あるよ…
2本の新旧船越隧道が活躍するその横に、見るからに 怪しい穴 が。
新・旧・旧旧と三世代の隧道が、同じ高さに並んで口を開けている、おそらく日本中でもここだけの景色だ…。
現役の2本はその古さを隠そうと真っ白な化粧で繕っているのに対し、もう死んでいる彼は………。
一目見た瞬間、えらく嫌な予感がした。
その理由を勿体ぶらずに言おう。
「通報されるんじゃね。」 そんな気がしたのだ。
だって、来た時間も悪かったんだろうけど、下校途中の高校生やら買い物に行く主婦やらが、その坑口の前の歩道を頻繁に通っているわけ。
しかも、その隧道はかなり高いフェンスで塞がれているときた。
よじ登っている最中を見られたら、流石に無関心な都会人だって、やばいんじゃないか…。
中央分離帯から見る現役の船越隧道たち。
左が新船越隧道で、昭和23年に開通している。全長は99.6m。
戦時中から建設が予定されていたが、終戦には間に合わなかった。
しかし、昭和17年から19年までに開通した、これに連なる5本の“新”トンネルとの外見上の違いは明らかである。(コンクリートブロックを使っていない)
そして、右側が大正12年に開通した船越隧道(全長74.8m)で、一連の国道31号新道工事の中では最初に開通している。
やはり外見上に、このあとに開通した後続との明確な違いが見られるが、それは次の写真で。
改修により、当初は煉瓦積みだったといわれる坑門の意匠は一変してしまっている。
しかし、一連の他の隧道にはある壁柱が無く、代わりに特別な装飾が施されている。
坑口両脇の翼壁にある幾何学模様の飾りは、石材によるもので、独特のものだ。
なぜそう思ったのか説明できないが、私は「イギリスっぽい」と思う。なんでだ?
もしこの白っぽい飾り石と要石とが、赤い煉瓦アーチの壁にあったらば、どれだけ映えていただろう。
過ぎたることとはいえ、気の利かない補修は残念だ。
また、この扁額もまた改修によって失われなかったパーツの一つだ。
右書きにて隧道名がしたためられているが、「舩」の字はよく見る船の字の意字体で、普段は余り使われない。
また、小さな文字で揮毫者の名前が刻まれている。「麻吉」と。
なんとなく石工の名前かと思ったが、調べてみたら「安河内麻吉」は、大正11年から13年までの神奈川県知事だった。
彼の在職中に開通したのは一連の隧道の中でもこれ一本だけだったせいか、他の扁額には揮毫がない。
上記の通り、この船越隧道は一連の隧道群の中で特異な外見をしているが、首都東京とその守りである軍都横須賀を結ぶ新動脈の栄えある第一号開通トンネルということで、最も短い延長ながら特別な配慮が働いたのだろうと考えられる。
で、外回り線、内回り線(国道16号は環状線なので上下線がない)を横断し、辿り着きました、旧田浦隧道。
中は埋め戻されているっぽいな…。
しかし異様な姿だ。
都会に口を開ける廃隧道の絵としては、これ以上ないインパクトかも知れない。
もうすこし文化財然とした顔だったら良かったんだろうけれど…。
しかも、なぜか墓標が…。
一応舗装された坑口前の道は、ここが所定の駐車場らしい軽自動車のための専用道路と化している。(もう私有地なのかも知れない)
でも、この道幅なんかは貴重な証拠と言えるかも、明治時代の車道の。

ゴメン。
それは墓石じゃあなかった。
でも、墓石のもっと全体的なものというか… 供養塔だった。
表面に書かれた文字を一部拾ってみると、「大正十二年大震災殃死者群霊宝塔」「大正十三年九月二日建立之」「帝国在郷軍人会」など、私には実感の湧かない内容。関東大震災のことだと言われても、ピンと来ない。
しかし、「横須賀市史」にはこの一帯でも震災による激甚な被害があったことを伝えている。
特にこの隧道で”何か”があったのかは、分からなかったが…。
とりあえず、衆人環視の危険と、墓標の気配。
これだけで私の戦意は80%くらい削られてしまった。
前者がうち9割だが、それでも「殃死」(おうし=災害で死ぬこと)という見慣れない単語を、さらに言えば「死」の文字を、この得体の知れない廃隧道の前で見せつけられた精神的ダメージは、無視できないものがあった。
これは、流石にテンションの上がりようもない…。
だって、塞がれ方も気持ち悪いんだもの。
これだけ都会にあるのに、人通りのある目立つ場所にあるのに…
なんでヤンチャ君の入った跡がないのーー?!
世のオブローダー諸兄の探索報告も、なぜかないし。
入りたいけど…
入りたいんだけど……
なんか嫌だなー。
本レポートの「後編」については、急遽再調査の必要有りと判断いたしましたので、更新を一旦延期いたします。申し訳ございません。
再調査完了後、更新完結の予定です。
参考資料
『横須賀市史』 『道路トンネル大鑑(土木界通信社刊)』 『
田浦を歩く(横須賀市(田浦地域文化振興懇話会))』