道路レポート 静岡県道19号伊東大仁線 宇佐美〜亀石峠 後編

公開日 2013.09.05
探索日 2007.07.26
所在地 静岡県伊東市〜伊豆の国市


夕方の僅かな時間に走ったことのない峠でアップヒルとダウンヒルを楽しもうという試みは、今前半戦であるアップヒルの行程を終えたとこ。
スピードに酔いしれるダウンヒルならばいざ知らず、そんな果実を味わう準備としての苦痛な“木登り”ともいえるアップヒルで、思いがけない興奮を味わう事が出来た。
そしていよいよ薄暗くなり始めた峠にも、私はそんな余韻を伴って立ったのだった。

これから峠で折り返し、今来た道を引き返す。
山行がではあまりこういうピストンな探索はやや珍しいし、何より帰路はレポートを省略する場合も多いのだが、今回に関しては省略出来ない事情が二つもある。
一つは、前回をお読みいただいたならばお分かりの通り、私はまだ亀石峠の伊東側ルートの全貌を把握していない。
途中にあった上下線分離区間のうち、「下り坂専用ルート」を体験していないのだ。

そして二つ目の事情は、これまでの往路では何度か振り返り際に目に付いていたがあえて触れていなかった、“ある種のアイテム”についてである。

それは、私という人間を最も興奮させる“道路上のアイテム”なのだが、それをちゃんと紹介したい!!



ということで、文字通りの“駆け足”となる下り坂(復路)を、ご覧頂こう。


猛烈に下れ! このパッド灼け尽きるまで!! 


2007/7/26 18:30 《現在地》

亀石峠の頂上はとても緩やかな場所で、伊東側の麓から見たような鞍部の切れ込んだ感じは薄い。
そこには伊豆スカイラインの亀石料金所(出入口)やロードサイドの広い駐車場のほか、すぐ傍には板橋という小さな集落もあるなど、峠の両面で地形の見せる表情は大いに異なっている。
私はここで引き返してしまうので、大仁側(伊豆の国市側)の峠道をお伝えできないのは多少心残りであるが、急がないと撮影出来ないほど暗くなってしまうので、さっさとUターンする。

それはそうと、伊豆半島では案内標識に標準以外の字体を使うことが流行っているのだろうか?
ここにある「亀石峠」の案内標識の字体は行書体のようなスタイルであった。




ここで分岐する伊豆スカイラインは、昭和39年に熱海峠〜富士見平間の全線41.5kmが開通して以来、ずっと有料道路であり続けている。
昭和3〜40年代には、「○○スカイライン」を名乗る有料観光道路が全国に多数誕生したが、平成の今日まで採算性を維持できた路線は多くなく、既に大半が無料開放されている現状を見れば、(伊豆スカイラインの現在の収支は知らないけれど)やはり伊豆は繁盛の地であり続けていることが分かる気がする。

逆に言えば、未だに有料観光道路が存続できている観光地は、真に集客力のある全国区の観光地だと言えそうだ。
もっとも、有料道路事業の制度は複雑なので、無料開放=低採算ではないことは要注意であるし、「スカイライン」を名乗っていても、実質的には産業バイパス化している例もある(房総スカイラインなど)。



伊豆スカイラインの跨道橋は県道の路内に2本の橋脚を下ろしており、県道を3分割している。
それらがちょうど右折レーンや合流車線として使い分けられていることに、巧さを感じた。

その一方でさほど巧いとも思えないのが、この跨道橋に掲げられている「伊東市」の市章であった。
一見するとヒマワリか何かの花のような形だが、よくよく見るとその花びらがコーヒー豆のような…少し気色の悪いものである事に気付く(別にコーヒー豆は気持ち悪くないが)。

なんとこのマーク、伊東市公式サイトの記述によると、平仮名の「い」を10個、輪型に並べた…「い」「十(とう)」ということらしいのだ。
個人的にはイマイチだが、なんともトンチの利いた話である。


で…、
こっからですよ。 私が見せたいのは!




← 私はこれが、
本ッ当に大好きなんです!


ここから」 ですよ!
言われなくても分かってますよ!(笑)

しかも、

全線エンジンブレーキ使用

なんて、サラッと言ってきます。タマラナイじゃないですか!
全線ですよ全線! 全線!!  「全線」と「全面」が大好きですから!



私の大好きな「エンジンブレーキ看板」の後ろに隠れていたのは、こちらは何も珍しくない県道の標識、いわゆる「ヘキサ」であった。

……

… … …

分かります?

この標識、ちょっとですよ?

右に挙げた標準の様式とよ〜く見較べてみて下さい。

なお、このあと注意して見たところ、同じ峠道にある少なくとも2枚のヘキサが同じ誤記?を持っていた。




さらに進むと、上りと下りの道が分離する地点が見えてきた。
ここまでも下り坂ではあるが、勾配はとても緩やかだ。

この分離を前にして、いささか古びた「速度落せ 凍結」の標識が出現。
設置者は「伊東警察署」と「熱海土木事務所」で、先ほど私を興奮させた巨大な看板と全く同じである。

思うに、おそらく当初こうした控えめな看板だけで下り坂への注意を促していたが、ブレーキ過熱や速度超過による事故が後を絶たず、そのためにより具体的に注意を喚起し、通行方法まで指示するあの大きな看板を設置したものだろう。

いよいよ本格的な下り坂が始まろうとしているが、その最後の警告とも言うべきものが、矢印の地点に…! 路上に注目。


[ この先急勾配 ]

こんな路面のペイント文字は初めて見る!……気がする。

一般に路面に書かれている標識類を「道路標示」と呼んでいるが、正確には道路標示は道路標識と一緒で、予め様式が定められた数種類のみを指す。それ以外の路上ペイントは「法定外表示」といい、道路管理者ではなく全て警察署の管轄である。

全ての下りゆく車は、「この先急勾配」の文字を踏み絵のように踏んで、その内容をドライバーの胸に刻み込んでから躍り出るのだ!

