




ちょっとだけ補足。 新道はいつごろ整備されたのか?

現場の雰囲気としては、ここ10年以内くらいに建設されたように見えた、今のところ田圃の中を横切っているだけの約500mの新県道であるが、実際はいつ頃整備されたのだろう。
残念ながら、正確な時期や経緯の調べはまだ付いていないが、平成になってから撮影された、以下のような3枚の航空写真を見較べてみると、確かにここ10年台の出来事であろうという事が分かった。少なくとも、どんなに早くとも、平成6年以降である。

五幡地区内の水田は完全に区画整理がなされており、その幹線として新県道が機能している現在の状態。

水田の区画整理が北側から進められており、それに伴って新県道の位置が造成されている(まだ路面はなさそう)。

地区内の水田は昔ながらのモザイク模様であり、その間を沢が曲流し、新県道は影も形もない。

以上を見る限り、この区間の新県道整備は、大規模な農地の区画整理事業が「主」であって、道路はその副産物的に、将来の全線改良の可能性を残すべく、先行整備されたもののように感じられる。
なので、いま現在もこの先の山岳区間における新県道は、建設の時期は無論のこと、ルートの詳細さえ決定していないかもしれない。

航空写真からは、そんなようなことを感じた。


スポンサード リンク
ちょっとだけ!ヨッキれんの宣伝。
遂に「山さ行がねが」が書籍化します!過去の名作が完全リライトで甦る!まだ誰も読んだことの無い新ネタもあるぜ! 道路の制度や仕組みを知れば、山行がはもっと楽しい。私が書いた「道路の解説本」を、山行がのお供にどうぞ。 ヨッキれんやトリさんの廃道探索シーンを一流のスタッフが命がけで撮影した、日活の廃道ドキュメンタリーシリーズ第1弾



こちらが現時点の県道の起点である。五幡交差点。


15:45 【現在地】

国道を南下すると、間もなく道の両側に集落の家並みが現れはじめ、そして信号機が見えてきた。

信号機に取り付けられた交差点名の標識には、「五幡」の文字。
果たしてこれこそが、県道209号の起点である五幡交差点だった。

が、まさか交差点に歩行者用の押しボタン式信号しかないとは…!

完全にその辺の路地じゃないですか…やだー。

自動車交通不能区間があるらしいので、青看が無いくらいは予想の範囲内だったが、これは初っ端から、車が出入りする事を想定していない感じですか…。
でも信号があるだけマシだと考えるべきなのか…。あるだけ…。



これが、“県道209号”?!

い、息を呑む、狭さだ!

横断歩道よりも狭いんじゃないか…?

特に、通行止めとか、車両進入禁止とか、大型通行規制とか、いかなる規制標識も見あたらないのだが、軽トラ以外入れる姿が想像が出来ない…。。




角度を変えてみても、やっぱり狭い〜!!

こんなんでも一応は供用済みの(すなわち現役の)県道なので、恐らくカーナビとかでも県道表示がされていると思う。
だから、「国道8号と国道476号を結ぶ近道だな」と思って、何も知らずに県道を使おうと考えるドライバーもいるだろう。だが、ほとんどがこの交差点に気付かないか、或いは信じられず、通りすぎていると思う。
流石にこの横断歩道しかない信号が、天下のヒトケタ国道に繋がる県道の入口とは、普通の感覚では思わないはず。



そう!
ここは紛れもないヒトケタ国道なのである!

だから、交差点のすぐそばの民家の壁に、こんな古ぼけた、いかにも交通戦争時代を彷彿とさせるような標語があったりする。
国道以外の道路と面していない家屋が結構あるので、そういう家の子は、はなから自転車を覚える事を拒否されたも同然。

しかし、こんな無茶な標語が必要だと思えるほどには、国道8号は交通量が多く、そのうえ民家連担区間なのに歩道も皆無だ。
県道209号の整備など、まだ構ってる場合じゃないという雰囲気さえある。




そろそろ、参りますか…!