はいどう ―だう 【廃道】

 (1)荒れはてた道。
 (2)使用廃止となった道。

           −広辞林第二版より


 私が、愛してやまない廃道。
その意味は、正に“読んで字の如き”だ。


 道の歴史は、人類にそれに比肩する。
いったいどれほどの長さの道が生みだされてきたのか。
その総延長は、宇宙の星星を駆け巡れるほどであろうか。
人の営みと共に、果てしなく生み出され続ける道。
その影では、見捨てられ、荒れ果て、消えてゆく道がある。

 廃道という言葉が、道の一生のいつから、いつを指し示すのか、それは、一定ではあるまい。
しかし、発掘のような調査を経ねばそこに道があった痕跡を認められぬもの。
それは、私は廃道とは呼ばない。
遺構というべきものだからだ。
 私の愛する廃道とは、
まだそこに、人の息吹が感じられるような、新しいものだ。
利用が停止され、道としての一生の最期にさしかかった、そんな一瞬の景色が、たまらなく魅力的なのだ。

 そう、意外に廃道の寿命は短いものなのだ。
使われている道は、消耗もするが、補修もされる。
それは、傷を負っても再生する、我々生命にも似ている。
しかし、命を失った躯は、そう永くはその姿を留められない。
道の然りだ。
 近代的な道の骨子といえる、強固なコンクリートや金属も、四季という巨大な環境変化のある日本では、定期的なメンテナンスなしに、存続し得ない。
廃道は、ひと冬を越すごとに、見る見るうちに、荒れ果ててゆく。
風化し、埋没してゆく。

 廃道は、刹那の姿。
二度とは同じ姿を見せることのない、一方通行の荒廃が垣間見せる、美。
惹きつけられるのに、不思議はない。


 私が、山チャリの途中に出会った、印象深い廃道を、いまここに。






廃の一  廃の二  廃の三
廃の四