亀石峠のダウンヒルへ!





海まで続く亀石峠の下りが堰を切った!

やばい、ヤバイよやばい! 

10%という、一般公道では最高限度に近い急勾配が、しれっと700mも続く!
700mと言う距離は、ちょうど上下線が分離している距離に一致している。

そして、私をさらに興奮の坩堝へ放り込む、黄色い看板が見えてきたッ!




ブレーキ過熱注意

エンジンブレーキ使用

熱海土木事務所
伊東警察署

マジで堪らん!!!

もう俺のブレーキパッドは、完全に灼けきっちまったようだ。
止まらない。
興奮が、止まらないぃィィィンッッ!




完全にブレーキパッドが灼け切っちまった(←しつこい)俺は、

焼け石に水程度の滑り止め鋪装(路面のギザギザ)が付けられた、

スラローム競技会場のようなシングル・レーンを驀進する!

あっという間に自動車の制限速度(40km/h)に到達した。



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この標識は、“古い世代”のほうだね、きっと。

新しい標識を立てても、古いものも壊れるまでは使う。そんな感じだろうか。

写真だと分かりづらいかも知れないが、ずっとマイナス10%勾配が続いている。

そして再び、私を熱狂させるアノ“黄色い看板”があるぅううう!!!




注 意!!

マイクロバス・大型車
ブレーキ過熱事故多

熱海土木事務所
伊東警察署

"し"が小さい!! のはどうでも良くて、

駐停車は禁止だから、ブレーキが過熱して止まれなくなっても止まっちゃ駄目だし(←嘘です)、とにかくなんてスパルタな道なんだろう!! 堪らんタマラン、タマランゾ〜〜!!(←味王風に)



ところで、この道を通行したことのある人に聞きたいが、


この標識の左側にある、芝生や植木で囲まれた小さなロードサイドパークをご存知だろうか?



18:34 《現在地》

駐停車禁止であるために、自動車はもちろん立ち寄ることが出来ないし、軽車両に属する自転車も、路上に止めて散策することは出来ない。
(私は路外の芝生内に自転車を置いて散策した)

歩行者だけが何の気兼ねもなく立ち寄れる場所だが、おそらくそんなことをする人はごく稀なのだろう。 芝生の上には、大勢の人が入り込んだような踏み跡が全くなかった。

しかしこの100坪ほどの小さな公園には、亀石峠の名前の由緒となるものが、ひっそりと眠っていたのだ。
私もまさかこんなものがあるとは思わなかったから、見つけた時にはさっきまでとはまた別の興奮があった。

“亀石”とは、写真奥の2m四方ほどの大岩を言うらしいのである。



  亀石の由来
昔古より里人は此の石を亀石と言って、峠の名も此の石に因んだものである。
石の前面道は石畳を敷き、伊豆の国東海岸文化交流の主要道であった。
原史村落時代(古郷有辨「有雑」「宇佐比」「宇佐美」)の先人達から神篭(コゴ)石として尊ばれ、峠を越す人々の安全を守って来た。
       宇佐美観光会

…とのことである。
なぜこのさほど目立ちもしない石が「神篭石」「亀石」と呼ばれるようになったのかは知れないが、重要な事を書いている。
それは、この石の前にかつて、石畳の敷かれた古道が存在した事だ。
伊豆の隣の箱根には、有名な東海道箱根峠の石畳があるが、この亀石峠と呼ばれた古道にも石畳があった。そしてそれは現在の車道(東行き車線)の位置だったというのだ。

やはり旅は自転車に限るな。
車では見過ごしてしまう多くのことを、道自らが語ってくれる。




感極まってきて、思わず

亀石峠、だ〜いすき!!


って東の空に叫びたくなったが、それは踏みとどまった。




楽しかった上下線分離区間も、あっという間に終わりが見えてきてしまった。

そしてこの合流の直前、こちら側の車線にだけ短い橋が架かっていた。
橋には控えめながら銘板があり、曰く「亀石橋」といい、竣工は昭和53年3月となっていた。

この竣工年を見る限り、どうやらこの上下線には新旧道の関係性があったこと。
それも意外な事に、(日光いろは坂とは逆で)狭くて一車線しかない急坂の方が新道らしいと分かった。
上り坂を2車線化することが上下線分離の目的であったから、下り坂は元より1車線分だけで十分という割り切りがあったものと考えられる。
或いは昭和53年頃まで、例の古道の石畳が残っていたのかも知れない。

きたぁあああ!! 三度“黄色いの”キター!!




大型車・小型車2速
エンジンブレーキ使用

熱海土木事務所
伊東警察署

遂にエンジンブレーキの掛け方まで教えてくれる親切&必死ぶり!

毎回現れる度に少しずつ文言が変わっているのが芸コマだが、

しかし言わんとしている事は常に一つしかない!

死にたくなきゃエンブレを使え!!




私を熱く狂わせた「エンジンブレーキ」の標識群も、

この4度目の登場(黄色いのは3度目)を以て、遂に打ち止めとなった。




後は全て爽快ダウンヒル! (最終動画



諸般の事情により、下山時刻の告白だけは自重したい…(笑)。

が、その後無事にスタート地点へ下って探索を終了した。


…もうちょっとだけ続くんじゃ…