ミニレポ第202回 下程久保バス停

所在地 東京都日野市
探索日 2014.11.27
公開日 2014.12.17

大都会の不便すぎるバス停。


私は道路全般について興味があるが、路線バスについてはほとんど知識がない(旅先で乗るのは好きだが)。
それゆえ、道路上に沢山あるバス停についても、あまり着目する事は無かった。
せいぜい、地方の山奥の集落でその土地の過疎ぶりを計るバロメータとして、そこにあるバス停の時刻表をチェックする程度だった。

だが先日ツイッターで、どんな話しの流れだったかは忘れたが、あるフォロアーさんが凄いバス停の画像を見せてくれたのだ。

そのバス停……、下程久保バス停は、おそらく、東京一
いや、日本一不便なバス停かも知れないと思った。

しかもそんなものが日野市の住宅地の中にあるという。  ……今私が住んでいる日野市である。


早速写真を撮ってきたので、ご覧頂こう。




2014/11/27(木) 10:07

はい、これが先日撮影してきた、問題の下程久保バス停である。

見ての通り、ちゃんとした道路にある、見たところ至って普通のバス停である。
歩道には付属してベンチも置いてあるし、道路の方もバスが停車するために路肩が広げられている。
都内のどこにでもありそうなバス停だ。

でも、このバス停はもの凄く不便である。


え?  廃止されているんじゃないかって??

そんなことはありません!
廃止されたバス停は、地方だったら珍しくないだろう。
そういうのとか、季節限定とかの臨時バス停を除外した、常設の現役バス停の中での、
超不便バス停なのである。

な ぜ な ら ば ↓↓↓



このバス停には、週に一度しかバスが来ない。

平日は0便、そして日曜日と祝日も0便。
毎週土曜日の午前8時35分にだけ、このバス停にバスはやって来る。

少なくともこの状況は、2012年4月1日以降、今日も継続しているようだ。



失礼。 ちょっとだけ盛りました。
正確には、この下程久保バス停にバスは週2便発着している。

先ほどは「高幡不動駅行き」の上り線の時刻表だったが、反対車線にはご覧の「動物園駅行き」時刻表が掲示されており、そこにもやはり毎週土曜日にただ1便だけ、午前8時25分発の便が案内されている。

よって、下程久保バス停は往復週1便の発着頻度である。

1年365日として、土曜日は年に平均52回あるので、このバス停には1年で約52往復のバスが発着している。
これが雑誌の発行回数ならば「週刊だよ」で済むところだが、バスが週一でしか来ないとか、私はこんなバス停を初めて見た。
(まあ、臨時のバス停だったら、年に1日だけとかもあるかもだが)



辺りは決してゴーストタウンのような場所ではなく、バス停が設置されている都道には、昼も夜もひっきりなしに車が通っている。

では、なぜこんなにバスが少ないのか?

そ の 理 由 は ↓↓↓



下程久保バス停に発着するのは、京王バスの高11系統という路線だけなのだが、この高11系統は、高幡不動駅と多摩動物公園駅を結んでいる。

そして右の地図を見れば分かるとおり、この走行区間は同じ京王グループの京王電鉄が運行する京王動物園線と全く被っているばかりでなく、後発の多摩都市モノレールも被っているのである。

高11系統には、起点と終点も含めて6つのバス停が設定されているが、このうち同系統しか運行されていないのは下程久保以南の4つのバス停(下程久保、中程久保、程久保、多摩動物公園駅)であり、これらは全て週1往復しか設定されていない。
ここに同着で日本一不便かも知れないバス停が4つもあるのだ。

なお、ここからははっきり裏付けのある話しではないが、京王バスの高11系統が週1往復だけしか運行されていない理由は、既に多摩都市モノレールと京王動物園線という二つの並行する鉄道に乗客を奪われ切っており、収益を上げられるほど利用客が居ないからなのだろうし、特に京王動物園線との関係においては、競争を挑む企業メリットがないのだろう。

それではいっそのこと高11系統は廃止してしまえばいいようにも思うが、私にこのバス停の存在を教えてくれた人物は、バス事業の路線免許の維持が関わっていると仰っていた。
この辺り私は全く無知なのだが、少しも儲からないだろう週1だけの運行が律儀に続けられているところを見ると、おそらく真相なのではないかと思う。

私が知らないだけで、こうした事情のために運行本数が極端に少ないバス路線は各地にあるのかも知れないな。
(追記)→バス好きの方々の間では、このような路線は「免許維持路線」と呼ばれており、運転頻度の差こそあれ、各地に存在するそうです。




改めまして、これが下程久保バス停の全景である。

上にあるのが多摩都市モノレールの程久保駅。
そして左の壁の上には、京王動物園線の線路が敷かれている。
周辺は住宅地だ。



道路や沿道の風景を見る限り、とても週1度しかバスが来ないようには見えない都道をしばし南下する。
数百メートルおきにバス停が現れるが、中程久保、程久保、共に“週1バス停”である。
当然そこにバスを待つ人影があるはずもない。一方で、頭上の高架を頻繁にモノレールが走っている。

いよいよ、高11系統の終点、多摩動物公園駅という名のバス停が見えてきた。
このとき視界にはモノレールと京王動物園線の多摩動物公園駅も見えてきている。



巨大な駅と駅はすぐに場所が分かったが、バス停は……… あった!

都道から少しだけ外れた転回場(←これはタクシープールとのご指摘あり)の脇にあったが、
案内が無いし、目立つベンチも屋根の無いので、発見に少し手こずった。
だが、週に一度しか路線バスが来ない割には、立派なスペースが確保されている。
その気になれば沢山のバスを捌けるだろうに、「もてあましている」感が何とも侘びしい。



これが終点、多摩動物公園駅バス停の時刻表だ。
週に一度、土曜の午前8時32分に、高幡不動駅行きが発車しているらしい。

最後に、2014年12月現在の、一日に多摩動物公園駅を往復するバス、鉄道、モノレールの本数を比較したのが次の表である。

平日土曜日曜・祝日
バス
(京王バス)
鉄道
(京王動物園線)
596666
モノレール
(多摩都市モノレール)
122106106

鉄道やモノレールの本数が十分に多いだけに、バスの泡沫ぶりが超際立つ。

皆さまの中には、この地域のバス全体がしょぼいんじゃないかと思う人もいるかも知れない。だが、高11系統以外の系統も発着する「高幡十字路」というバス停(場所は先ほどの地図参照の時刻表はこんな感じである。 …ちゃんと走るところは走っている。)

あ、そうだ。 共通区間である、高幡不動駅と多摩動物公園駅間の大人運賃と所要時間も比較しておこう。
 バス 片道175円、7分。
 鉄道 片道124円、4分。
 モノレール 片道210円、5分。


以上である。この区間に限れば、鉄道一択?



とまあ、こんな軽く手抜きレポートだったが、私の家の近くに驚くほどバスの来ない不便なバス停が隠れていたので、面白くて報告した次第である。

この道を、クルマとかで日常的に利用している皆さま。(私もその一人)
何気なく、路傍にバス停があるのは見ていたと思うが、この道でバスを見たことがあっただろうか?
胸に手を当てて、よく思い出してみて欲しい。(笑)

そして次は、やっぱり“週1のレアバス”に乗車してみたいよね〜。
また、実際に乗ったことがある人のご報告もお待ちしています。
もしかしたら、何か特別な体験が、できるのカモ〜?




完結。



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