奈川渡ダムの謎の道 第1回

公開日 2008.11.29
探索日 2008. 9. 8

前に、長野県松本市にある奈川渡ダムそばの国道158号、「入山トンネル」の東口坑口前で、右の隧道を発見したのを覚えているだろうか。

 そのときのレポはこちら→【道路レポ 国道158号旧道 水殿ダム〜奈川渡ダム (第5回)

 その場所はこちら→【周辺地図(別ウィンドウ)】

それは、人が立って入るのがやっとと言うくらいに狭い、明らかに人道用の隧道である。
写真に出口は写っていないが、長さはかなり短くて、覗き込むと向こうの光が20mくらい先に見える。
しかし、入り口には施錠された鉄格子が填められていて、進入はできない。




この閉ざされた隧道は、こんな異様な場所にある。

国道の直角コーナーの先にあるにしてはあまりにも目立っていない。

周りに存在感のある標識や看板が多すぎるためだが…。
ドライバーに危険な錯誤を起こさせかねない正面の隧道にはスッコンデいてもらいたい。
それが松本工事事務所の本音であろう。

そんなマイナーな隧道だが、一度見つけてしまうと… もう駄目。

ここを通るたび、カーブの先から目が離せなくなった。
いつも、その先が気になってしまう。




しかも、この隧道は最新の地形図にしっかり描かれていたりする。

もちろん、徒歩道としてだが…。


地形図から、隧道の先の景色を想像してみた。
国道脇の隧道を抜けると、そこには一棟の建物がある。
道はそこから上り坂になって、すぐにもう一本の隧道が現れる。これは最初の隧道よりもさらに短いものだ。
左はカーブして、水殿ダムの水面上130mという急な山腹を横切る。
そしてやがて道は、奈川渡ダム堤体へ吸い込まれる…。

おそらく中間部から先では、全国有数の規模を誇る奈川渡ダムの巨大な堤体を、今まで体験したことのないアングルで望むことが出来るだろう…。

  きっとすばらしい眺めがこの道にはある。

だが、ダム堤体に突っ込んでいくような立地を見る限りにおいて、この道の正体は一般道路ではない。
ダムの作業用通路…。
現役ダムの作業道は、私といえどさすがに立ち入ることがはばかられる領域。

でも、あの塞がれた坑門には、あってしかるべき警告文が見られなかった。
それは不審なことである。



  謎の道……


少なくとも、現時点においてこの道の正体は謎。


  これは、 「奈川渡ダムの謎の道」 だ…。




謎の道の入り口へ、二ヶ月ぶりのリベンジ


2008/9/8 16:58 

約2ヶ月ぶりに来てしまった。
にゅ〜〜〜やま隧道!
その東口前に口を開ける、謎の隧道だ。

前回nagajisさんと一緒に来たときも、この塞がれた隧道の裏に回る込むことは出来ないか、短時間ながら模索している。
たった20mほどの隧道なので、普通ならば回り込みは難しくない。
しかし、ここはちょっと一筋縄ではいかない。

坑門は両脇とも垂直の壁に囲まれていて強引な山越えは出来ないし、残る手段である横からのトラバースも…




垂直の崖!!

これでは全く手が出ない。



当然次に考えるのは…



一旦路肩から下に降り、隧道が掘られている大岩を下から迂回してしまうという方法だ。


めんどくさいが、さすがにこれは可能だろう。




あぐゎ。

路肩から下に降りるのは、命を捨てる行為と等価であった。




たしかに谷底から大岩を迂回する事は可能だと思うし、もはやそれ以外に手はないとも思えるわけだが、そもそも谷底へのアプローチはどうすればよいのだろうか。

AにはBが必要で、BにはCが必要という、典型的なファミコンロールプレイングゲーム的(「おつかい」とも言う)展開になってきたぞ。




人目をはばからずに隧道を覗き込めば…

こんなにも出口は近いのに!!

たかが隧道。されど隧道。その存在は偉大であり、いざ迂回を考えると大変に骨が折れるのである。

…そんなわけで、盛りだくさんな計画が控えていた“初回”は諦めざるを得なかったのだが、夕暮れも遠くない今回、残り時間の全てこの隧道、この「謎の道」にかける覚悟で臨んでいる。
当然、こっからが本番。

もっとも、仮にこの壁を突破できても、そこが現役発電施設であれば速攻で引き返しな訳だが…。
だからといって、諦められない。
道行く誰に聞いても、この穴の向こう側を答えてはくれないだろう。
もはや、自分で確かめるよりナイに違いない。




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廃のゴキブリ


17:00

上のタイトルにギョッとした人がいるかも知れないので、最初に断っておこう。

廃のゴキブリとは、目指す廃道に到達するためならば、普段は人が踏み込まないような隙間や物陰、薄暗いところにも平気で突っ込んで、あっちでカサカサ、こっちでコソコソする私の探索スタイルのことを自嘲する表現である。
自嘲なのだが、なんか面白いので私はよく使っている表現だ。

ここから先、しばらく カサカサカサカサコソコソコソ… することになる。

まず向かうべきは、この谷底だ。
そのためには、100mほど国道を下って…。




この橋に来る。

そして、この橋の辺りから適当に路肩の低いところを狙って、沢へ降りるのである。
当然、チャリはここでお休みだ。
誰も盗っていきやしないと思うが、一応物陰に隠しておく自分がカワイイ。




沢の名前は大白川という。
あともう300mも下れば梓川に合流するのだが、まさに急流河川である。
巨大な岩がゴロゴロ…ゴーロを清流がほとばしっている。

ここを、下流へ向かう。
当然道はないので、飛び石伝いに進んでいくことになる。




50mほど下ると、もう国道はあんなに上になった。

年間百万台以上が通行する国道の土台を支える地盤は、これでもかというくらい固く搗き固められている。
このまま沢を下ったのでは、コンクリートの高い擁壁に遮られて、再び山を登る事が出来なくなる。
そう判断した私は、夏草が茂る型枠工の下に己の進路を求めなければならなかった。

たかが隧道一本だが、その迂回は大変だった。




路肩の直下に寄った。

とてもじゃないが、ここを直接降りてくることは出来なかったと再確認させられる。

ここは、面倒でもゴキブリ動きが正解。
スネークなんて上等なもんじゃねぇ。ゴキブリで十分だ。




(←)
草むらを通り抜け…

(→)
攻略対象の直下へ。
この先は、ついに「隧道迂回」という“実”のある前進になる。
このレポでは少し描写を省いたが、橋から沢に下るところが一度で成功せず、何度か試行錯誤している。
そんなわけで、現在時刻は17:21。行動開始から20分以上経っていた。




迂回とはいっても、隧道の長さは20m程度であるから、“横移動”の部分は少しだけでいい。

川べりの岩山を少しだけへつると、まるで岩が流れた跡のような木の生えない斜面に突き当たった。
見上げてみても木と闇しか見えないが、ともかくどこかで上らないと隧道から出た「謎の道」を捕捉することも出来ないわけで、ここが比較的与しやすかろうと踏んだ私は、岩の斜面を上り始めた。




うしし…

あちぃ。

この、背徳感と達成感がヒフティヒフティに入り混じった感動は、何度味わっても堪らないものがある。
しかも、こちら側の坑門は塞がれていないようだし、今のところ近くに有人の施設がある感じもしない。
とりあえず、ここまでは見つかっても言い逃れが出来る状況。

「沢歩きをしていたら、来ちゃっただけです。」


  …苦しいか?


なにはともあれ…






いま、隠された道に立つ!